県立美術館は、昭和58(1983)年の開館以来、佐賀に生まれ明治から昭和にかけて洋画壇のリーダーとして活躍した日本近代洋画の巨匠、
岡田三郎助(1869〜1939)の作品を収集し、その画業と人物を検証してきました。
このたび、その集大成として、彼の全画業を人物画・風景画の代表作によって振り返る特別展「岡田三郎助−エレガンス・オブ・ニッポン−」を、下記のとおり開催します。
岡田は日本と西洋、両方の美を取り入れながら、繊細、優美な色調で数々の女性像を描きます。その比類なき美しさは岡田芸術の代名詞となり、「美人画の岡田」と称えられました。繊細な筆致により描かれ、「繊細」「優美」「典雅」等で形容される岡田芸術は、現代に生きる私たちの心を必ずや魅了することでしょう。
岡田三郎助
また、今回の展覧会では、岡田の美人画の三大傑作《あやめの衣》(ポーラ美術館蔵)、《婦人半身像》(東京国立近代美術館蔵)、《裸婦》(佐賀県立美術館蔵)が、岡田三郎助遺作展(昭和15(1940)年)以来、初めて一堂に揃って展示されます。
是非、この機会に、至高の美の世界を御堪能ください。
記
1 展覧会名称 特別展「岡田三郎助−エレガンス・オブ・ニッポン−」
2 会 期 平成26年9月19日(金曜日)〜11月16日(日曜日)
3 開館時間 9時30分〜18時
4 休館日 月曜日。ただし、月曜日が休日の場合はその翌日。
5 会 場 佐賀県立美術館
6 主 催 佐賀県立美術館、佐賀新聞社、NHK佐賀放送局、STSサガテレビ
7 助 成 財団法人地域創造(平成26年度地域の文化・芸術活動助成事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会(平成26年度芸術文化振興基金助成金)
8 後 援 佐賀県教育委員会、公益財団法人佐賀県芸術文化協会、朝日新聞社、
西日本新聞社、毎日新聞社、読売新聞西部本社、FBS福岡放送、
九州朝日放送、RKB毎日放送、TNCテレビ西日本、TVQ九州放送、
NBCラジオ佐賀、エフエム佐賀
9 観覧料 一般1,000円、割引観覧料800円
※高校生以下及び障害者とその介助者1人は無料。
※大学生、20人以上の団体、博物館・美術館メール会員等は割引観覧料。
10 展示内容
(1) 初期の名品からパリでの修業時代を経て官展を中心に
活躍した岡田三郎助の代表作を展示します。洋画・日本画・
パステル画・デッサン等の作品及び岡田が収集した着物・
時代裂(きれ)・短刀等工芸品など計192点(うち借用
品123点)。
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中越典子さん
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(2) 音声ガイダンスにより岡田作品の魅力を御紹介します
(利用料:1回500円)。
ナビゲーターは、佐賀市出身の女優中越典子さん
です。
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11 関連行事
(1)開会式
ア 日 時 平成26年9月19日(金曜日)9時〜9時30分
イ 場 所 佐賀県立美術館
ウ その他 テープカット後、担当学芸員による展示解説があります。
(2)講演会
ア 日 時 平成26年9月28日(日曜日) 13時30分〜15時
イ 会 場 佐賀県立美術館ホール
ウ 講 師 松本誠一 (本館副館長)
エ 演 題 「うららなる光をうけて−岡田三郎助物語」
オ 参加費 無 料
(3)記念シンポジウム
ア 日 時 平成26年10月5日(日曜日) 13時〜16時
イ 会 場 佐賀県立美術館ホール
ウ テーマ 「和と洋の調和—岡田スタイルの誕生—」
エ パネリスト 植野健造 先生 (福岡大学教授)
児島 薫 先生 (実践女子大学教授)
高山百合 先生 (福岡県立美術館学芸員)
野中耕介 (本館学芸員)
オ コーディネーター 松本誠一 (本館副館長)
カ 参加費 無 料
(4) 記念講演会
ア 日 時 平成26年10月19日(日曜日)
13時30分〜15時
イ 会 場 佐賀県立美術館ホール
ウ 講 師 高階秀爾先生
大原美術館館長
東京大学文学部名誉教授
専門は美術史・美術評論
文化勲章受章者(平成24年)
エ 演 題 「千紫万紅の夢—岡田三郎助の世界」
オ 参加費 無 料
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高階秀爾 先生
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(5) その他
ア 会期中、毎週土曜日13時30分から本館学芸員(野中耕介・岩永亜季)による
ギャラリートークを行います。
イ アクロス福岡で、関連の講座を次のとおり開催します。
(ア) 行事名 アクロス・文化学び塾「岡田三郎助 描かれた女性−至高の
美の世界−」
(イ) 日 時 9月20日(土曜日)14時〜15時30分
