記者会見

●質疑応答:城原川の河川整備について(その1)
○朝日新聞
 城原川の河川整備について、質問します。まず、基本高水について、何人かに聞くと設定が高過ぎるのではないかという疑念が聞こえてきますが、その点については、どうお考えでしょうか。
○知事
 基本高水が果たして大丈夫かというのは、我々の最初の疑念だったわけです。ぜひ基本高水が高過ぎるというお考えの方は、私どもの議論の経過、資料等、発言内容は全部ホームページで公表していますので、ぜひ見てほしいと思います。その議論のどこがおかしいのかということを指摘していただければと思います。
 我々は最初から690立法メートル/s ありきで議論をしていたのではなくて、むしろ690立法メートル/s ではないのではないかというところでずっと協議をしておりました。そういう中で、平野アドバイザーからもいろいろな指摘をいただいておりました。
 平野先生の方からは、28水のときに690立法メートル/s の雨が降ったということについて 100%事実だということはできないけれども、計画論として100年に一度の洪水に対処するということを考える場合に690立法メートル/s ということで考えるということはおかしくないという判断をいただいて、そのことについては、メンバーはすべて同意をしているわけです。ですから、そこのところはぜひ御理解いただきたいと思います。
 私も含めて、まずは690立法メートル/s が果たして妥当なのかということで随分議論を重ねた結果、いろいろな数字や、貯留関数法、そうした方法によった場合にはこうなっていきますということで算出しました。そもそも確かに貯留関数法によらずに、他のやり方でやれば、もっと違うのではないかということがありますけれども、貯留関数法は、それで一つのやり方としておかしなものではないということで、構成メンバー、そして、中立の立場で見ていただいている平野先生もオーケーされているものでありますので、私はそれがおかしいとは、今は思っていません。
 かつては、正直なところ本当かなと思っていましたが、今は、これはある意味妥当な数字ではないかと思っています。
 ぜひ、その数字がおかしいと指摘される方からは、こういうやり方がおかしいとか、この部分の数字がおかしいとか、具体的な反論をお願いできればと思います。
○朝日新聞
 人工建造物ができることによる生態系、または環境への影響については、どうお考えでしょうか。
○知事
 人工建造物ができることによる生態系、また環境への影響というのは、これからアセスメントをやっていく中で、どういう影響が具体的に発生するのかということをきちんと検証していかなければいけないと思っています。
 確かに、建造物ができるわけですから、それは高速道路であれ、ダムであれ、何であれ、人工構築物を造るときには影響はあると思いますので、それがどういう影響がどんな形で生じていくのか、アセスメントを通じて検証していきたいと考えています。
○朝日新聞
 このダム事業というのは、脱ダムという過去の流れに逆行するような判断ではないかという声も聞かれますが、そうした考えについてはどうお考えでしょうか。
○知事
 できればダムは造りたくはありませんでした。ダム以外でできるものなら、そちらの方がいいというのが首長会議の基本だったわけで、私自身はそう思っていたわけです。ただ、治水に対して責任を持たなくてはいけない立場ですから、造りたくないから放っておけばいいということにはならないと思います。
 では、責任ある立場としてどういう態度をとるべきかというと、一つには安心して暮らせるような施策を講じていかなくてはいけない。もう一つは、少々のことであれば、我慢をしていただくということもとり得る政策ではないかと考え、そういったことを含めて今回議論をしていったわけです。
 前提となるのは690立法メートル/s ということで考えていって、では、具体的にどういうやり方があるのかということで、皆さんも御承知のように、何案も出して議論をしていったわけです。しかしながら、当事者となる、つまり、仮に遊水地であれば、遊水地を造るのは神埼町になり、神埼町長さんからは、こういう案は現実的でないということも言われましたし、コストを安くするための、例えば、引堤みたいなことをやると、相当川辺の雰囲気が変わっていってしまうわけです。
 確かにダムが嫌だとおっしゃる方々は、城原川が変わってしまうのではないかという御指摘があって、その気持ちは私もよくわかるのですけれども、では、ダムによらずして、河川改修、河道改修だけでやろうとした際に、相当川を掘って、今の城原川の風景というものが変わる形でしか事業ができないとすると、私はむしろ、そっちの方が城原川の今の雰囲気を壊すことになるのではないかと思うのです。
 確かに、上流に工作物ができるということは、景観上もあまりいいことではないと思いますけれども、そのことさえ、ある程度許容していただけるとすると、中流から下流にかけてのあの風景というものが、きちんと河川改修を330立法メートル/s までした上では保たれるということになるのだと私は思っています。そちらの方が広い城原川の沿川を見たときには、より多くの流域住民の方々から見れば、今の城原川の姿が守られるということになるのではないかと私は思っております。
 今回の判断をするに当たっては、私も以前お世話になっておりました長野県の様子も随分私どもなりに勉強をさせていただきました。
 皆さんも、これは公表されておりますので、御承知かと思いますけれども、例えば、浅川ダムというダムについて、田中知事はダムを造らないという御判断をされたわけですが、では、今はどうなっているかというと、確かに堰堤が 100メートルあるようなダムの案は消えましたけれども、今、案として検討されているのは、堰堤の高さが50メートルとか35メートルとか、そういった河道内遊水地というものを造らないと、治水の安全度を確保できないという議論になっていっているわけです。
