記者会見

●質疑応答:三位一体の改革について
○日経新聞
 新幹線関係の話の陰に隠れて、夏以降、三位一体の改革についてはちょっとペースが落ちたのかなと、パワーが落ちたのかなという印象を持っています。
 それに絡みまして、新幹線があるために、今回、財務省、国交省、それから出身議員とかなり折衝されるなかで、三位一体の改革ではけんかをしながら、新幹線関係ではお願いするという、その辺に何か自分の中でジレンマみたいなものを感じましたか。また。今年あまりうまく動けなかったという反省がもしあるんだったら、聞かせてください。
○知事
 夏以降、全国知事会の麻生会長から国民運動小委員長という役職を与えられて、私なりには、そっちの方では相当動いていたつもりです。
 佐賀県としての露出や動きというのはあまり見えなかったかもしれませんが、例えば、三位一体改革の最後の局面で、生活保護費を加えるかどうかという話になりかけていたときに、都道府県レベルで初めて報告事務の停止ということを打ち出したのは我が佐賀県であります。その動きが、呼びかけをしていた首都圏に広がり、そして、そういう広がりの動きを受けて、全国知事会としても加盟の47都道府県に対して情報送信の停止を呼びかけるという動きになっていって、結果、生活保護の話というのは今回消えたわけですね。だから、こういったものは、非常に実をとった活動になっていると思っています。
○日経新聞
 知事がそういう意味で、先頭に立たれた。
○知事
 首都圏の一部の市は、もう既にやらないということを決めていましたけれども、都道府県に広がりがなかったんです。私は全国知事会で一遍、提案したんですが、その時には、気持ちもわかるけど、我々はきちんとやろうよという感じだったんですが、話が進んでいったので、このままではどうしようもないと思いまして、そういう提案をし、事実、佐賀県は11月から、データの送信を停止することを決めて、そして、ほかの県にもということで、全都道府県に呼びかけをしました。全国知事会や政令市長会にもそういったことをお伝えしたんですね。そうしたら、例えば、千葉県の堂本知事なんかからすぐ返事が来まして、佐賀県が勇気あることをやってくれたので、私たちも首都圏でやりたいということになって、今度は首都圏の8都県でやることになり、そういう感じで広がっていったんです。
 私は前々から言っているように、何でも地方がやればいいとは思っていないんです。国は国として大事なことをやっていただかなくてはいけません。ただし、地方に任せた方がいいものは地方に任せてほしい、このように思っているんです。道路などについても、細かな生活道路の一本一本まで全部国がはしの上げ下ろしをするという必要はないと思いますけれども、事この新幹線や、例えば、高規格道路のような国の事業については国がイニシアチブをとってやる。私たちも、これは必要だという判断をしたのであれば、国と一緒になってやるということは、私はおかしくないと思っています。
○西日本新聞
 今のお話に関連してなんですが、要するに、今年で三位一体の改革が一段落して、次、第2ステージをどういうふうにしていくか、委員会を作るのか作らないのかという話もあると思うんですけど、要するに、知事が考える今後の三位一体の改革というのはどういうものかというのと、それと関連して、いわゆる分権の視点から道州制というのをどういうふうに考えていらっしゃるかというのを伺いたいなと思っています。
○知事
 第2改革をどうしていくかそのものは、知事会の中で、その次のステップとしてぜひとも実現したいということで今進められていますし、地方分権改革に終わりはないということだろうと思います。
 それはそれで進めていきながら、私が大事だと思っているのは、確かにこれまで二、三年かけてやってきた地方分権改革は、額的には3兆円の税源移譲という、いまだかつてだれもできなかったことがなし遂げられたという意味では評価をされていいと思いますが、そうなったことが住民から見たときに、満足度の向上につながるような改革になっているかというと、そこは残念ながら極めて不十分だと思うんですね。余り裁量の余地のないような補助金や負担金が一般財源化されてしまっている。そういう制約があるということは重々承知の上でのことなんですが、そうであっても、一般財源化されたものの中で、できる限り自治体が裁量を発揮して、かつて国のお仕着せでやるしかなかったものが、自治体の創意と工夫で実現できるようになったら、物事がこんなに変わったという実例をどんどん作っていかなくてはいけないと思っています。私は、そういう実例を作っていくことこそが、雄弁に地方分権改革の必要性を物語るのではないかと思っています。
