記者会見

●発表項目:プロポジション10・16〜佐賀からの提案〜
 今日は、いわゆる三位一体の改革についての佐賀県からの提案ということを発表させていただきます。
 お手元に「プロポジション10・16」というものがあります。本日、10月16日(木)の提案ということでこういう名前をつけさせていただきました。
 今回、我が佐賀県で三位一体改革について、独自の考え方をまとめ、ここに広く皆さん方に紹介することとしたのは、以下の理由によります。
 1ページ目を見ていただきたいと思いますが、今行われようとしている補助金の見直しというのは、単に国と地方との財源の争いではないということであります。1ページ目の一番上のところに「国庫補助負担金の見直し」とありまして、今回の補助金の見直しはそういう財源争いではなくて、地域の実情に応じてきちんとサービスを提供していくための手段であるべきだという考え方だからであります。
 2つ目が、税源移譲というものについても、これは都市と地方の税源の争いではなくて、行政サービスを選択する自由度の拡大につながるべきであると考えているからであります。
 そして、3つ目が地方交付税でありますけれども、単なる総額を抑制するということだけではなくて、地方の効率的な行政サービスの提供につながるものであるべきだ。こういう3つの考え方に基づいて三位一体改革の究極の目的は、県民の満足度が高まるような行政サービスの実現にこそあるということを訴えたかったからであります。
 具体的に、補助金が、地方が自由に使える一般財源になったらどう変わるかということを幾つかの事例でお話し申し上げます。
 2ページを開いてください。
 ここに「美味しいご飯で評判の田中さんの食堂」という例が出されています。この田中さんは、もともと栄養管理の専門家でもあった人が食堂を開いていた。こういう食堂でつくられたものを保育所で使いたい、そういうお話があります。ところが、残念なことに現在の制度下ではこのようなことができません。それはなぜか。保育所で出す給食は、その保育所の中で調理したものでなければならないという決まりがあるからであります。そして、そのようにしなければ保育所をつくる補助金が出ないことになっています。
 これが規制が緩和され、そして補助金が一般財源化されれば、このようにおいしいと評判の近くでとれた新鮮なものを、保育所の子供たちに味わってもらうこともできますし、また、そうすることによって、浮いたお金で保護者から要求の強い延長保育などを実施できるようになるかもしれません。
 一方で、保育所はやはり自校調理の所の方がいいという方もいらっしゃると思います。そういう方はそういう保育所を選ぶ、また、近所で評判のいい食事があればそれを選ぶ、そういう選択肢を選ぶことができるようになるというのが補助金から一般財源になるメリットだと私は考えています。
 また、こういう例もあります。3ページを見てください。
 これは、空き店舗を使って保育所をつくろうという例です。せっかくの空き店舗を何とか使えないかと思って保育所をつくろうとしたわけでありますけれども、人数が10人しかいないということで、今の制度上では保育所ができません。また、例えば、会社の中に小さくてもいいから保育所をつくろうとしても、人数要件があって簡単にはできません。これが補助金が廃止されて、地方で自由に使える一般財源になれば、こういう実情に応じた形で保育所をつくることができます。
 また、4ページを見てください。
 これは、夫婦でずっと暮らしていた佐藤さん一家の奥様の方が倒れて、介護施設に入所することになったという例であります。できれば夫婦一緒にこのまま暮らしたいという気持ちから、夫が、経費は全部自分で持つから入らせてくれという話をしても、現在の制度上はそのようなことが許されません。これが補助金ではなく地方の一般財源であれば、そういう人にも入所をしてもらえるような形での介護と生活をする施設をつくることができます。
 また、5ページを見てください。
 これは、手に障害を持つ山口さんの例です。こういう方々に対して役場からワープロが支給されています。このワープロは3年前に支給されました。同じような障害を持つ友人が今年、役場からパソコンをもらって、手紙を書いたり、インターネットをしたりしているということで、ワープロも古くなったことだし、パソコンに替えられないかという話を役場に持っていったところ、役場では、「あなたにパソコンを渡すことはできません」と言われた。こういう話です。これは、ワープロを渡されてから6年経たないとパソコンはもらえないという決まりがあるからであります。
