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平成29年10月
 
唐津西高等学校創立110周年記念誌への祝辞
『「双松」のもとに出会う』

 佐賀県立唐津西高等学校が創立110周年を迎えられますことに、心からお祝い申し上げます。
 唐津西高等学校は、明治40年に町立唐津女学校として設立されて以来、幾多の変遷を経ながら、110年の長きにわたり、時代や社会の変化に対応しつつ、地域を支える人材の育成に努めてこられました。その功績に心から感謝申し上げます。

 「出会いが大事です。その今を、出会いの一瞬一瞬を描いていきたい」
 こう語られたのは、“風の画家”と呼ばれる中島潔さんです。高校卒業後、仕事のかたわら絵を描き続け、今では海外でも高い人気を誇る画家として活躍されています。独学でデッサンを身に付けたという中島さんは、実に様々な出会いがあったことと思います。ふるさとの風景や仕事を渡り歩く中で知り合った人、パリの美術学校での経験。こうした多様な縁は、画家を目指していた頃の中島さんにとって、絵を描き続ける原動力となったことでしょう。
 人生は、“出会い”によってつくられていくもの。出会うのは“人”だけではありません。
 人とのつながりはもちろんのこと、新たな知識や経験は、これから進む道の選択肢を広げ、踏み出す一歩を後押ししてくれます。だからこそ、出会いを求めて挑戦することが大切なのではないでしょうか。

 今から150年前の唐津にも、一途に挑戦を続けた人々がいました。
 明治期の代表的な建築家・辰野金吾は、工学寮(後の工部大学校、現在の東京大学工学部)で建築を学び、ヨーロッパ留学などを経て、今もなお人々に愛される建物を各地に残しました。また、実業家として知られる大島小太郎や「愛国婦人会」を設立した奥村五百子など、近代日本の黎明期に革新的な取組を行った彼らの人生は、まさに挑戦の連続であったに違いありません。
 こうした人々の足跡をたどると、先を見据えて挑み続けた先人たちの思いが見えてきます。その志は、今を生きる私たちに、新しいものを生み出していくことの大切さを教えているように思います。
 来年、明治維新から150年目という節目を迎えるにあたり、当時の高度なものづくりの“技”とその技術を支えた“人”、そしてその礎となった“志”をしっかりと次の世代に引き継いでいきたいと考えています。

 校章のモチーフとなっている松の花言葉は“向上心”。その松の雄姿から生まれた「双松の誓い」のもと、勉学に励み社会に飛び立たれた皆様は、県内はもとより国内外の様々な分野で活躍されています。
 今年開催された世界最高峰のヨットレース・アメリカズカップに、ソフトバンク・チームジャパンの一員として出場された唐津西高等学校出身の吉田雄悟選手。「もっと上手くなりたい」という強い思いを持って身体づくりに励んでいたからこそ、吉田さんは大舞台で厳しいレースを走り抜くことができたのではないでしょうか。
 この伝統は今も、先生方や生徒の皆様に受け継がれています。中国の貴州師範大学付属中学校との交流では、他国の文化への理解を深め、国際感覚を磨くとともに、故郷への思いを新たにしていると伺いました。こうした様々な取組を通して、自らを振り返りながら自分自身を高め、勉学のみならず、スポーツや芸術などにおいて素晴らしい成績を残され、さらに、そこから世界に挑戦する人材が育まれていることは、大変心強い限りです。

 情報化やグローバル化など、社会が大きく変化している現代において、何よりも大切なのは、自らの未来を切り拓いていく強い思いではないでしょうか。“双松”のもとに集った生徒の皆様が、新しい時代をつくり上げた先人たちのように、志を胸に自ら考え行動し、様々な挑戦を続けられ、それぞれの道で活躍されることを期待しています。

 最後に、唐津西高等学校の益々の御発展と、今日までの教育活動に御尽力いただきました皆様の御健勝と御多幸を心から祈念し、お祝いの言葉といたします。