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記者会見
古川前知事の記者会見の会見録や資料を掲載しています。動画もご覧いただけます。
 
※政治活動についての発言部分は、除いています。
※会見録は、わかりやすいように一部校正しています。

発表項目:CERN訪問について報告します

 次が、CERN(セルン)の訪問についての報告であります。
 先般、CERNに行きまして、そのCERNの所長を初め関係者に対して、ILCの脊振立地についてのプレゼーテーションを(福岡県の)小川知事や松本県議会議長とともにしてまいりました。
 私はCERNは2回目になります。2008年6月に訪れまして、このCERNというのはどういうところなのかというところ、何を研究しようとしているのかというところを見てまいりました。ロルフ・ホイヤー次期所長などと懇談をいたしましたけれども、このロルフ・ホイヤー次期所長が現在所長になっておられます。そして、この大きな測定器アトラスというのが当時建設中でございました。このアトラスで測定をして、ヒッグス粒子を発見するんだということをおっしゃっておられまして、実際にそれが4年後に実現をしたというところでございます。
 ホイヤー次期所長は当時から、今、円形でやっているこのLHC、ラージ・ハドロン・コライダーという研究が終わったら、次には直線でやっていかなくちゃいけないということをしきりにおっしゃっていました。その中でも、日本のプレゼンスは非常に大事だということを当時からおっしゃっていた方でございまして、非常に力強く思った次第でございました。
 その後、ホイヤー所長とは昨年もお目にかかっておりましたけれども、改めてホームグラウンドであるCERNで今回お目にかかったものでございます。
 今回の訪問の趣旨としては、1つは、脊振地域が既にいろんなインフラが整備された地域で、研究者にとって暮らしやすいということのアピールをすることが1つ。もう1つは、実際に研究者が住まいになる家族と一緒に暮らすというときに、どういうものが必要なのか、どういう生活環境が必要なのかというところについて知りたいというところの確認に行ったものでございました。
 ご承知かと思いますけれども、CERNというのはビッグサイエンス、素粒子物理学で、宇宙の謎などをやっているわけでありますけれども、そこからスピンアウトした技術がワールド・ワイド・ウエブです。我々が毎日使っているインターネットの基盤となる技術、ワールド・ワイド・ウエブというのは、実はCERNの科学者たちが自分たちの情報を交換するためにつくったものであります。このようにして、基礎科学というのは時として非常に大きな便利なものを生み出しているというものの例であります。
 行き先がCERNて書いてあるんですけれども、実はCERN行きのトラムが出ててという感じで、中央駅からトラムで二、三十分ぐらいの便利なところにあります。今回参ったときには、ホイヤー所長、リン・エバンスディレクター、それとホス教授、この3人が相手をしてくれまして、意見交換を行いました。そして、欧州では当面CERNが持っているラージ・ハドロン・コライダー(LHC)を稼働させて研究を続けていく、ILCについては日本のリーダーシップを期待するというコメントがありました。そしてまた、立地場所については、科学的・学術的な観点から決定するべきであるというお話がありました。この科学的・学術的な観点というのは、その中には研究者や家族にとって暮らしやすいという意味も含んだところの科学的・学術的なでございますけれども、そういったところでございます。
 また、このリン・エバンスさんというのがILC関係の責任者でございますが、この彼との意見交換の中では、多くの研究者、いわゆる技術者の方が生活することになるという、当たり前と言えば当たり前なんですけれども、我々は研究者のことは非常に大きく頭にあったんですけれども、実際には30キロに及ぶトンネルをつくり上げて、そこの中に非常に精密な機械を備えつけるという作業になってまいります。世界中から研究者だけでなく、エンジニア、技術者の人たちが来られることになる、こうした人たちは、より研究者よりも国籍も多様で、しかも使われる言語も多様だというお話がございました。この方たちの住居、ビザ、教育、医療、全体的な生活支援のサポートが必要だというお話でございました。
 こちらからは、脊振地域というのは、その意味において必要な都市基盤が既に整っているということ、インターナショナルスクールも既にあって、また英語の通じる病院などもありますよという紹介をしたところでございます。
