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記者会見
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発表項目:佐賀商工共済問題の判決に関する県の対応

 本日閉会をいたしました6月の定例県議会におきまして、佐賀商工共済協同組合の破産を巡る損害賠償請求訴訟に関しまして、損害賠償金を支払うための予算議案を提案しておりましたが、本日、議決をいただきました。
 これによりまして、損害賠償金として約5億8,500万円の県費を支払うことになります。また、県の責任者としての責任を取るため、私自身の給料を2カ月間、全額減額することといたしました。
 この問題は、平成15年8月に佐賀商工共済協同組合が破産をして以来、4年という長きにわたりまして、破産原因をつくった組合の経営者とともに、組合の粉飾経理を知っていた県に対しても、監督する行政庁としての責任が問われてきた事案であります。
 平成16年2月、県は内部調査により、県に法律上の責任はないという結論を出しましたが、同じ年の10月、そのことに納得されない組合員の一部の方から、組合の経営者と県を相手取って訴訟を提起され、以来、2年半余りにわたりまして、県民と県とが法廷の場で争ってまいりました。
 その結果、去る6月22日に言い渡された判決におきまして、県の法律上の責任を認め、賠償金の支払いを命ずる裁判所の判断が示されました。
 県としては、この裁判所の判断を重く受け止め、また、組合の破産によって、長い間大変なご苦労をされてきた被害者の方をできるだけ早く救済していくためには、判決を受け入れるしかないという判断に至り、あえて控訴することをせず、今議会において県議会の議決をいただき、賠償金を支払うことといたしました。
 このことについて、県民の皆様のご理解を賜りますよう、切にお願いを申し上げます。
 以下、詳しくご説明いたします。
 まず、判決に至るまでの経緯であります。
 組合の破産は平成15年8月でございますが、そもそも県の責任が問われる原因となりましたのは、平成8年7月、組合を指導すべき立場の県の担当職員が、組合から調査の依頼を受け、それにより組合の粉飾経理を知っていたという事実であります。
 県は、佐賀商工共済協同組合を監督する行政庁でございます。粉飾経理という違法行為を知った場合には、中小企業等協同組合法に基づき、その改善を指導する立場にありますが、当時、県としては、その違法行為を知りながらも、組合の経営陣が再建をあきらめず、自主的に経営改善の努力を行っているとの説明を受けていましたので、その取り組みを見守ることとしました。
 しかし、結果的には、平成15年8月に佐賀商工共済協同組合は破産をいたしました。平成8年以降、県がとってきた対応について、監督する行政庁としての責任を果たしてきたのかどうかという点が争点となったものでございます。
 中小企業等協同組合法に基づく県の責任について争われた事件は、全国的にも過去にも例がなく、その判断が非常に難しい事案でございました。
 県では独自の調査を行いました。その結果、この法律は組合の自主性を重んじている。行政庁の関与の度合いが薄く、当時の県の対応に問題はあったものの、法律上の責任があったとまでは言えない。すなわち、県は損害賠償をする義務を負わないとの結論に、当時、至りまして、法廷においても、県は賠償義務を負わないという主張を続けてまいりました。
 訴訟の過程におきましては、昨年3月、裁判所からの和解勧告もございました。その時点では、県としての主張もまだまだ尽くせておりませんでしたし、何より、組合破産の原因をつくった組合責任者に対しては和解勧告がなされず、いわば組合関係者の責任は不問に付したまま、県だけに和解を求める内容となっておりましたので、これでは県民に対する説明ができないと考えまして、和解には応じず、引き続き主張を続け、今回の判決を待つことにしたものでございます。
 この間、県議会の議論におきましても、この問題に県が法律上の責任を負うのかどうかについては、法律上極めて微妙なところがあり、裁判所の判断を仰ぎたいということを一貫して説明してまいりました。
 その結果、6月22日の判決で、当時の県の対応には過失があったという認定がなされ、県に法律上の責任を認める裁判所の判断が下されたものであります。
 次に、控訴しないこととした県の判断についてでございます。
 今回の判決自体、それ自体が法律上の責任なしという主張を続けてきた県にとりましては、主張が退けられるという残念な結果になったわけでございます。また、その判決内容も大変厳しいものでございますが、県として主張すべきは主張をし、審理が尽くされた上での判決でございます。この裁判所の判断は重く受け止めなければならないと考えております。
 もちろん、その一方で、この判決に納得ができない場合には、引き続き上級審で争っていくという選択肢もございました。ですので、県では判決の内容をしっかりと見ていきながら、そういう上級審で争う可能性、そうすべきではないかということについても内部で議論を行いました。
 しかしながら、県が控訴いたしますと、この問題の解決と被害者救済がさらに遅れることになります。また、過去にも例を見ない、組合破産を巡る今回の事案について、裁判所の判断を待つしかないということを訴え続けてきた、これまでの経緯もございます。
 もちろん、最高裁まで争うことも可能でありますし、県民の方の中にはそのような声もございますが、約3,700人もの被害者、しかも、その多くは高齢者です。また、県議会においても熱心に議論がなされまして、平成17年3月の佐賀商工共済問題特別委員会での早期解決を求める決議をはじめ、判決を受けた後の今度の議会におきましても、そのほとんどは、早期の被害者救済を求めるものでございました。
 今回の判決を受け入れるという決断は、こうした経緯を踏まえたものでございます。被害者の方々をできるだけ早く救済していくためには、これ以上、裁判を続けることなく、公金を投入して救済をするしかないと考えまして、議会にそのための予算を提出し、県議会でのご議論を経てご承認いただいたものでございます。
 以上、申し上げましたように、今回の判決につきましては、控訴期限はあすでございますが、県としては、今回の判決を受け入れることによりまして、できるだけ早い被害者救済を図りたいと考えております。今日までに原告の多くの皆様が、このことについて、ご理解を賜ったことについて感謝を申し上げる次第でございます。
