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平成27年8月
 
行政相談委員機関誌「さが」第100号への寄稿文
『改革者の精神は生き続ける』

 行政相談委員機関誌「さが」第100号の発刊、おめでとうございます。
 この行政相談委員制度が創設されて50年以上の時が過ぎました。住民一人ひとりの多様な思いや考えを大切にしながら、地域のことは地域の皆で方向を決めていく時代となった今、住民と行政の「懸け橋」となる行政相談委員制度の重要性は高まってきています。

 150年前、明治維新の激動の中で、日本という国家を住民一人ひとりのためのものにしようと奮闘したのが、佐賀の偉人、江藤新平です。
 江藤は、わずかな期間で、憲法や民法の制定、国民皆教育制度など、新たな時代に向けた様々な改革の方向性を示しました。その中でも特に力を入れたのが司法制度の確立です。
 司法卿に就任した後、江藤はすぐに「民ノ司直タルベキ事」、つまり司法省は人々の権利を保護することを第一に考えなくてはならないと宣言しました。そして、行政が人々の権利を侵害したり、仕事をしなかった時には、裁判所に救済を求めることができるという通達を出しています。
 当時は行政と司法が明確に区別されておらず、いわゆる「お上の威光」をかさに、恣意的な行政や裁判が行われていました。そのような時代に、江藤は司法制度を整備し人々の権利を全力で守ろうとしたのです。
 「富強の元は、国民の安堵にあり。」
 この言葉には、身分に関わりなく、女性や子どもといった社会的弱者も含めて、全ての人が安心して生活が送れてこそ、人々は仕事や学問に励み日本は発展することができるという思いがあります。

 その後、江藤は佐賀戦争に巻き込まれ、40年の短い生涯を閉じました。しかし、その精神は、行政相談委員の皆様の心の中に今も生き続けているのではないでしょうか。
 行政が貴重な「現場の声」をしっかりと受け止め、業務の改善や新たな施策につなげていくにあたって、委員の皆様は住民が声を上げる際の身近で頼れる存在として大きな役割を担われています。私も、委員の皆様と一緒に、県民一人ひとりの痛みや悩みに寄り添い、その考えに耳を傾け、そして地域の力を結集していくことで、佐賀を世界に誇れる地域にしていきたいと思います。

 最後になりましたが、行政相談委員の皆様のご熱意とご努力に心から敬意を表しますとともに、今後ともますますご活躍いただきますよう祈念申し上げ、あいさつといたします。

(参考図書:毛利敏彦「江藤新平 急進的改革者の悲劇」)