 また、日本人研究者と実際に研究者の人たちがどういう暮らしをしておられるのかというお話をお伺いすることができましたが、研究者の多くは、物価の安いフランス側に住んでおられます。これはどういう意味かというと、CERNのリングがありますけれども、ジュネーブという町はフランス国境にございます。で、ジュネーブ市内は非常に物価が高いということで、国境を越えてフランスの村に行くほうが物価が安いので、そこに暮らしているという、そういう意味でございます。ものすごく遠いかといえばそんなことはございませんで、通勤時間はフランス側に住んでいても15分から30分程度ぐらいということです。この物価が高いのがなぜ大変かというと、CERNに来ている研究者の多くは20代でありまして、この20代の人たちで、しかも研究者ですから、基本的には公務員とか大学のベースの給料しか支払われていませんので、給料がそんなに高いわけではございません。この家賃とか、そのほかの生活コストをいかに安く押さえるかというのが大きな問題であるというお話でございました。
 また、日本と違って、日本とはというか、東京なんかとは違って、時間をかけて通勤するという文化はこの地域には余りないということでございまして、大体私も人の出入りを見ておりましたけれども、歩いてこられている方や自転車で来られている方、そういった方も結構多かったと思います。ただ、やっぱり一般的には車が圧倒的だとはおっしゃっておられました。
 そして、私が5年前に見た、建設中だったアトラスという検出器、今は止まっておりまして、インプルーブメントというか、その改善のために止まっております。幸いなことに見ることができました。このCERNでは一般向けの普及活動も力を入れていただいておりまして、ビジターセンターにはその施設も充実しています。私どもが行ったときにも一般の方が見に来ておられました。
 また、CERN内には、これはちょっと窓口という言い方がよくないんですが、銀行や郵便局もあります。銀行や郵便局があるというときに、一般的にはATMがあったり、機能が使えるというイメージがあるかと思いますけど、ここにはUBS銀行とかのCERN内の支店があるんです。ですから、外国への送金とか、外国からの入金とか、そういったものが非常に便利でありますし、物を送ったりするときの郵便局も、郵便局のATMとか機械があるんじゃなくて、実際にオフィスがあります、窓口が存在しています。という意味での窓口のことであります。ということで、非常に便利ということもあって、要するに研究者にとって何が必要なのかということをよく考えてあるなということを感じました。これはある意味当たり前で、60年間かけてつくっていっていますので、その意味では大変よくできているなと感じたところでございます。
 また、機会を得て研究棟にも入らせていただいて、研究者の研究室の様子も見ましたけれども、これは極めてシンプルでありました。この立派な研究施設というそのハード的に立派なものをつくっていくよりも、研究にとって機能的な施設が必要だし、望ましいし、それ以上のものは要らないというお話でございました。
 また、福岡県と合同での意見交換が終わった後に、私単独でユーザーズオフィスというところに行ってまいりました。CERNの中にあって、CERNで研究をする研究者がまず訪れる場所がここです。ここでCERNの研究者としてのユーザー登録をします。IDカードをもらいます。そのIDカードをもらうことによって、CERNのいろんなサービスを受けることができるようになるということで、これをワンストップで行っているのがこのユーザーズオフィスです。所長、ヘッドは女性の物理学者です。物理学者のことがよくわかる、しかも今はこうやってアドミニストラティブというか、行政的な、管理的な仕事をしておられるということでございます。1万1,000人の客員研究員と2,300人の事務職員といいますから、とんでもなく大きな組織になっていまして、その管理は大変そうでございましたけれども、まあ非常にやりがいがあるということでやっておられました。
 また、ビザの取得もこのユーザーズオフィスが対応していました。ここが非常に驚きです。ビザの取得というのは国の機関しかできないと私ども思っておりましたが、このCERNではビザの取得の手続を代行していまして、ビザを実際に発給するときには、関係の国の職員がCERNに来てくれて、CERNのメンバーというか、研究者はいろんな事務所に出ていく必要はなくて、向こうから来てくれるという、デリバリーをしてくれるという仕組みになっていました。こうしたことがなぜ可能なのかというと、CERNに対して国や自治体が特別な地位を与えているからこそ可能であるというお話でございまして、このCERNは欧州の国がお金を出し合ってつくった特別な研究機関でございますので、そういったことが可能になっているのではないかと思いました。現在、日本にはこのようなところはございません。ILCにおいても、こうしたことを含めて対応が可能になるようにしなければいけないということを感じたところでございます。
 また、教育について、彼女がこのユーザーズオフィスのヘッドでございます。もともとはドイツ人で、夫君もドイツ人の物理学者で、ご夫妻でCERNに来られて研究を続けられていたところ、現在、こちらのほうは今、事務系のユーザーズオフィスのヘッドをしておられるということでございます。
