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平成30年 2月22日
平成30年2月定例県議会 知事提案事項説明要旨

 本日、平成30年2月定例県議会の開会に際し、県政を運営するに当たりまして、私の所信を述べさせていただくとともに、当面の諸課題への対処方針、提案いたしました平成30年度当初予算案、平成29年度補正予算案及びその他の議案について、その概要をご説明申し上げます。
 まず、自衛隊機による事故への対応について申し上げます。
 去る2月5日に、陸上自衛隊目達原駐屯地所属のAH64D戦闘ヘリコプター1機が、神埼市千代田町の住宅に墜落し、女児1名が負傷、搭乗していた隊員2名が死亡するという事故が発生しました。このたび亡くなられた隊員のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被害に遭われた住民の皆様、そして、隊員の御家族に、お見舞い申し上げます。
 事故発生後、直ちに情報連絡室を設置し、消防、警察、自衛隊及び神埼市から情報を収集するとともに、人命の救助、延焼の拡大防止を指示しました。その後、概ね鎮圧されたとの連絡を受けたことをもって、午後8時頃に、小野寺防衛大臣に直接電話で、現場の痛ましい状況を伝えるとともに、事故の原因究明及び再発防止の徹底を強く要請いたしました。事故の翌日には、現地に入り、事故現場の状況を確認するとともに、被害者の方に、お見舞いを申し上げました。ヘリコプターが墜落した現場を目の当たりにし、このような事故は二度と起きてはならないという意を、一層強くするとともに、事故に伴い、非常に大きなショックを受けられたご家族に、一日も早く平穏な日常を取り戻していただきたいとの想いから、県の幹部職員を派遣し、支援を行うとともに、被害に遭われた周辺住民の皆様に対しましても、心のケアに取り組んでいるところです。
 2月11日には、小野寺防衛大臣が来佐され、事故発生のお詫びとともに、事故への対応状況を説明されました。その際、「決して民間人を巻き込んではいけないことを肝に銘じていただきたい」と伝えるとともに、

  • 徹底した調査のもと、事故の原因を究明すること
  • 県民の安全確保のため、再発防止に万全を期すこと
  • 被害を受けた方々や周辺住民の皆様に対し、迅速かつ丁寧な対応を行うこと

