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平成29年1月
 
佐賀県親と子の読書会協議会40周年記念誌への祝辞
『子どもの心に種をまく』

 三重県にある子どもの本専門店「メリーゴーランド」。店主の増田喜昭さんが、長年、保育園や学校で子どもたちに本の読み聞かせをするという活動を続けられていることもあって、お客さんの中には親子三代で通う人もいるほど、地元の方々に愛されている本屋さんです。開店してから40年、長く続けていると印象的なお客さまに出会うこともあるそうです。
 ある日、バイクに乗った青年が店を訪れ、彼はミヒャエル・エンデの『モモ』を探していると言いました。サングラスにブーツという出で立ちに、増田さんは何故『モモ』なのかとつい聞いてしまいました。すると、彼はこう答えてくれたそうです。「小学生の頃、あなたの話を聞いて『はてしない物語』を買ったが、難しくて読めなかった。でも、この前読んだらとても面白かったので、エンデの他の本を読んでみたくなった」
 子どもの頃手に取った本を、少し時間が経ってから読み返してみると、新しい発見があったり、全く違った感想を持つことは、誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。たった一冊の本であっても、そこから得られるものは、年を重ねるごとに増えていくと言えるのかもしれません。だからこそ、子どもたちには、その後の人生を彩る豊かな心や想像力を育むため、幼少期により多くの本に触れてほしいと、私は考えています。
 佐賀県親と子の読書会協議会の皆さまは、40年にわたって、「読み聞かせ」や「読み語り」を続けてこられました。こうした取組は、いわば「種まき」のようなものだと思います。様々な本と出会うきっかけをつくることで、子どもたちの心に生まれるたくさんの興味の種。それは、いつの日か芽を出し、枝葉を伸ばし、青々とした大木へと成長する――。そうして大人になった子どもたちが親になった時、自分の可能性を広げてくれた「読み聞かせ」「読み語り」を、我が子にも引き継いでいくのでしょう。
 今、県では、子どもたちがいつでもどこでも本に親しむことができる環境づくりを進めています。本を読んでくれる大人がいて、そして、そのお話に目を輝かせる子どもがいる風景。そうした可能性を育む「子どもの居場所」をそれぞれの地域にもっと増やしていこうとしています。それは、貴協議会の皆さまの活動をはじめ、本を愛する多くの方々の支えがあってはじめて実現するものです。これからも、子どもたちの健やかな成長の力になる「読書」の素晴らしさを、たくさんの親子に届けられることを心から願っております。
 40周年、誠におめでとうございます。