記者会見

●配布資料:経済財政諮問会議における地方交付税改革の議論に対する意見

記者発表資料 平成16年11月1日 経営支援本部財務課
担当:石橋課長
内線:1230 直通:0952-25-7013
E-mail:zaimu@pref.saga.lg.jp

 10月22日の経済財政諮問会議において、谷垣財務大臣より地方交付税を約7.8兆円削減する提案がありました。地方自治にとって重大な問題点がある提案ですので、佐賀県の意見を整理しました。

1.谷垣財務大臣提案の概要
(1)地方財政計画の決算乖離の是正
平成13年度地方財政計画額と決算
  計画額 決算額 計画−決算
投資的経費(単独) 17.4兆円 11.4兆円 6.0兆円
一般行政経費(単独) 20.0兆円 27.6兆円 △7.6兆円

○地方財政計画で計上した投資的経費(単独)は、決算額を大幅に超過。
 ⇒自治体の一般行政経費(単独)=ソフト事業に「流用」されている。
○各自治体は、
 ・ケーブルテレビ加入料補助
 ・温泉入浴料、プール入場料の補助
 ・ペットの不妊手術
 ・男女交流会への報奨金
などの「標準的な行政水準を超えるサービス」にこの投資的経費(単独)分の財源を流用している。
○したがって、投資的経費(単独)の計画額を決算額並に是正すべき。

(2)地方交付税の総額抑制
平成17、18年度に地方交付税(臨時財政対策債含む)を7.8兆円削減する。
⇒実現した場合の佐賀県及び県内市町村への地方交付税の見込
  16年度実績 18年度見込  
佐賀県 1,632億円 1,066億円 △566億円、△35%
県内市町村 929億円 656億円 △273億円、△29%

⇒住民に対する行政サービスに大きな影響がでることは明らか

2.佐賀県の考え方
(1)地方財政計画の決算乖離の是正について
【1】投資的経費と一般行政経費の同時一体的な是正

平成13年度地方財政計画額と決算
  計画額 決算額 計画−決算
投資的経費(単独) 17.4兆円 11.4兆円 6.0兆円
一般行政経費(単独) 20.0兆円 27.6兆円 △7.6兆円

○財務大臣は、投資的経費(単独)が6兆円計画超過にあることから、計画額の縮小を提案しているが、一方で一般行政経費(単独)は7.6兆円不足していることから、この分野では逆に計画額を上積みすべきである。

【2】実際に自治体における一般行政経費の使途について
佐賀県及び県内市町村における地方財政計画で想定された決算額と実際の決算額の差(H14)
  想定決算額 実際の決算額 想定−決算
給与関係経費 2,094億円 2,074億円 20億円
一般行政経費 1,839億円 2,222億円 △383億円
投資的経費(単独) 1,391億円 959億円 432億円
投資的経費(補助) 781億円 1,183億円 △402億円
その他(公債費等) 1,623億円 1,290億円 333億円
合計 7,728億円 7,728億円  

※想定決算額:実際の決算額を地方財政計画の構成比で按分した数値

○佐賀県においても、全国的な傾向と同様に、投資的経費(ハード)よりも一般行政経費(ソフト)に決算がシフトしている。

○実際に、佐賀県及び県内市町村の一般行政経費超過分の事例をあげると、
・医療費助成(乳幼児、母子家庭、重度身障) 31億円
・土地改良関係償還助成  15億円
・保育料減免による自治体の負担額 9億円
・離島航路、廃止代替バス等住民の「足」の確保 2億円
・私学助成(県単独上乗せ分)  2億円
などであり、いずれも地域住民からのニーズに対して国が敏感に対応してこなかったために、地方が単独事業として住民ニーズに応えてきたものである。

※この他、平成16年度県予算においては、
「オンリーワン」のさが体験活動支援事業 85,028千円
トライアル発注事業 37,120千円
宅老所開設支援事業 12,500千円
放課後児童クラブ全県普及特別推進事業 7,416千円
など住民ニーズに沿った単独事業を実施している。

○また、財務大臣が交付税による財源保障が疑問と指摘した事例について、市町村の実施状況は、
・敬老年金 12団体 67,590千円
・ケーブルテレビ加入料補助 1団体 788千円
・温泉入浴料、プール入場料の補助 2団体 21,758千円
・ペットの不妊手術 3団体 590千円
・男女交流会への報奨金 5団体 2,190千円
となっている。

○これを見てわかるとおり、財務大臣の提案は、あたかも全国の自治体がこれらの事業を実施し、地方歳出が肥大化しているかのような世論をミスリードするものである。

(2)国自身が一層の歳出削減努力をすべきである
(資料)国と地方の歳出等比較
  国の一般会計 地方財政計画 地方交付税 佐賀県の予算
H13 82.7兆円 89.3兆円 20.3兆円 4,893億円
H16 82.1兆円 84.7兆円 16.9兆円 4,385億円
H16−13 △0.6兆円
△0.7%
△4.6兆円
△5.2%
△3.4兆円
△16.7%
△508億円
△10.4%

○国、地方を通じて歳出構造の見直し、財政再建に取り組んでいる時期であるが、上表のとおり地方の歳出削減努力に比べて、国の歳出削減努力が不足している。

○県、市町村いずれもさらなる行財政改革に向けて努力中であり、実施する事務事業についても住民の意向を十分踏まえながら、引き続き見直しに努力していく。
 また、平成16年度の給与水準も国とほぼ同じ水準にあると考えられる。

(3)「基本方針2004」の閣議決定との整合性なき閣僚の提案
○「基本方針2004」では、地方交付税について、「地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保する」と閣議決定済み。

○財務大臣の提案が、この閣議決定と整合性がないことは明らかであり、この前提を受けて、小異を捨てて大同につき「国庫補助負担金等に関する改革案」をまとめた地方六団体と国との信頼関係を損なうもの。

(4)地方交付税は地方の固有財源、国の一般歳出と同列ではない
○地方交付税は、国税の一部を原資としているが、地方の固有財源であることは、過去の内閣総理大臣の国会答弁から明らか。

○にもかかわらず、国の一般歳出と同様に、地方の固有財源である交付税のあり方を議論することは、憲法で保障された「地方自治の本旨」に照らして問題。

(参考)地方交付税
国税の一定割合(※)を原資とする地方の一般財源(使途は自治体が決める)
※所得税:32%、法人税:35.8%、酒税:32%、消費税:29.5%、たばこ税:25%

以上の理由から、財務大臣の提案には大きな疑問がある。

3.今後の取組み方針
 財務大臣提案が実現されれば、佐賀県だけではなく、県内市町村も含めて大きな影響を受けることとなり、事務事業の大幅見直しや、県民負担の増加、各種補助の打ち切り等住民サービスが低下することは明らか。
 この問題は、地方自治にとっての「生命線」であり、今後、市長会や町村会とともに、断固として「基本方針2004」で閣議決定された「地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額確保」を求めていく。


記者会見トップへ 平成16年11月1日記事トップへ

トップページへ

Copyright 2004 Saga Prefecture. All rights reserved.
このサイト内の文章や画像を無断転載することを禁じます。