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平成29年11月
 
月刊「公営企業」11月号巻頭言
『幸せの連鎖を生む「さがデザイン」』

 「蘭心竹生(らんしんちくしょう)」という言葉があります。
 蘭のようにあでやかな心を持ち、竹のようにまっすぐに生きるという意味で、私の座右の銘でもあります。
 佐賀の人たちは、真面目で何事にも一生懸命に取り組む「竹のようにまっすぐ生きる」気質である一方、「蘭のようにあでやか」に自分を表現することを苦手としているように感じます。佐賀の人達にこの「蘭心」が備われば、佐賀の本物の魅力が輝きを増すだろう。そう考えていた私は、知事就任後、政策部内に「さがデザイン担当」を設置し、デザイナーやクリエイター目線で施策や事業をチェックし、施策のコンセプトそのものから磨き上げる「さがデザイン」の取組を進めてきました。今では、すべての施策にデザインの視点が導入されています。

 「さがデザイン」によって、クリエイティブな視点が加わり、佐賀ならではの「心地よさ」が生まれました。佐賀県産品のパッケージやウェブデザインをはじめ、県産木材を使用し心地よい空間を県庁に創出した「さがつく木のインテリア創出モデル事業」や、子どもたちが佐賀のことを楽しく学べる体験型施設として旧知事室等をリノベーションした「県庁CLASSプロジェクト」。
 また、昨年度からはデザイナーやクリエイターが佐賀に集まり自由なアイデアの提案を行う「勝手にプレゼンフェス」というイベントも開催され、佐賀市の中心エリアのリノベーションなど数々のアイデアが事業化されています。
 こうした取組が評価され、「さがデザイン」は、2017年度グッドデザイン賞を受賞し、その中でも特に評価の高い「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれました。

 「人が黒きと云はば、黒き筈にてはなし、白き筈なり、白き理があるべし」
 これは、江戸時代の佐賀藩士のあり方を説いた『葉隠』の一節です。人の話を鵜呑みにすることなく異なる視点で考えてみる。そうすることで、物事を柔軟に考えることができ、よりよい発想につながると説いています。
 江戸時代、佐賀藩は、日本初の鉄製大砲の鋳造や実用蒸気船の建造など、西洋の進んだ科学技術の研究・開発を通して、日本の近代化に貢献するとともに、早稲田大学を創設した大隈重信、北海道開拓の祖とされる島義勇、東京駅を設計した辰野金吾など、新しい国づくりをデザインした偉人たちを数多く輩出しました。
 時代の変化を的確に捉え、新しいものを取り入れること。未来を見据えていた先人たちが行ってきたことは、これからもしっかりと引き継いでいかなくてはなりません。

 来年は明治維新から150年の節目にあたります。
 この記念すべき年に、佐賀の「技」と「人」を顕彰し、そしてその礎にある「志」を今に活かし未来へ継承していくため、2018年3月17日から2019年1月14日まで、「肥前さが幕末維新博覧会」を開催します。
 ふるさとの先人たちが強い志をもって新しい時代を築いてきたように、この博覧会をきっかけとして、次の佐賀の150年につながるような未来を描く志を育んでいきたいと考えています。
 デザインには、社会のニーズや変化を感じ取り未来を創造する力があり、また、人と人をつなぐ力があります。これからも、歴史や風土、地域資源など、佐賀らしい「モノ」や「コト」に、自由な「デザイン」の息吹を入れ磨き上げていくことで、佐賀をより心地よく豊かな地域にしていきます。