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平成29年7月
 
佐賀美術協会展第100回記念「佐賀美術協会の100年」への祝辞
『100年のものがたり』

 第100回佐賀美術協会展の開催、誠におめでとうございます。
 また、一世紀もの長きにわたり、佐賀県の美術界を牽引してこられた佐賀美術協会の皆さまに敬意を表するとともに、展覧会「佐賀美術協会展」の輝かしい足跡を記した記念誌『佐賀美術協会の100年』を出版されますことを心からお祝い申し上げます。

 今からおよそ150年前の幕末維新期、佐賀藩はこの日本の転換点において大きな力を発揮しました。当時、他藩に先駆けて西欧諸国の進んだ技術や文化を取り入れていた佐賀藩は、科学技術や医療などの様々な分野で活躍する優れた人材を輩出することによって、日本の近代化を推し進めることとなりました。

 こうした近代化という大きな変化は、「美術」の世界でも例外ではありませんでした。西洋画の本格的な輸入が始まり、展覧会の開催や美術教育など、今につながる様々なしくみが作られていきました。この時、佐賀出身の久米桂一郎や岡田三郎助がその中心的役割を担ったのは、いち早く世界へ目を向けていた佐賀人の進取の気風があったからこそだと、私は思います。
 東京美術学校(現東京藝術大学)教授であった二人は、東京の地において日本美術の発展のために尽力していましたが、その胸にもうひとつの志を抱いていたそうです。それは、「佐賀に豊かな美術文化を根付かせたい」というふるさとへの思いでした。
 大正2年に設立された佐賀美術協会、そして佐賀美術協会展の開催は、そうした思いが実を結んだ結果と言えるでしょう。

 そして、先人たちの志は現代に引き継がれ、優れた芸術家が佐賀県から世界へ次々と羽ばたいています。
 その一人が、今年佐賀県立美術館で大規模な個展を開催された多久市出身の画家・池田学さんです。緻密でありながらダイナミックな絵を描く池田さんは、あるインタビューの中でこのように答えられています。「少年時代に、佐賀の自然の中で虫や魚を夢中で観察して創造力を膨らませていたことが、現在の作品づくりに影響を与えている」。
 佐賀の風土とそこに息づいている美術の文化。それは、きっと私たちの中にも存在しているはずです。だからこそ、たくさんの県民の方々がこの展覧会を訪れ、素晴らしい作品に心を揺さぶられているのではないでしょうか。そしてまた、そこから美術の世界を目指す人材が生まれていく、こうした環境があることを私は大変誇らしく思っています。

 文化とは、地域に根差し、長い歳月をかけて育まれていくものであると思います。佐賀県における美術文化の裾野を広げてこられた貴協会の活動はまさに佐賀の文化を体現するものであり、美協展の歴史は佐賀県の近現代美術史そのものと言えるのかもしれません。
 美協展が100回目という節目を迎えた今、この記念誌を通して100年にわたる壮大かつ深遠な佐賀県美術の「ものがたり」へ思いを馳せながら、これからも続いていくその歩みに大きな期待を寄せたいと思います。

 最後になりましたが、佐賀美術協会のさらなるご発展と、会員の皆さまの今後ますますのご活躍を祈念申し上げ、お祝いの言葉といたします。