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平成27年7月
 
「葉隠研究」第79号への寄稿文
『只今が其の時』

 知事になって半年が過ぎた。これまで、中山間地域や農山漁村、離島など県内の様々な場所に足を運び、佐賀県の豊かな自然の恵みを受けた農林水産品や陶磁器など、「本物」の地域資源を目にした。これらの資源は、先人たちがつくりあげた伝統や技法を守りつつ、改良を加えながら長い年月をかけて今日に至っている。それは、「くんち」、「浮立」などの祭りや、地域の寄り合い「三夜待ち」など、連綿と続く歴史や風土を大切にしてきた地域の人々の思いと絆の強さが、その根幹にあったからではないだろうか。

 佐賀の原点は「人づくり」にある。佐賀の八賢人をはじめ、幕末から明治維新、その後の国づくりにおいて活躍する人材を多く輩出できたのは、藩校・弘道館における先進的な教育を通じた「人づくり」の成果であろう。
 八賢人といえば、今年四月、北海道神宮で行われた「開拓判官・島義勇顕彰の集い」に出席させていただいた。遠い札幌の地で、没後百四十余年となる今でも「北海道開拓の父」として親しまれ、後代に伝えられていることに感銘を受けたと同時に、出身地佐賀県ではどれだけの人が島義勇公のことを知っているのだろうかと思いを巡らせた。
 「葉隠」についても然り。沖縄県最後の官選知事として赴任し、「沖縄の島守」と呼ばれる島田叡も「葉隠」の思想に大きな感銘を受け愛読したと言われているが、今日どれ程の人がその真髄を理解しているのだろうか。

 先人の志や活躍を知ることは、佐賀で暮らす人々が故郷に誇りを持ち、その心を子どもたちに引き継ぐ契機となる。葉隠研究会をはじめ、その普及啓発に努められている団体の皆様には、今後とも活動の継続を切にお願いしたい。私自身も、できうる限り埋もれた先人の偉業を見出し、地域の誇りとして光をあてていきたいと考えている。

 今般、将来の姿を見据え、人に寄り添った県政を推進するために、「―佐賀県総合計画2015―人を大切に、世界に誇れる佐賀づくりプラン」を策定した。人々の価値観が多様化する中でも変わらない“佐賀らしさ”の価値が失われてしまう前に、その価値を見直し、磨き上げることを何時も心掛け、そして行動する。「只今が其の時、其の時が只今なり」なのである。