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令和元年11月
 
鳥栖工業高等学校80周年記念誌への祝辞
『その火を絶やすことなく』

 佐賀県立鳥栖工業高等学校が創立80周年を迎えられましたことを、心からお祝い申し上げます。
 鉄道交通の要衡地として発展してきた鳥栖は、その地理的優位性を活かして産業のまちとして栄え、近年は先進的な科学技術の拠点としても大きく躍進しています。そして、このまちの中心部に位置する貴校は、昭和14年の開校以来、佐賀県東部地区唯一の工業高校として、地域との結びつきを深めながら多くの人材を輩出してこられました。その御功績に対して、歴代校長先生ならびに諸先生方、関係者の皆様に深く敬意と感謝の意を表します。

 この80年という歴史において、鳥栖のまちが大きく変容した一方で、貴校においてしっかりと守られてきたものが、ものづくりへの技であり、志だといえるでしょう。
 そのことを知る貴校の伝統行事・キュポラ(熔解炉)を用いた鋳造実習は全国でも数少なく、長きにわたり受け継がれてきたと伺っています。1500度に上る炉を用いて鉄を溶かし形づくる工程で、生徒たちは汗を流しながら自らの役割をしっかりと果たされており、その様子を目に浮かべるとき、ものづくりに向かう揺るぎない覚悟を感じずにはいられません。
 また、習得した高度な専門技術を活かし、歩道橋の橋名板を設置したり、大雨災害で壊れた自然遊泳場を整備するなど、地域に根ざした活動にも力を尽くされていることは頼もしい限りです。
 さらに、部活動では、強豪・駅伝部をはじめ、陸上、レスリング、体操など、毎年、様々なスポーツにおいて優れた成績を残しておられ、本県が推進しているSAGAスポーツピラミッド(SSP)の中核として、国内はもとより、世界で活躍される選手を輩出していかれることを期待しています。
 それぞれの専門技術を磨きながら、心身を鍛え、地域の人々とともに汗を流す。そのように逞しく鍛えられた生徒の皆さんは、先生方の御指導に加えて、卒業生の方々が築いてこられた企業・社会からの信頼もあり、高い就職率を誇っています。とりわけ、近年は、県内に就職された生徒の割合が増加傾向にあり、大変喜ばしいことです。
 「時代は人が造る。人は学んで造られる。絶えず学び、絶えず行え」
 これは、佐賀の偉人・大隈重信の言葉です。激動の幕末期、日本初の蒸気機関を製造した佐賀藩の技術力を目の当たりにし、日本の近代化のためには鉄道が不可欠と確信した大隈は、当時、ほぼ誰も目にしたことのなかった鉄道の開業に奔走します。資金不足や用地取得の難航など数々の挫折を味わいながらもその信念は揺らぐことはなく、優れた技術者たちの力を借りながら、海上に堤防を築き線路を通すという卓抜な発想をもって、明治5年、新橋ー横浜間に日本最初の鉄道を開業させました。この時、大隈は34歳という若さでした。
 いつの時代も、社会の変革を推進していく原動力には、若い人たちの熱意があるのだと思います。学び続け、より良いものを生み出していこうと行動することで、時代は進化していくのでしょう。

 これからの時代、私たちは、目まぐるしい変化の中に生きていくことになります。特に、Society5.0と呼ばれる新たな時代の到来は、社会や私たちの日常生活を大きく変えていくでしょう。
 こうした時代において、ものづくりに携わる人たちには、学び、行動していくことがますます求められています。その意味でも、貴校で学ぶ皆さんが、技術とともに心身の逞しさを身に付け、新しい時代の頼もしい力となられていくことを期待しております。将来、磨きあげた力をぜひ、佐賀で活かしていただきたい。世界へ羽ばたく佐賀の未来を一緒に創っていきましょう。

 結びに、関係者の皆様に対しまして、今後とも鳥栖工業高等学校のために温かい御支援をお願い申し上げますととともに、本校の益々の発展を祈念いたしまして、お祝いの言葉といたします。