記者会見

●発表項目:九州新幹線長崎ルートの並行在来線経営分離に関する佐賀県としての判断について
 九州新幹線長崎ルートの並行在来線の経営分離に関して、国土交通省に対し佐賀県知事としての判断を示すこととしましたので、発表させていただきます。

 九州新幹線長崎ルートについては、県としては、西九州の一体的発展に必要な交通基盤と認識しており、昭和48年以来、基本的に推進するという立場に立って来ました。しかしながら、時間短縮効果が小さいわりには地域負担が大きいことや並行在来線の経営分離という問題があり、今日まで至ってきました。
 その中で、並行在来線問題については、平成8年から凍結されていた沿線自治体との協議を本年3月に再開し、私どもなりに誠意を持って丁寧に協議を続けてきました。
 その協議の中で、沿線の方々が、長崎ルートから地理的、地形的に離れているにもかかわらず、なぜ「並行在来線」としてJR九州の経営から切り離されなければならないのかという疑問や、もし経営分離となれば沿線地域が経済的に疲弊するのではないかという不安を強く持たれているということを認識しました。
 また、この沿線地域は鉄道により発展してきたという歴史的な経緯があり、沿線の方々が鉄道に対して強い思い入れと愛着をお持ちであります。長崎本線がJR九州から分離されることは、沿線の方々にとって身を切られるような思いであることを感じました。

 昨年から与党レベルにおいて検討されている財源スキームは借入による財源確保案でありました。この案については、財政当局も批判的で、この案による新規着工区間の財源確保の可能性は低いと考えていました。ところが、今年の9月下旬以降、政府・与党ワーキングループと財政当局との協議が進み、それによりこの財源スキームの実現可能性が急速に高まってきました。
 今回の財源スキームは、これまで想定もしなかった平成29年度までの既設新幹線譲渡収入を担保とした借入で確保するという案であります。そして、その財源を充てる新規着工区間として検討の対象となっているのは、北陸、北海道、長崎ルートの三つですが、長崎ルートの条件が整わなければ、その財源が他の二つの新幹線に充てられることとなります。
 すなわち、将来にわたる収入を北陸、北海道の二つの新幹線の整備費用に充てるか、または長崎ルートを含めた三つの新幹線の整備費用に充てるのかということであります。今回長崎ルートについて財源が確保されないとすれば、国の検討条件を前提とすると、平成30年度以降にしか本格着工が見込めなくなってしまうことになります。

 このような国の動きを受けて、県としては、沿線の方々のお気持ちを踏まえ、平成8年の並行在来線区間の全線三セク化案を白紙に戻すよう、JR九州に対して申し入れました。その結果、JR九州から、他の整備新幹線の並行在来線区間では例を見ない、肥前鹿島までの上下分離方式によるJR運行を内容とする案が提案されました。また、その区間の赤字についても主としてJR九州が負担するとの追加提案がなされました。さらに長崎県からは、佐賀県からの要請があれば佐賀県負担について応分の負担をするという提案もなされました。
 こうしたJR九州や長崎県からの提案は、佐賀県のおかれている状況にご配慮いただいたものであると考えております。
 このような大きな状況の変化があることから、先日(12月7日)、私自身が沿線自治体の首長及び議長と直接お会いして、県のおかれている状況を説明し理解を求めるとともに、沿線自治体の真意を確認しました。
 沿線自治体のご意見、ご意向は様々ありましたが、最終的には、「県の立場は立場として一定理解する」とのお答えが多数であったと受け止めています。

 政府・与党ワーキンググループの検討の中で、新たな着工区間として位置づけられれば、長崎ルートの財源が確保されることになります。
 そのためには、並行在来線の経営分離について地元同意が条件づけられており、沿線自治体の同意が得られることが望ましくはありますが、財源確保のためには、少なくとも県の同意が必要となります。
 並行在来線の沿線自治体においては、JR九州からの経営分離について、いまだ根強い不安があり、すべての自治体の同意は得られておりません。
 このような状況を踏まえ、佐賀県としては沿線自治体の同意を得るべく引き続き誠意を持って協議を進めなければならないと考えます。
 しかしながら、ものごとには“時分”があると考えます。沿線自治体すべてからの同意は得られていない状況にありますが、
・今回の機を逸せば平成30年度以降にしか本格着工が見込めなくなること、
・また、平成8年当時には考えられなかったような肥前鹿島までのJRによる実質的な経営存続という譲歩案をJR九州が示していること、
・さらには長崎県におかれても佐賀県のおかれた立場への理解と支援を表明しておられること、
 こうしたことを考え合わせると、今“そのとき”が来ているのではないかと考えます。

「今がそのとき、“そのとき”が いま」

 『葉隠』のこの言葉をかみ締めつつ、整備に向けた財源確保のため、並行在来線のJR九州からの経営分離については、佐賀県としては基本的にはやむを得ないと考えます。

 現在、長崎県及びJR九州から前向きの提案がなされ、一定の理解が得られているところでありますが、JR九州による経営存続を望む沿線自治体の声を受け止め、JR九州・佐賀・長崎両県・沿線自治体でさらに検討を進めていくことが必要であると考えます。
 こうした努力により、この地域における鉄道経営のあり方が、少しでも沿線地域住民の方々の気持ちに添ったかたちにしていきたいと考えています。
 併せて、これを機会に沿線地域を対象とした佐賀県としての地域振興策を策定していく場を作っていきたいと考えているところであります。
 今回、財源が確保されたとしても、実際に、着工に向けた認可がなされるためには、沿線自治体の同意を得ることが必要となります。
 佐賀県としては、沿線自治体の同意を得るべく引き続き誠意を持って協議を進めていきたいと思っています。
 佐賀県民の皆さん、そして関係者の方々の深い御理解をお願い申し上げます。


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