 道州制については、もう議論の段階から実現に向けてかなり進むステップのような気がしています。もちろん、全国知事会の中でも道州制については不要論から積極的推進論までさまざまあります。しかしながら、ここ100年以上にわたって、東京都は100年前はありませんでしたが、府県というものがあって、市町村は合併しました。国も21世紀の初頭に組織の大きな変革がありました。私は、そういう中で都道府県だけが今のままでいいという議論は通用しないと思います。だとするならば、それは、これからの時代に広域的自治体としてあるべき姿は、都道府県の合併なのか、道州制なのか。連邦制というのは、現実味は余りないかもしれませんが、どういう形が望ましいのかということは、これまでの机上の議論から実現に向けた実質的な議論へステージを変えていくんではないかと思っています。全国知事会の中でも相当突っ込んだ議論が闘わされていまして、終わった後でも、食事しながらでも知事さん同士、「自分は必要だと思う」とか、「いや、そんなことやっているとおかしくなる」とか、賛成、反対、いろんな議論があるようなテーマです。私は、それが道州制になるかどうかということは別にしても、都道府県の形がこれまでと全く変わらなくていいということはないのではないかと思っていまして、これは来年、私たちも道州制については、もうちょっと突っ込んで議論と発言をしていきたいと思っています。
○西日本新聞
 知事はどういう方向が望ましいというふうにお考えですか。
○知事
 私は、自治を強化する方向での都道府県合併、または道州制だと思っています。「自治を強化する方向で」とつけているのは、例えば、国で議論されている、または経済界の方がよく議論されている道州制というのは、国の直轄機関、例えば、名前は知事ですけれども、ほとんど長官のイメージに強いようなものであるとか、要するに、都道府県はむだが多いので、市町村合併と同じようにまとめてしまって、知事の数を減らせば効率化につながるとか、そういう議論が結構あるのも事実なんですね。
○西日本新聞
 いわゆる行革の側面からということでしょうか。
○知事
 そのとおりです。行革の側面から考えるか、国の形という側面から考えるかという大きな違いがあるということです。
○日経新聞
 経済界が「九州府」というような名前を上げたんですけど、どうでしょうか。ネーミングというのはかなり重要だと思うんですけれども。
○知事
 府というのは、太宰府の「府」なんですけれども、つまり、それは中央政府の出先機関なんですよね。だから、中央政府の出先機関のようなイメージで、たまたま公選で長を選びましょうとか、公選の議会を作りましょうというイメージだと、それは少なくとも私が思っているイメージとはやや違うなと思っているんです。そこは、違いを認める社会になるかどうかなんです。
 あそこではこうやっているのに、何でうちもこうならないんですかという質問というのが、私のところでも毎日たくさん寄せられます。ほかと同じであるべきだ、違いを許さないという社会文化がこれからもずっと続けば、私は違いが出てくるような形での道州制って難しいと思うんです。でも、あっちはあっちで、こっちはこっちだと。こっちはこういう点はマイナスだけども、こういう点はプラスだとか、そのような、それぞれの地域ごとの特徴を出していくようなことが国民の中、住民の中に受け入れられれば、そのときに自治を強化した形での道州制というものの実現性が出てくるんだと思うんです。だから私は、そういったことを目指していきたいと思います。
 だから、私は少なくとも、その意味では「府」ではなくて、九州って、もう「州」がついていますので、「九州州」という言い方はないんだと思いますけれど、「州」というのはもともと「国」という意味なんですね。旧国単位で九つ国があったから九州と言うわけですね。その九つの国が集まったのに、それを「州」と呼ぶのはさらにおかしいんじゃないかと思っているんで、言うとしたら「九州道」なんだと思います。もう英語の名称まで考えていまして、英語だとプロビンシャル・ガバメントと言うんだと思うんですね。

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