 なお、別に審理が続いております、いわゆる第二陣訴訟につきましても、今回の判決の受け入れに伴いまして、今回の判決における損害額の認定の基準、考え方に沿った形で、なるべく早い解決を図っていきたいと考えております。
 さらに、訴訟を提起されておられないその他の被害者におかれましても、今回の判決において、県の過失によって被害者の方が被害を被られたとの判断がなされた以上、裁判を起こされていなくても何らかの救済策を講じていくことが県として必要であるという判断をいたしました。
 裁判を提起されていないのだから、救済する必要はないという考え方もあり得ましたが、判決で県の過失がひとつの原因となって被害を与えたという考え方が示されている以上、これを受け止め、その他の被害者に対しても救済していかなければならないと私は考えています。具体的にどうしていくのかについてはこれから検討に入っていきますが、できるだけ早く、できれば年内をめどに救済策を講じていきたいと考えております。
 次に、組合経営者に対する求償についてです。
 県としては、今回判決で示された義務を履行していかなければならないと考えていますが、今回の問題の一次的な責任は、組合を破綻させた経営者にあると考えておりますので、当時の組合の経営者に対して法律に基づき求償をしていくことになります。
 ただ、今回の判決の中で、当時の経営者は約10億3,500万円や約10億3,000万円といった多額の賠償金の支払いを命じられています。本来であれば、個人資産の中から被害者に対してこの賠償金を支払っていただかなくてはなりません。これらの方々に県がさらに求償をすると、本来、被害者の救済に回るべきところが、県への支払いに充てられてしまうことも考えられます。
 今回の事件において、最も優先すべきは被害者の救済であると考えますと、具体的にどのようにしていくのかについて、なかなか難しい部分もございまして、訴訟代理人ともよく協議をしながら進めていきたいと考えております。
 次に、当時の県幹部職員の責任でございます
 また、当時の県の対応に法律上の責任が認められた以上、当時の県幹部職員の責任はあるものと考えております。ただ、当時の幹部職員はいずれも退職をしております。県としての人事権に基づいた何らかの処分をするということはできなくなっている状況にございます。この点に関して、県が支払う賠償金について、関係した幹部職員に負担を求めるべきではないかというご意見を、多くの県民からいただいております。このことについて若干ご説明をさせていただきます。
 今回の賠償金は、県の法律上の責任を認める判決に従いまして、国家賠償法に基づき、県が支払うものであります。当時、県という組織で判断ミスを犯したのであれば、また、県幹部職員にその責任を認めるのであれば、職員個人としての責任を追及したいという思いはあります。
 しかし、国や地方公共団体が賠償金を支払う場合、関係した職員個人に求償をすることができるのは、国家賠償法の規定によれば、その職員に「故意又は重大な過失」があった場合に限られていて、それ以外は求償できないとされています。
 今回の判決によりますと、「平成8年7月中に、速やかに粉飾経理の是正などを指示する業務改善命令を発令する義務があったというべきであり、平成8年8月以降も上記規制権限を適切に行使せず、これを漫然と放置したのは、中小企業等協同組合法の趣旨、目的に照らし、許容される裁量の限度を逸脱して著しく合理性を欠くものであり、その点において少なくとも過失があったものというほかなく、原告らとの関係で、国家賠償法1条1項の適用上違法であると言わなければならない」、このように判示をされています。職員個人が賠償責任を負う故意または重大な過失があったという認定ではない判示のされ方でございました。
 こういう判決を見ますと、職員個人に国家賠償法に基づく求償をするということはできないと考えられます。このことについては、訴訟代理人をはじめとして、複数の法律の専門家の方にも確認をいたしました。「判決の文において、重大な過失についての記述がなければ、それは重大な過失が認められなかったということではないか」という返事をいただいているところでございます。
 当時の県幹部職員の責任、これについて私どもとして認めながらも、個人求償をすることが法律上できないということについては、県に求償できる権利があるのに行使をしないということではないということを、どうか県民の皆様にご理解を賜りたく存じます。
 ただ、法律上の問題が仮にそうだったとしても、これだけの多額の賠償金を支払うこととなるということについて、当時の知事をはじめ、幹部職員から何らかの申し出というものを期待しておりましたが、前知事や他の幹部職員からも「責任を感じている。応分の責任を果たしたい」という申し出を受けております。そのことは、私たちの気持ちにも沿うことでございます。申し出を受け入れることとしたいと考えております。
 以上が、今回の判決にかかわることでございます。
 また、別に審理が続いております第二陣訴訟につきまして申し上げます。
 これにつきましても、今回の判決の受け入れに伴いまして、同じような形で裁判が進んでおりますので、判決を待てば、同じような判決が出るだろうということが十分予想できますので、判決を待つことなく、その前に、今回示された損害額の認定の基準や考え方に沿った形で、なるべく早い早期の解決を図ってまいります。
 さらに、訴訟を提起されていない、その他の被害者の皆様につきましても、できるだけ早く、できれば年内をめどに救済策を講じたいと考えているところでございます。
 裁判所の判決という重い司法判断が出てしまいました。これを謙虚に受け止めることによりまして、できるだけ早く被害者を救済することが、今の県に求められていると考えております。一日も早く被害者を救済すること、そして、法律的に非常に難しかった、果たして県の当時の判断が違法だったのか、そうでなかったのか、判断が難しかった事案であればこそ、ここに公費を投入するためには裁判所の判断が必要だったということ、この2つを県民の皆様に、ぜひご理解いただきますようお願いを申し上げます。
 私からは、以上でございます。



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