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平成27年11月
 
第38回むし歯予防全国大会への祝辞
『「葉隠」が説く歯の健康の大切さ』

 「第38回むし歯予防全国大会」が、この佐賀県で開催されますことを心からお喜び申し上げます。

 「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」という「葉隠」の一節は、皆さまもご存じのことと思います。佐賀藩士山本常朝の金言を集めた「葉隠」は、こうした壮烈なメッセージだけでなく、日頃の礼法やマナーなど硬軟織り交ぜて当時の武士の心得を示しています。
 その中に、このような言葉があります。
 「武士たるものは二十八枚の齒を悉く噛みをらねば物事埒明かず」
 有事にあたって力を発揮するためには、全ての歯をかみしめられないといけないというこの言葉は、武士にとって丈夫な歯を持つことがいかに大切だったのかをうかがわせるものです。確かに江戸時代の武士は歯磨き熱心で、虫歯も庶民に比べて少なかったようですが、近年、大阪の佐賀藩蔵屋敷跡から江戸時代の入れ歯が発掘されたことからも、全ての武士が「健口健歯」を維持していた訳ではありませんでした。
 佐賀県を通る長崎街道は、鎖国体制の中で海外との唯一の窓口だった長崎から西洋や中国の菓子づくりの技法に加え原材料の砂糖がもたらされたことから、「シュガーロード」とも呼ばれています。今でも丸ぼうろや逸口香などの甘くておいしいお菓子が伝わっており、そうしたお菓子に舌鼓を打ちながらも、むし歯の痛みだけでなく武士道との相克に悩んでいた武士もいたのかもしれません。

 時代は移り…現代。佐賀県では、近年まで10年連続で3歳児平均むし歯数が全国ワースト1を記録するなど大変残念な状況が続いていました。
 そこで、市町や歯科医師会、薬剤師会等の皆さまのご協力のもと、平成11年度から保育施設や小学校でフッ化物応用を全国に先駆けて推進してきた結果、12歳児の平均むし歯数やむし歯の有病者率は減少し、全国でもトップクラスとなりました。
 また、こうした傾向を続けていくために、「第2次佐賀県歯科保健計画」の中で、「むし歯や歯周病を減らす」、「80歳で20本以上自分の歯を保つ」、「かかりつけ歯科医を持つ」といった目標を掲げ、健康な歯で長生きできるよう一人ひとりの意識から変えていこうとしています。特に、「かかりつけ歯科医」については、「生涯にわたって、『口から(おいしく)食べる』を支えてくれる心強いともだち」と独自に定義して、制度の浸透に力を入れているところです。

 私もこの地に連綿と続く「葉隠」の教えを受け継いで、誰もが「二十八枚の齒を悉く噛む」ことができるよう、皆さまと一緒にむし歯予防に力を尽くしていきたいと思います。この大会を契機に、ますますフッ化物応用によるむし歯予防が全国に広まっていくことを期待してやみません。

 最後になりましたが、この大会を開催するにあたり、ご尽力いただきましたNPO法人日本むし歯予防フッ素推進会議、佐賀県歯科医師会をはじめ、関係の皆さまに、敬意と感謝の意を表するとともに、この大会が実り多いものとなりますよう祈念いたしまして、お祝いの言葉といたします。