を改めて要請いたしました。
 県といたしましては、当該御家族に寄り添った支援を行うとともに、被害に遭われた周辺住民の皆様に対し、神埼市とともに、支援してまいります。
 県民からの負託を受け、知事に就任して丸3年が経過しました。これまでの3年間を振り返りますと、災害や危機管理事象、県民の賛否が分かれる国政関連の課題に対応するとともに、県民の幸福や本県の発展を目指し、懸命に走り抜いてきたというのが実感であります。
 この間、インバウンド、空港の利用者数及び伊万里港のコンテナ貨物取扱量が県政史上最高を記録し、高校卒業者の県内就職の大幅改善、高い付加価値のある企業を含めた68件の企業誘致、志を持つ6件のCSO誘致を実現するなど、佐賀県政の成果が客観的に表れてきています。さらに、「子育てし大県“さが”プロジェクト」をはじめ、福祉・医療など現場の意見を反映した「人の想いに寄り添う施策」、国の予算を最大限に活用した社会資本の整備を推進するなど、これまで蒔いた施策の種は、着実に芽吹いてきていると感じております。
 これらに加え、自発の地域づくりやオール佐賀による取組が浸透するとともに、「佐賀が好きだ」という方々が着実に増加しているという調査結果が出るなど、佐賀が未来に向けて飛躍できる基盤ができつつあると感じています。
 佐賀は国内外から今以上に関心や評価が高くなるポテンシャルを持っていると、私は確信しております。そして、そのポテンシャル、いわば「佐賀力」を最大限に発揮させるためには、県民の皆様が「佐賀が好き」という段階から、更に「佐賀を誇りに思う」という段階にステップアップすることが重要だと考えています。
 そこで、総合計画2015の仕上げとして、県民お一人お一人の心の中に「佐賀への誇り」を醸成させることに注力し、佐賀が未来へ飛躍する基盤を確立するため、取り組んでまいります。
 次に、当面の諸課題に対する対処方針について申し上げます。
 まず、有明海の再生について申し上げます。
 有明海の環境が変化した原因を究明するため、諫早湾干拓地潮受堤防排水門の開門調査を実施することを、有明海漁協、県議会及び沿岸市町とともに国に求めてまいりましたが、国が開門しない方針を明確にしたことなどから、開門調査の実現は厳しい状況にあります。
 このような中、国は有明海漁協に対し、諫早湾干拓関係訴訟の現状説明とともに、改めて開門を前提としない基金案の受入れ要請をしました。これを受け、有明海漁協では、基金とは別枠での排水ポンプの増設、こまめな排水の確実な実施、有明海再生事業の継続を条件とし、国の要請を受け入れるかどうかについて検討された結果、漁協内の意見はまとまらず、現時点では判断できない旨、国へ報告されました。県といたしましては、国の対応や有明海漁協における議論を注視しながら、漁業者の想いに寄り添って対応してまいります。
 また、諫早湾干拓関係訴訟については、4日後の2月26日に福岡高等裁判所において、請求異議訴訟控訴審が結審する見通しとなっています。結審後に、和解手続に入るかについては、現時点では不透明であることから、今後も訴訟の動向を注視してまいります。
 一方、県では有明海を再生するための取組を強化してまいりました。平成30年度当初予算案におきましては、これまで国の事業を積極的に活用し、資源回復に取り組んできたアゲマキ、ウミタケ及びアサリについては、回復の兆しが見えてきたことから、この機を逃さず、安定的かつ持続的な漁獲につながるよう取組を強化するとともに、6年連続の休漁となるタイラギ漁については、人工的に稚貝を生産し、放流する事業に着手することといたしました。
 これらに加え、補正予算案におきましては、国の補正予算を積極的に獲得し、収益性、生産性及び品質の向上並びに漁家経営の安定を図るため、有明海漁協が行うノリ共同加工施設や老朽化が進み培養作業に支障が生じていたノリ種苗生産施設の整備に対し、支援することといたしました。有明海の漁業者にとって水産資源の回復は待ったなしの状況にあることから、引き続き、国には、開門調査を含む有明海における環境変化の原因究明や水産資源の回復など、有明海の再生にしっかりと取り組むよう、機会あるごとに求めてまいります。
 県といたしましては、国、沿岸市町、漁協など関係者と一体となり、宝の海である有明海の再生に向け、全力で取り組んでまいります。
 次に、佐賀空港の自衛隊使用要請について申し上げます。
 県は、防衛省に対し、オスプレイの安全性に関する確認・検証結果を説明するよう求めるとともに、漁業者の国に対する不信感を払拭するため、環境保全や補償の枠組みなどについて、詰めた協議を行ってきたところです。
 このような中、冒頭に申し上げましたとおり、陸上自衛隊目達原駐屯地に所属するヘリコプターの墜落事故が発生いたしました。昭和29年に目達原駐屯地が開設されて以来、地域と共存してきた中で、初めて起きた事故であるだけに、県民の中には驚きや不安も生じていることから、事故原因の究明と再発防止に徹底して取り組むことが、喫緊の課題であると認識しています。
 小野寺防衛大臣も、オスプレイの配備計画への影響に関する質問に対し、「自衛隊の飛行の安全確保は最優先の課題であり、政府として、まずは徹底した事故原因の究明と再発防止に全力を挙げる」と発言されたことから、私と同じ認識に立って、必要な対応が行われると考えており、まずは、その推移を見守っていきたいと思います。
 また、県から防衛省に求めているオスプレイの安全性に関する確認・検証結果の説明時期については、防衛省が判断されるものと考えています。
 次に、九州新幹線西九州ルート整備について申し上げます。
 昨年9月に開催された九州新幹線西九州ルート整備の在り方について議論される与党検討委員会においては、3月末を目途に報告される国土交通省からの調査結果を踏まえ、関係者へのヒアリングを実施し、できる限り速やかに一定の結論を得ることとされています。
 引き続き、国などからの情報収集に努め、検討委員会での議論を注視するとともに、本県に意見を求められる場合には、改めて県の考えを主張してまいります。
 次に、原子力発電について申し上げます。
 玄海3、4号機につきましては、現在、再稼働に向けた国の使用前検査が実施されており、一昨日、3号機の燃料装荷が完了したとの報告を受けました。この間、昨年12月20日に、テロに備えた特定重大事故等対処施設を設置するにあたっての「事前了解願い」が、九州電力から提出されました。また、1月11日に、九州電力の瓜生社長に対し、常に緊張感を持って対応していくことが重要であり、一つ一つの取組を真摯に丁寧に積み重ね、安全性の向上に不断に取り組んでいくよう強く求めました。
 2月11日に、原子力規制委員会の更田委員長が、玄海原子力発電所周辺30キロ圏の自治体の長などと意見交換をするため来佐されました。委員長のこうした現場主義や情報公開というスタンスを評価した上で、私からは、