 やっぱり教育については、インターナショナルスクールの存在は大きいということがあるという話。一方で、研究者の中にはインターナショナルスクールでなく、地域での学校の受け入れを希望される方も多いという話でございました。
 また、地域の学校においては、英語以外の言語を母国語とする生徒のために、その母国語の政府から外国人教員が派遣されているというお話でした。すなわち、彼女の場合にはドイツ語が母国語なので、その彼女の子供たちが行っている学校にはドイツ政府がドイツ人の教員を派遣していて、一般的にはフランス語による教育がジュネーブは行われているんですけれども、ドイツ語による教育というのを週に何時間か行っていて、ドイツの文化とかドイツ語というものをきちんと身につけることができるようになっているということでございました。
 こういったことをやっていて、要するに選択が可能になっているということですね。インターナショナルスクールがいいという人はそれでもいい、地域の学校がいいという人は地域の学校に通いながらも、きちんと子供の教育も受けられ、また自分たちの文化というものも引き続き守ることができるという体制が整っているようでございました。
 改めてでございますけれども、脊振地域には既にインターナショナルスクールがございますので、これからは地域の学校での外国人の受け入れ体制をどう整備していくのかということで、多様な選択肢の提供が大事だということを改めて感じた次第です。
 それと、高校教師のCERN派遣プログラムの担当者との懇談でございます。
 担当者はミック・ストーさんとおっしゃる方でありますが、佐賀県は、平成21年から毎年1名、高校の物理教師をCERNに夏派遣しています。日本で行っているのは佐賀県だけです。この取り組みにCERN側も大変評価をしていただいておりました。3週間のプログラムなんですけど、施設見学から始まり、ワークショップ、グループワーキングを通して最先端の素粒子物理学を学んでいただいています。こういうイメージで、各国から来ていただいています。
 10人以上であれば、その派遣された国の母国語でプログラムをやってもいいよということをストーさんはおっしゃっておられました。実際に、ハンガリーと韓国は、10人から20人ぐらい教員が派遣されていて、ハンガリー語と韓国語でこのセミナーをやっているというお話でございましたので、先日、九州知事会議のときにも、九州各県の知事さんにもこういったことをやっているのでということで資料提供と呼びかけを行ったところでございますし、10人集まらなくても、基本的にこのセミナーは英語で行われていますけれども、自然科学でございますし、物理の世界なので、基本的に数式がメーンで、実際に参加した物理教師の話を聞くと、理解が大変難しいということではなかったと、むしろ、物理の分野は数字でいいんだけれども、それが終わった後の会話とか、食事をしながらの雑談とかというほうが難しいという話でございましたけれども、いずれにしても、こうやって世界の人たち、世界の高校の物理教師たちが、どういう考えで、どういう手法で高校生に物理を教えているのかということの交換ができた意味でも非常に大きかったというお話を伺っているところでございます。
 今回のまとめでございますが、外国人の研究者だけでなく、この「だけでなく」の中には、技術者もということも含むんですけれども、研究者、技術者、そしてその家族も含めた生活全般にわたるサポート体制を、研究所の中だけでなくて、地域全体でつくっていくことが必要だということを改めて感じました。
 そして、これは何もILCということに限らず、今後、外国人で暮らす方が増えてまいります。また、観光客の方も増えてまいります。そういうさまざまな方が暮らしていくことになるであろうという中にあって、外国人の方にとって、暮らしやすい地域をつくっていくということに大きな意味があるのではないかということを感じました。
 また、研究所と国や自治体の連携の必要性も非常に強く感じました。先ほどのビザの取得の例にもありますように、国がその気になって特別な措置を講じていくということもしていかないと、ほかの研究所ではそれがある意味、当たり前になっていっているということではないかとも感じました。その意味で、日本にはまだ国際的な研究機関がございません。今回、ILCが日本に立地するということになれば、日本で初めて国際的な研究所の設置となります。こうしたことで、これまでできなかったこと、だめと言われてきたことをオーケーにしていくということで、研究者、技術者、そしてその家族が日本に来て住んでよかったと思っていただくということが可能になるのではないかと感じました。
 以上でございます。

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