10月22日の経済財政諮問会議において、谷垣財務大臣より地方交付税を約7.8兆円削減する提案がありました。地方自治にとって重大な問題点がある提案ですので、佐賀県の意見を整理しました。 1.谷垣財務大臣提案の概要 (1)地方財政計画の決算乖離の是正 平成13年度地方財政計画額と決算
○地方財政計画で計上した投資的経費(単独)は、決算額を大幅に超過。 ⇒自治体の一般行政経費(単独)=ソフト事業に「流用」されている。 ○各自治体は、 ・ケーブルテレビ加入料補助 ・温泉入浴料、プール入場料の補助 ・ペットの不妊手術 ・男女交流会への報奨金 などの「標準的な行政水準を超えるサービス」にこの投資的経費(単独)分の財源を流用している。 ○したがって、投資的経費(単独)の計画額を決算額並に是正すべき。 (2)地方交付税の総額抑制 平成17、18年度に地方交付税(臨時財政対策債含む)を7.8兆円削減する。 ⇒実現した場合の佐賀県及び県内市町村への地方交付税の見込
⇒住民に対する行政サービスに大きな影響がでることは明らか 2.佐賀県の考え方 (1)地方財政計画の決算乖離の是正について 【1】投資的経費と一般行政経費の同時一体的な是正 平成13年度地方財政計画額と決算
○財務大臣は、投資的経費(単独)が6兆円計画超過にあることから、計画額の縮小を提案しているが、一方で一般行政経費(単独)は7.6兆円不足していることから、この分野では逆に計画額を上積みすべきである。 【2】実際に自治体における一般行政経費の使途について 佐賀県及び県内市町村における地方財政計画で想定された決算額と実際の決算額の差(H14)
※想定決算額:実際の決算額を地方財政計画の構成比で按分した数値 ○佐賀県においても、全国的な傾向と同様に、投資的経費(ハード)よりも一般行政経費(ソフト)に決算がシフトしている。 ○実際に、佐賀県及び県内市町村の一般行政経費超過分の事例をあげると、
※この他、平成16年度県予算においては、
○また、財務大臣が交付税による財源保障が疑問と指摘した事例について、市町村の実施状況は、
○これを見てわかるとおり、財務大臣の提案は、あたかも全国の自治体がこれらの事業を実施し、地方歳出が肥大化しているかのような世論をミスリードするものである。 (2)国自身が一層の歳出削減努力をすべきである (資料)国と地方の歳出等比較
○国、地方を通じて歳出構造の見直し、財政再建に取り組んでいる時期であるが、上表のとおり地方の歳出削減努力に比べて、国の歳出削減努力が不足している。 ○県、市町村いずれもさらなる行財政改革に向けて努力中であり、実施する事務事業についても住民の意向を十分踏まえながら、引き続き見直しに努力していく。 また、平成16年度の給与水準も国とほぼ同じ水準にあると考えられる。 (3)「基本方針2004」の閣議決定との整合性なき閣僚の提案 ○「基本方針2004」では、地方交付税について、「地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保する」と閣議決定済み。 ○財務大臣の提案が、この閣議決定と整合性がないことは明らかであり、この前提を受けて、小異を捨てて大同につき「国庫補助負担金等に関する改革案」をまとめた地方六団体と国との信頼関係を損なうもの。 (4)地方交付税は地方の固有財源、国の一般歳出と同列ではない ○地方交付税は、国税の一部を原資としているが、地方の固有財源であることは、過去の内閣総理大臣の国会答弁から明らか。 ○にもかかわらず、国の一般歳出と同様に、地方の固有財源である交付税のあり方を議論することは、憲法で保障された「地方自治の本旨」に照らして問題。 (参考)地方交付税 国税の一定割合(※)を原資とする地方の一般財源(使途は自治体が決める) ※所得税:32%、法人税:35.8%、酒税:32%、消費税:29.5%、たばこ税:25% 以上の理由から、財務大臣の提案には大きな疑問がある。 3.今後の取組み方針 財務大臣提案が実現されれば、佐賀県だけではなく、県内市町村も含めて大きな影響を受けることとなり、事務事業の大幅見直しや、県民負担の増加、各種補助の打ち切り等住民サービスが低下することは明らか。 この問題は、地方自治にとっての「生命線」であり、今後、市長会や町村会とともに、断固として「基本方針2004」で閣議決定された「地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額確保」を求めていく。
|