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平成31年3月
 
有田窯業大学校閉校記念誌あいさつ
『ものづくりの志を未来へ』

 400年余り続く佐賀の焼き物文化。長きにわたり先人たちによって守られてきた伝統を未来に引き継いでいくことは、私たちの使命であると思います。

 本校は、佐賀県の主要産業である陶磁器産業の振興のため、窯業界の後継者・技術者の育成を目的とし、昭和60年4月に県立の専修学校として開校しました。
 開校に至るまでには、地元関係者の方々から多大な御支援と御協力をいただいたこと、そして、全国初の窯業に特化した専修学校の創立ということで、大変な御労苦があったとお聞きしています。あらためて、本校の開校にあたり御尽力いただいた皆様に、心から敬意と感謝の意を表します。

 地元の熱意に後押しされて開校した本校には、県内はもとより全国各地、さらには海外からも陶芸の道を志す若者たちが集まりました。世界に誇る伝統や技術が息づく有田の町には、高い評価を受けている作家の方々や熱意ある窯業関係者の方々がおられ、また、九州陶磁文化館や窯業技術センターなどの関連施設も充実しています。このような恵まれた環境の中で、学生たちは大いに刺激を受けながら、技術を身に付け、感性を磨くことができたことと思います。
 この34年間で、卒業生・修了生は2000人を超え、その多くが地元や全国各地の窯業界で活躍されています。特に、肥前窯業圏で中心的な存在として窯業界をしっかりと支えておられることは、頼もしい限りです。

 3代目校長を務められた十三代・今泉今右衛門先生は、本校10周年の際に行われた座談会で「伝統は目に見えるものでなく、体の中に流れている血だ」と話されました。受け継がれてきた技を体に沁み込ませ、そして、今の時代の息吹を吹き込む。そうすることによって、長く愛される魅力的な焼き物を作ることができるということなのだと思います。
 このように、ものづくりに携わる人々が時代を見つめながら、常に向上心を持って焼き物に向き合うからこそ、伝統は受け継がれるのでしょう。有田で学ぶことの意味は、その志を学ぶことにもあるのではないでしょうか。

 グローバル化やIT化の進展など、現代社会は目まぐるしく変化しており、それは窯業の分野も例外ではありません。そうした変化に対応するため、理化学系講義の充実やデジタルデザインの導入など、時代に即した手法を取り入れてきました。
 平成28(2016)年には、有田焼創業400年を記念した様々なプロジェクトに取り組む中で、デザインや新しい技術など、多彩な組み合わせによる新たな可能性が見えてきたように思います。こうした取組を通じ、新たなイノベーションの種を花咲かせるのは、ものづくりへの情熱なのだと感じました。
 「窯燃ゆる町」有田で育まれたものづくりの志が、これからも燃え続け、新しい時代を切り拓かれることを期待しています。

 本日、佐賀県立有田窯業大学校は34年の歴史に幕を下ろしますが、その役割は、佐賀大学芸術地域デザイン学部と窯業技術センターに引き継がれます。今後とも、さらなる窯業人材の育成と陶磁器産業の発展を目指して、挑戦し続けられることを心から願っております。

 結びに、これまで窯大・窯大生との愛称で学生たちを温かく見守り、育てていただいた多くの皆様の御厚意に心から感謝申し上げるとともに、ここで学んだ学生や研修生一人ひとりが天に駆け上がる龍のごとく高い志を持って力強く活躍されることを祈念し、閉校の御挨拶といたします。