(ウ) 会 場 アクロス福岡 セミナー室2
(エ) 講 師 岩永亜季 (本館学芸員)
(オ) 受講料 500円(要事前申し込み/先着70名)
(カ) 問い合わせ先
アクロス福岡文化観光情報ひろば TEL.092-725-9100
ウ 関連の「先生のための博物館・美術館講座」を次のとおり行います(申込み
締切済み)。
(ア) 日 時 9月24日(水曜日)13時〜16時30分
(イ) 会 場 博物館応接室
(ウ) 講 師 野中耕介 (本館学芸員)
(エ) テーマ 「教えて、岡田先生!−岡田三郎助・美の秘密に迫る−」
エ 関連の「博物館・美術館セミナー」を次のとおり行います。
(ア) 日 時 11月1日(土曜日)10時30分〜11時30分
(イ) 会 場 佐賀県立博物館応接室
(ウ) 講 師 浦川和也 (本館学芸員)
(エ) テーマ 「岡田三郎助の美術絵葉書」
(オ) 参加方法 参加費は無料で、当日に直接会場に御集合ください。
【展示構成及び主な出品作品】
第1章 かたちをもとめて
○ 《薔薇の少女》 石橋財団石橋美術館蔵
○ 《西洋婦人像》 佐賀県立美術館蔵
○ 《イタリアの少女》 大原美術館蔵
○ 《聖母戴冠図(フラ・アンジェリコ作品模写)》 東京国立博物館蔵
○ 《道成寺》 株式会社歌舞伎座蔵
○ 《婦人像》 石橋財団ブリヂストン美術館蔵
第2章 調和をもとめて
○ 《水浴の前》 石橋財団石橋美術館蔵
○ 《後向きの裸婦》 個人蔵
○ 《花野》 佐賀県立美術館蔵
○ 《くもり》 野間記念館蔵
○ 《横向きの少女》 ウッドワン美術館蔵
○ 《緑衣裸婦》 個人蔵
○ 《婦人半身像下絵》 佐賀県立美術館蔵
○ 《萩》 兵庫県立美術館蔵
○ 《支那絹の前》 高島屋史料館蔵
○ 《甲州山中湖》 大阪市立近代美術館(仮称)建設準備室蔵
○ 《富士山—三保にて—》 佐賀県立美術館蔵
○ 「紅縮緬地松竹梅に匂袋模様小袖」(《支那絹の前》制作に使用された着物)、
「納戸縮緬地八橋に杜若模様小袖」(《あやめの衣》制作に使用された着物)
松坂屋コレクション 一般財団法人J.フロントリテイリング史料館蔵
第3章 優美をもとめて
○ 《あやめの衣》 ポーラ美術館蔵
○ 《婦人半身像》 東京国立近代美術館蔵
○ 《裸婦》 佐賀県立美術館蔵
○ 《河口湖畔》 個人蔵
○ 《伊豆山風景》 佐賀県立美術館蔵
○ 《編物》 黒川古文化研究所蔵
繊細、優美、あふれる気品、
岡田芸術の代名詞「美人画」の数々
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《婦人像》
1907(明治40)年
石橋財団ブリヂストン美術館蔵
モデルは実業家で茶人であった高橋箒庵(たかはし・そうあん)の夫人である。当時の三越百貨店のポスター原画となり、後には切手にもなった。
【※ポスターのメイン画像に使用】
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《水浴の前》
1916(大正5)年
石橋財団石橋美術館蔵
第10回文部省美術展覧会に出品された。この時、岡田は審査委員をつとめている。
岡田の裸婦像中最大の大きさであり、明治期の岡田を代表する名作で、日本の裸婦像の歴史をたどるうえでも重要な作である。
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《支那絹の前》
1920(大正9)年 高島屋史料館蔵
描かれるのは岡田の妻、八千代。彼女は劇作家小山内薫の妹であり、自身も作家として活躍した。背景の裂(きれ)が装飾的な効果をもたらし、画面に独特の華やかさを与えている。
八千代夫人がモデルをつとめた作品は、本作を含め二点が残るのみで、その点からも貴重な作である。
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《編物》
1939(昭和14)年 黒川古文化研究所蔵
画家中沢弘光は岡田の絵について、「…岡田君の画の味は、美人に例えてみると、正面の笑顔でなく、襟もとからその横顔を覗きこむというような所にある…」と評した。本作はまさにそうした岡田の女性像の魅力を伝える逸品である。
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《横向きの少女》
1914(大正14)年 ウッドワン美術館蔵
柔らかな光の中に物憂げな横顔を見せる少女は、どこか西洋的な雰囲気を漂わせている。
本作のように主要な部分だけを描き、背景を塗り残した習作を「エチュード」と呼ぶ。未完成であることが、かえって岡田の伸びやかな筆の魅力を伝えてくれる。岡田のエチュードの中でも屈指の美しさを誇る逸品である。
【※ポスター・チラシのメイン画像に使用】
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そして、至高の美をたたえた美人画の三大傑作