 6年間というのは、補助事業の場合は、コンピューターの耐用年数ということで定められたものと思いますが、今現実にコンピューターを使っている人で、6年間同じものを使い続けるということはなかなか無いことではないかと思っております。そういう意味で、これが補助金ではなく一般財源であれば、3年前のワープロを今年のパソコンに替えて、インターネットやメールをすることができるということになります。
 そのような形で、6ページには、学校に配置されているスクールカウンセラーが学校を超えて活動することができないということであるとか、また、7ページには、空き教室を使ってNPOの活動の拠点にしようとしても、建築後10年経たないとそういう利用ができないという制度など、補助金というものが県民にとってより満足度の高い行政サービスを提供しようとする際に、このような形で阻害要因になっているということを御理解いただきたいと思います。
 9ページを見てください。
 また、補助金というのは申請をする際に、様々な事務手続が必要になります。その事務的な費用は、県庁全体で年間約2.5億円に上ります。必要な労働時間は合計で11.3万時間となります。こういう時間が、国からの補助金が自分たちで決定できる一般財源に変われば、このような労働時間や費用がかからなくなっていきます。
 補助金交付要綱に書いてあるからではなくて、どういうことをしていけば県民にとってプラスになるのか、そういう観点で仕事を進めていくことができると考えており、私どもとしては、このような観点に立って国庫補助金を一般財源にしていくべきだということを主張したいと思います。
 その具体的なロットが10ページに書いてあります。
 今、申し上げましたように、私どもとして直ちに補助金を廃止して、一般財源にした方がいいと思っているものが161件、393億円、国ベースに直せば5兆円ほどございます。
 また、今後、検討を要するものとして、生活保護費や義務教育の負担金、あと国道改修費の補助金などがあり、また、これは引き続き国の責務で行うべきであろうというものも若干残しております。
 私ども佐賀県としては、この一番左に書いてある県ベースで393億円、国ベースで5兆円のこの補助金を直ちに廃止し、それに見合う分の5兆円を国から地方へ税源移譲することを求めたいと考えております。
 そして、それを具体的に実施していくには、税収が都市部だけに偏っておらず、しかも、余り年度ごとに収入に変化のない消費税を移譲すべきであると考えております。
 そのような考え方に立って移譲するとした場合、11ページを見てください。
 消費税の移譲額が大体323億円となります。そして、交付税による影響額等を考えていきますと、もともと補助金として佐賀県が受けていた額が393億円でありますけれども、補助金廃止などにより、かからなくなるコスト最大2.5億円を差し引いても、なお15.5億円、15億5,000万円不足するということになります。
 このように税源移譲をすることによって不足する分については、私どもが先ずはコスト縮減や効率的な事業実施に努めていく努力をすることは当然でありますけれども、質の高い行政サービスの提供のためには、交付税の財源調整機能は必要であるというふうに考えているところでございます。
 以下が概要版、そして、私どもでまとめたものの本体そのものであります。
 私ども佐賀県としては、これまで行われている三位一体改革の論議が、ややもすれば何兆円補助金を廃止するのかという、いわばロットの議論に終始していて、それを廃止することによって県民的に、また国民的にどういうメリットがあるのかという議論がいささか不足しているように思っております。
 そういう議論を補うためにも、あえて実例を出して今回まとめさせていただいたものであります。
 どうか皆様の深い御理解をお願いしたいと思っております。私からは以上であります。


記者会見トップへ 平成15年10月16日記事トップへ

トップページへ

Copyright 2004 Saga Prefecture. All rights reserved.
このサイト内の文章や画像を無断転載することを禁じます。