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記者会見
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配布資料:佐賀商工共済問題における県幹部職員への求償の可否に係る 専門家の意見の概要及び今後の対応を公表します

記者発表資料 平成19年10月25日
商工共済対策チーム
担当:白井課長(職員課)(内線:1210)
直通:0952-25-7011
E-mail:shokuin@pref.saga.lg.jp

 佐賀商工共済問題における県幹部職員への求償の可否について、専門家に意見をお願いしていましたが、この度、下記のとおり回答がありました。
各専門家の意見を受けての県における今後の対応をお知らせします。

1 専門家の氏名
・小早川 光 郎(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)
・宇 賀 克 也(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)

2 意見の概要
【小早川光郎教授】
(平成8年当時の県関係職員について)重過失があったとまでは言えず、国家賠償法1条2項による県の求償権は成立しないとみるべき事案であるように思われる。

【宇賀克也教授】
平成8年当時の知事及び商工企画課長について、重大な過失があったと認定されてもやむを得ないと思われる。

3 県における今後の対応
 国家賠償法に基づき、平成8年当時の関係職員に求償していくためには、その職員の行為に「故意又は重大な過失」があったことが必要になります。この「重大な過失」とは、最高裁判決(昭和32年7月9日 第三小法廷判決)によると、「ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態を指す」と解されています。

 佐賀商工共済問題に係る6月22日の佐賀地裁判決では、県の責任について、「その点において少なくとも過失があった」という判示がされているだけであり、国家賠償法上の求償権を行使するための要件とされる「故意又は重大な過失」があったという認定ではなかったことなどから、訴訟代理人の意見を聞くなどして、平成8年当時の関係職員に対する求償はできないと判断し、その旨申し上げてきました。

 しかしながら、その後、当時の県幹部職員についての責任の所在を明らかにすることを求める県民の声や県議会の決議等があったことから、改めて、わが国でも有数の行政法・国家賠償法の専門家の意見を聞き、虚心坦懐に判断することとしたところです。

 今回、二人の専門家の意見が出され、そのうちの一人の専門家(宇賀教授)は、平成8年当時の知事及び商工企画課長について「重過失があったと認定されてもやむを得ない」との意見を述べられています。
一方、もう一人の専門家(小早川教授)にあっては、「県の求償権は成立しないとみるべき事案であるように思われる」とされる中で、これらの両意見を踏まえての判断をするに、少なくとも一方から、法律上、求償の可能性が出てきた以上は、公金で賠償金を支払った県としては、県の損害を最小限に抑える観点から、今後、平成8年当時の県関係者に求償する方向で対応すべきものと考えています。

 ただし、求償の相手方については、上記6月22日の佐賀地裁判決における事実認定にもあるように、当時の知事を含めた組織としての判断を行っているものであることから、最高責任者であり、意思決定に当たって最終的な責任を持つ当時の知事に対して求償する方向で検討したいと考えています。
 また、同判決に基づけば、前知事を含めたところで実質的な判断が行われた当時の状況の下で、前知事が最終的な判断をし、決定権を行使したと認められることから、部下職員であった商工企画課長その他の職員については、現時点では、求償はできないものと考えておりますが、このことについては、今後さらに類似の事例等も研究しながら、弁護士と協議してまいりたいと考えています。

専門家の意見の概要

小早川教授

宇賀教授

重過失が認められるためには、公務員がその職務執行にあたって通常人に要求される程度の相当な注意を怠ったというだけではなく、そうした問題以前の、ほんのわずかの注意さえ保っていれば結果を予見できたのになぜかそのようなわずかの注意すら欠き、それにより被害発生に至ったという場合であることを要する。
本件におけるそれぞれの公務員の行動に関しては、平成8年時点でとられた処置の適否の問題があり、また、それ以後における事態の推移に応じた適切な対応の欠如や、その背景としての担当者交替時における引継ぎの不備なども、問題とされうるであろう。
しかし、本判決および今回提供されたその他の資料にもとづいて考える限りでは、知事またはその他の公務員について、上述の意味で、ほんのわずかの注意さえ保っていれば結果を予見できたのにそのような注意を欠き重過失があった、とまでは言えず、したがって国家賠償法1条2項による県の求償権は成立しないとみるべき事案である。

(1)知事について
(課長からの)報告の「試算」の根拠について慎重に確認すべきであったし、その確認を怠ったことを別としても、粉飾経理が行われていることを知った以上、業務改善命令を出すべきであり、それをせず、監督を強化するような指示も出さず、具体的な対応を部長・次長・課長に委ねてしまったことには重大な責任があり、故意があったとまではいえないが、権限不行使について重大な過失があったと認定されてもやむを得ない。
(2)商工企画課長について
組合の事業の遂行につき明確な見通しもなく、また、その後の監督についての確固とした方針もなく、同組合が有価証券の入替えにより収益を増加させて再建可能であると軽率に考え、同組合の資産・能力を十分に考慮せず、調査不十分なまま、同組合が粉飾経理をしながら事業を継続することを黙認した点で重過失があったと認定されてもやむを得ない。
(3)商工労働部長・次長について
課長が示した「試算」の妥当性についての検証を行わないまま、知事へ報告を行った部長・次長の行為は上司としての監督責任を十分に果たしておらず批判されるべきであったとはいえ、重過失があったとまでは言い難い。


【専門家のプロフィール】

氏  名

小早川光郎

宇賀克也

東京大学大学院
法学政治学研究科 教授

東京大学大学院
法学政治学研究科 教授

研究分野

行政法

行政法

研究課題
(テーマ)

行政手続法、行政訴訟法、国と地方の関係 等

国家補償法、行政手続法、
情報公開法 等

主な研究業績

「上級行政法」(有斐閣2006年)、「改正行政事件訴訟法研究」(有斐閣2005年)、「行政手続法逐条研究」(有斐閣、ジュリスト増刊1996年)他

「行政法概説I、II」(有斐閣2006年)、「地方自治法概説〔第2版〕」(有斐閣2007年)、国家補償法(有斐閣1997年)他

特記事項

・第28次地方制度調査会委員、司法制度改革推進本部行政訴訟検討会委員 他

・「小田急連続立体交差事業認可取消訴訟」で最高裁判所に意見書を提出

・総務省政策評価・独立行政法人評価委員会政策評価分科会臨時委員、国家公務員I種(法律)試験委員 他

・司法制度改革推進本部主催「行政訴訟検討会」の行政事件訴訟法改正についての説明者





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