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《婦人半身像》
1936(昭和11)年 東京国立近代美術館蔵
本作は岩絵具(日本画用の絵具)で描かれている。岡田は油彩画だけでなく、日本画、版画、フレスコ画等、様々な絵画技法について研究を重ねていた。
昭和11年文展招待展に出品。岡田にとって最後の官展出品作となった。
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《あやめの衣》
1927(昭和2)年 ポーラ美術館蔵
岡田三郎助の美人画中で最も有名で、傑作の誉れ高い作品である。岡田が好んだ後ろ向きの女性像のひとつの到達点というべき完成度を誇る。
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《裸婦》
1935(昭和10)年 佐賀県立美術館蔵
本作は昭和10年、帝展第二部会展に賛助出品され、その後李王家美術館に収蔵された。しかしその後は遺作展で展示されたが、所在が確認されなかったものである。
岡田の裸婦像中でも大作(縦99.8×横5.5cm)であり、かつ、その描写は精緻を極める。
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その美しさと気品は、風景画や静物画にも
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《水辺の柳》
1927(昭和2)年
丸善株式会社蔵
本作は日本画の岩絵具で描かれた作品。岡田が敬愛したフランスの画家コローの作品が下敷きとなっている。
なお、同じく水辺の柳を描いた作品が宮内庁三の丸尚蔵館にも収められている。
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《丹霞郷》
1933(昭和8)年
画家仲間とともに訪れた長野市郊外豊野の丘を描いた作品。その際、同地を「丹霞郷」と名付けたという。
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《薔薇》
1931(昭和6)年
佐賀県立美術館蔵
岡田の静物画は数が少ないが、薔薇は彼自身が大変好んだ題材であった。本作はその代表作で、フランスで自ら求めた「鍛金吹込ガラス花瓶」に活けられた薔薇を描いたもの。
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《レボーの古城》
1931(昭和6)年 和泉市久保惣記念美術館蔵
岡田は1930年に自身二度目のヨーロッパ行を果たすが、本作は帰国直後に描かれた作品。抜けるような青空の下に佇む南仏レボーの城跡を岩絵具で描いている。
本作は岡田没後、公開されることがなかった。展覧会での本格的な紹介は本展が初めてである。
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岡田の美を支えた、もうひとつの主役—描かれた着物
納戸縮緬地 八橋に杜若模様小袖
江戸時代後期
松坂屋コレクション 一般財団法人 J.フロントリテイリング史料館 蔵
《あやめの衣》制作に使用された着物。
岡田は画家としてのみならず、工芸品のコレクターとしても有名であった。古今東西の
着物や裂(きれ)を中心に、膨大な数の蒐集品を持ち、アトリエにはそうした逸品が無造
作に置かれていたという。岡田は生前、蒐集した工芸品の一部を松坂屋に納めており、そ
れらは現在も大切に保存されている。
本作は、《あやめの衣》のモデルが纏い描かれた着物である。
(参考)
「岡田三郎助で知る100年前の最先端アート」開催概要
イベント名:「岡田三郎助で知る100年前の最先端アート」
会 期:平成26年9月10日(水曜日)から9月16日(火曜日)
午前10時から午後7時
会 場:日本橋三越本店 本館7階「Hajimarino cafe」
内 容:
◇岡田三郎助のアトリエを現代に再現
岡田三郎助のモダンで革新的な生活が伝わるような空間を予定。その空間には「むら
さきしらべ」をはじめとする岡田作品のポスターや写真を展示し、現代から見ても革新
的で先鋭的な岡田三郎助の功績や、人物像を感じられる内容です。
◇ワークショップ「オリジナル有田焼をつくってみよう!」
有田焼に転写紙(特殊なシール)を自由に貼り自分だけのオリジナルテーブルウェア
を作るワークショップ。今回は岡田三郎助の作品をモチーフとしてオリジナル転写紙を
用います。
開催時間:9月10日(水曜日)〜16(火曜日)連日開催致します。
時間は日によって異なります。
詳しくは「Hajimarino cafe受付:03-3274-8843」にお問い合わせ下さい
所要時間: 約1時間
費 用: 税込4,860円
観 覧 料: 無料 ※ワークショップのみ参加費用がかかります。
主 催: 佐賀県、日本橋三越本店
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