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平成29年9月
 
平成29年度九州材木青壮年連合会佐賀大会への祝辞
『未来へつないでいく』

 平成29年度九州木材青壮年連合会佐賀大会の開催にあたり、九州・沖縄各県からお集まりいただきました皆様を心から歓迎いたします。
 初めに、本年7月の九州北部豪雨災害において、犠牲になられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された方々に謹んでお見舞い申し上げます。
 被災地では、仮設住宅への入居が始まり、子どもたちは仮設校舎へ通学を始めたと聞いております。住民の方々が新しい環境で元気に過ごされ、ふるさとに活力を取り戻せるよう、佐賀県としましても、引き続き支援を行ってまいります。

 皆さんは、佐藤さとるさんという方をご存知でしょうか。
 森の小人たち「コロボックル」の世界を描いた童話作家です。
 戦前に子ども時代を過ごした山での思い出は消えることのない特別なものだったのでしょう。戦後、教員をされていた佐藤さんは、日本が経済大国へ向けて大きく変わっていく中、山での記憶を描いていきたいという一心で、創作の道を志したそうです。
 その創造性豊かな作品の数々から、佐藤さんにとって、山の風景は自分を育んでくれた心の支えであり、木が育っていく姿は夢が広がっていくことの象徴であることが伝わってきます。
 そしてまた、今年2月に亡くなるまで作品に込めて描き続けられた思い、人と自然が共生していくことへの願いは、未来に託されたメッセージとして、これからも私たちの心に響き続けるでしょう。

 山は、時として、人知を超えた崇高な存在として、また時として、ふるさとの象徴として、詠まれ、描かれ、語り継がれてきました。
 ここ佐賀にも、江戸時代の藩士のあり方を説いた『葉隠』に、山にまつわる一節があります。
 「何事も願ひさへすれば、願い出すものなり」
 何事も願いさえすれば、かなうものである。――そして、この言葉は、次のように続くのです。
 「昔はふるさとに松茸というものはなかった。しかし、ふるさとの山にも生えてほしいと念じていたところ、今は北山にいくらでも生えるようになった。これからは、ヒノキが生えるようにしたいものだ。
 これは私が未来へ託す夢だ。皆がそのように願っているからだ。」

 それから300年後の現在、佐賀の山々では、先人の努力により植林されたヒノキやスギが収穫の時を迎えています。森を守り、育て、活かしていくことは、長い歳月を伴う夢のような、そして夢のある壮大な取組です。
 私は、先人のこの言葉から、皆で願うことはきっと実現するものだと信じています。山で暮らす人たち、山を守る人たち、山を活かす人たち。皆の願いがひとつになり、山と人がいつまでも共生していくことができるよう、私も全力で取り組んでまいります。
 それぞれの地域において、山と人々をつないでこられた九州木材青壮年連合会の皆さん、この大会を通して九州木材業界の将来を担う若い皆さんがお互いのつながりを更に深められ、九州の林業・木材産業発展の大きな力となられていくことを心から願い、お祝いの言葉といたします。