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平成27年9月
 
第26回差別と人権を考える佐賀県民集会あいさつ
『“やさしさ”があふれる社会へ』

 人権問題の解決のため、日頃からご尽力いただいている皆さまに、心から感謝申し上げます。

 昨年の全国中学生人権作文コンテスト佐賀県大会で最優秀賞、そして中央大会で最優秀の内閣総理大臣賞に輝いたのは、武雄青陵中学校一年生の平木洵太さんの作文でした。
 彼は、大切な友人に怪我を負わせてしまい、自分が初めて加害者となった出来事を振り返っています。怪我をさせた責任を背負っていくことを語る母親の言葉や、友人に会う時に細やかな気遣いを見せる父親の姿から、加害者として償うことの意味と相手の権利を侵害することの恐ろしさに気付かされたそうです。

 その作文の中で、さだまさしさんの『償い』という歌が紹介されています。
 交通事故を起こした“ゆうちゃん”が、亡くなった男性の奥さんに送金を続けていた7年目のある日、一通の手紙が届いた。それは、奥さんから送られてきた手紙。決して許されるはずもないが、初めて返事が来たことに涙がこぼれた――実話をもとにつくられたこの歌は、償っても償いきれないけれど、自分ができる精一杯の誠意を伝えることが大切なのだと教えてくれています。

 『人間って哀しいね だってみんなやさしい/それが傷つけあって かばいあって』
 これは、『償い』の最後に綴られている歌詞です。
 一心に償いを続けてきた加害者“ゆうちゃん”の“やさしさ”と、苦しみながらも加害者の償いを受け入れた被害男性の奥さんの“やさしさ”。それは、悲しい事故で傷ついた二人が、お互いに相手のことを思いやることで生まれた“やさしさ”なのでしょう。
 時として人は、意図せず誰かを傷つけることがあります。しかし、人が持つ“やさしさ”は、その傷ついた心を癒し、悲しみを乗り越える強さを与えてくれます。

 人にやさしくすることは、相手の立場を自分のこととして考え、その心に寄り添うよう努力すること。
 自分の“思い”や“考え”を相手に押し付けるのではなく、想像力を働かせることで、少しずつ相手の気持ちを理解できるようになるのでしょう。こうした小さな努力を積み重ねることによって、様々な価値観を持つ人々が互いに相手を尊重し、一人ひとりの違いを認め合い、支え合う社会の実現につながっていくものと思います。
 この県民集会をきっかけに、たくさんの“やさしさ”があふれる社会を築いていけるよう、ともに考え行動する気運がますます盛り上がっていきますことを心から祈念し、ごあいさつといたします。