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平成28年7月
 
第39回日本産婦人科医会性教育指導セミナー全国大会への祝辞
『生きるための「性教育」』

 第39回日本産婦人科医会性教育指導セミナー全国大会が、ここ佐賀県で開催されますことを心からお喜び申し上げますとともに、全国からお越しいただいた皆さまを心から歓迎申し上げます。
 また、今年4月に発生した熊本地震により被災された方々に、謹んでお見舞い申し上げます。

 これまで多くの感染症と闘ってきた人類が、唯一勝利したとされる天然痘。その予防手段である種痘が日本で広まる口火を切ったのは、佐賀藩での成功にあったと言われています。
 十代藩主・鍋島直正は、蘭学を修めた藩医・伊東玄朴(いとうげんぼく)の進言などにより、牛痘苗(ぎゅうとうびょう)を入手すると、自分の子に接種させるとともに、領内の子どもたちにも無料で種痘を行いました。さらに、江戸藩邸へ牛痘苗が送られると、伊東の手により分苗され、種痘は各地に広まっていくこととなりました。
 佐賀藩をはじめ全国各地の蘭方医たちが、不治の病と恐れられた天然痘に苦しむ人々のために東奔西走し、その予防に尽力したのです。

 今の子どもたちは、そうした先人の熱意と努力の結晶である予防接種を受けることで、過去に多くの人々の命を奪った病に対抗できるようになりました。
 その一方で、彼らは、一人の大人として成長していく中で、いじめや経済的困難といった現代社会における様々な問題に直面しています。もちろん、性の問題も例外ではありません。
 こうした多様な局面を乗り越えるためには、“学ぶ”ことが大切です。専門家のアドバイスを受け、適切な知識を身に付けることで、危険を回避し問題を克服する能力を高めること――“学ぶ”ことは、まさに社会で生きていくための予防接種と言えるのではないでしょうか。

 近年は、性感染症や人工妊娠中絶、性暴力などの健康や命に関わるような性の問題が取り沙汰されています。
 そのような中、自分の性を自覚し向き合っていく子どもたちが、性についての正しい知識を学ぶことは、生きることや命の大切さを考えるきっかけにもなるでしょう。だからこそ、私たち大人は、性の問題だからといって曖昧に応えるのではなく、しっかりと正面から彼らと向き合っていかなければならないのです。

 子どもたちは地域、そして未来の宝です。先人たちが懸命に病気と闘い、予防への道を切り開いたように、子どもたちが心身ともに健やかに成長できる社会を目指して、私も皆さまとともに力を尽くしてまいります。そして、この大会を通して、関係者の皆さまの連携が深まり、性教育への取組がさらに広まっていくことを期待しています。

 最後になりましたが、この大会を開催するにあたりご尽力いただきました佐賀県産婦人科医会をはじめ、関係者の皆さまに敬意と感謝の意を表するとともに、この大会が実り多きものとなりますよう祈念いたしまして、お祝いの言葉といたします。