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平成28年9月
 
第27回差別と人権を考える佐賀県民集会あいさつ
『自分らしく生きる』

 「生きる権利・死ぬ権利」
 これは、昨年の全国中学生人権作文コンテスト中央大会で入賞した、唐津市立浜玉中学校一年生の吉原直さんの作文タイトルです。末期がんの告知を受けた祖父の闘病生活を振り返り、延命治療を望まず、自分でできることは最後まで自分の力で頑張りたいという祖父の姿から、彼女は人が人として生きる権利、そして死ぬ権利があることを学んだそうです。

 自らの意思で人生を歩み、その最期の迎え方を自分で決めること。それは、「自分らしく生きること」と言い換えることができます。吉原さんにとって、祖父の死という出来事は、自分らしく生きることの尊さを考える貴重な経験となったことでしょう。
 ところが、今の世の中には思うように生きられず、苦しんでいる人たちもいます。私たちは、そのことを決して忘れてはなりません。

 今年1月、私は熊本県合志市にあるハンセン病療養所「国立療養所菊池恵楓園」を訪問しました。ここに入所されている佐賀県出身の方々にお会いすると、ハンセン病への誤った認識が生み出した差別や偏見によってつらい経験をされてきたにもかかわらず、ふるさとのことや昔話などをたくさんお話ししてくださいました。
 また、見学した歴史資料館には、かつて入所者が療養所を退所する際に鳴らされたという鐘が展示されていました。ありのままに生きていこうと旅立つ人の背中を押してきた鐘の音。いつしかこの鐘は、「希望の鐘」と呼ばれるようになったそうです。
 今では聞くことのできないこの鐘の音をよみがえらせることで、皆がハンセン病の歴史に思いを馳せるとともに、差別や人権にあらためて向き合ってもらいたい。そう考え、県では今、「希望の鐘」の復元に取り組んでいます。

 すべての人がありのままに生きられる社会とは、一人ひとりの違いを認め、支え合うことができる社会であると思います。
 人と人とのつながりを大切にし、地域社会のきずなをしっかりと守ってきた佐賀県に住む私たちにとって、それは、きっと難しいことではないはずです。私たちが率先して差別に苦しむ人に寄り添い、誰もが自分らしく生きることのできる社会を実現していきましょう。

 結びに、人権問題の解決のため、日頃からご尽力いただいている皆様に感謝申し上げますとともに、この県民集会をきっかけに、人権の尊重について、ともに考え行動する気運がますます盛り上がっていくことを心から祈念し、ごあいさつといたします。