 さらに、それが1個では足りなくて、幾つかずっと砂防堰堤みたいなものを造っていって、トータルでとにかく水を何か止めるようなことをしていかなければ、浅川ダムの治水は守れないということになっていて、私どもが聞いているところでは、そういう案について、まだ長野県庁の中でも知事の御判断をいただいておらず案の段階だということです。また、そもそも非常に治水安全度を低くする方法では、国の考え方と合わないものですから、国の了承も得られていないということになっているのです。その結果、結局、脱ダムという方向性を示されたものの、それに替わる案については、国の方も納得するような、また関係者間でも合意が得られるような、そういったものはできていないと思っています。
 私は、でき得る限りコンクリートのダムを造るべきでないとする田中知事の脱ダム宣言のスピリットには、大いに共鳴するところが大でありまして、私もその方向性には賛成するのですが、会見の時にも申し上げましたように、こと城原川に関して言えば、私は治水に責任を持つ者として、ダムよりももっと効率的で、かつ安全度が確保できる対策を講じることができないと判断をしたということなのであります。
 それは、ぜひとも中流、下流の方にも御理解いただきたいのは、それを実現していくためには、どうしても脊振村の方々の御理解を得て、御迷惑をかけて整備していくしか、安全な暮らしを確保することはできないということでありまして、そういう御理解をお願いする作業をこれからやっていかなくてはいけないということだろうと考えています。
○朝日新聞
 昨日も神埼町の人が来ましたけれども、そうしたダム建設に反対派への対応としてはどのようなものを具体的に考えていらっしゃいますか。
○知事
 今回、私どもが提案させていただいた流水型のダムというのは、ダムという名前はついていますけれども、私どものイメージとして堰みたいなものだろうと思っております。
 自然には堰があって、普通は水が流れて、洪水のときにはそこでひっかかるものがありますが、今までダムは造るべきでないとおっしゃっていた皆さん方がイメージしておられる、ずっと水がたまるようなダムとは違うということを、ぜひまず知っていただきたいと思います。
 私たちがどうしてそういう結論に達したのかということを、例えば、私どもで出しております資料などを見ていただければ、ある一定の御納得はいただけるのではないかと思っております。水を流す、水だけでなくて土砂も流すという形で、今の城原川の生態系や水質、そして、栄養塩の流れていくありさま、そういったものをできるだけ変えない形で、しかも、治水を達成するということをやるためには、私もこの方向しかないのだろうと思っておりまして、ぜひそこは御理解を賜りたいと思います。
○西日本新聞
 昨日は、知事は各省庁を回られたと思うのですが、まず一つは、城原川の案についての提案をお話しされたと思うのですが、それはどういうやり取りだったのでしょうか。
○知事
 城原川については、国交省の河川局を初めとする関係の方々のところにお邪魔をし、お話をさせていただきました。河川局長さんからだったと思いますけれども、河川局としては不特定用水の確保というところが非常に気になるというお話をされました。
 私どもは、不特定用水の確保については、今後、議論をしていかなくてはいけないと思っているということを申し上げましたが、その際にも私どもが今回これでいってほしいと判断をしているものは、あくまでも水と土砂をそのまま流していくという案であるので、こうしたものの前提の中で不特定用水の確保というのがどれだけ可能なのかということでの検討をお願いしたいということを申し上げました。
 私どもが、水を流しながら、どうやって不特定用水を確保していくのかということについて今考えていることを申し上げます。以前から城原川の水の取り方については、一般論としてではありますけれども、比較的中流や上流の方でたくさん水を取っておられて、そのために下流の方に水が回らないということが言われています。それは、歴史的な経緯もあり、理由もあることではあるのですけれども、現在の水の必要量についてもう一度関係者間で洗い直しをしたときに、もう少し中流や上流の方々に水を取っていただくことを御遠慮いただくようなことが考えられないのだろうかと考えております。
 仮に、不特定用水の分を確保したダムを造る場合にも、そういう沿川の関係者における水の取り方についての協議が調わないと、実際上は下流に水は行かないわけでありまして、いずれにしてもこの協議をしなくてはいけないわけでありますから、協議することによって、役人風に言えば「適正な水利用の確保」といいましょうか、そういったことができるように、まずは関係者間で議論と相談をしていただくような場を作って議論をしていきたいと思っております。
 関係者間で合意を得られることによって、今よりも下流の方に水が行くということが確保できるのではないかと思っておりまして、その水量で足りるのかどうか、さらにその先のことについては、またその段階で考えていただくということでどうだろうかと思っています。
○西日本新聞
 国は、流水型というダムについては、特に異論はなかったんですか。
○知事
 いや、国は流水型にしてしまうと不特定用水の確保ができないのではないかと、本当に大丈夫ですかとおっしゃられています。それと、あの沿川というか、城原川は最後の水がめでもあるので、本当にそういう判断でいいのかということについては、自分たちも少し検討をしたいということでございました。

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