  • 緊張感のある取組を風化させないこと
  • 県民や関係者の思いをしっかりと受け止めること
  • 安全性の向上に不断に取り組むこと

などを強く求めたところです。
 県といたしましては、原子力発電に対する県民の不安などをしっかりと受け止め、何よりも県民の安全を大切に、緊張感を保ちながら、これからも原子力発電所と真摯に向き合ってまいります。
 また、原子力発電に依存しない再生可能エネルギーを中心とした社会を目指すため、「佐賀県再生可能エネルギー等先進県実現化構想」を策定するとともに、再生可能エネルギーに由来する余剰電力を水素として貯蔵し、必要に応じて発電するシステムの実現可能性を検証することといたしました。今後も、再生可能エネルギーの普及拡大に寄与する先進的な取組を、積極的に推進してまいります。
 次に、城原川ダム事業について申し上げます。
 城原川ダム事業につきましては、予備調査の開始から40年以上もの非常に長い年月が経過しており、水没地域をはじめとする流域住民の方々のため、一刻も早く解決しなければならないとの決意のもと、知事就任の直後から、県議会の皆様とともに、機会あるごとに国に早期の治水対策などを働きかけてまいりました。今般、国の平成30年度予算において、建設段階に移行し、所要額が計上されることとなりました。
 県といたしましては、住民の皆様と膝を突き合わせ、現場の声に耳を傾けながら、その想いにしっかりと応え、治水対策の促進や必要な予算の確保、事業実施にあたっての自然環境や景観への配慮について、引き続き国に働きかけてまいります。
 次に、九州佐賀国際空港について申し上げます。
 九州佐賀国際空港の利用者数につきましては、着実に増加し、今年度は、1月末現在で約64万8千人となり、建設時の需要予測73万7千人を突破することが確実となりました。このような中、2月7日に県議会や県内経済団体などオール佐賀で台湾を訪問した際に、タイガーエア台湾の張董事長に対し、台北-佐賀線の定期便化を要請し、早期の実現に取り組んでいくことといたしました。
 また、空港利用者、路線や便数の増加に対応するため、駐機場に加え、ターミナルビルを拡張し、搭乗待合室、保安検査場、チェックインカウンターなどを増設することといたしました。さらに、滑走路の延長については、環境アセスメントなどの進捗を図り、2,500メートル化の実現を目指してまいります。
 九州佐賀国際空港は、本年7月に、開港20周年という大きな節目を迎える中、存在感が着実に高まっています。私といたしましては、次の20年に向け、九州佐賀国際空港が、九州におけるゲートウェイ空港となり、佐賀を様々な国の方々が訪れる国際交流拠点とすること、そして、周辺地域の皆様とともに、筑紫平野一帯の地域を大きく発展させていくことを目指してまいります。
 次に、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定及び日EU経済連携協定(EPA)について申し上げます。
 去る1月24日に「第9回佐賀県TPP・日欧EPA等経済連携協定対策本部会議」を開催し、両協定を見据えた国の補正予算への対応、国が試算した両協定による経済効果分析及び農林水産物の生産額への影響を確認いたしました。
 県といたしましては、早ければ来年には両協定が発効されるという状況を踏まえ、特に影響が懸念される農林水産業に関する情報を収集するとともに、県内の様々な声や関係団体の意見を聴きながら、地域産業が持続的に発展していけるよう、必要な対応を行ってまいります。
 次に、国民体育大会・全国障害者スポーツ大会について申し上げます。
 昨年12月22日に開催した大会の準備委員会において、国民体育大会の全38競技のうち32競技、全国障害者スポーツ大会の全14競技のうち6競技について、開催する市町が内定いたしました。この結果、県内の全市町で競技が開催されることとなり、平成35年の本県開催に向け、オール佐賀で佐賀らしい大会に創り上げてまいります。
 また、大会の開催を契機とした総合運動場等エリアの整備につきましては、1月29日に庁内推進本部を設置し、アリーナなどの主要な施設の基本設計をはじめ、本格的な整備に向け、全庁を挙げて取り組むことといたしました。そして、ここから新たなまちづくりやライフスタイルが始まり、佐賀を光り輝かせていくという決意を込めて、「日の出」という地名にちなみ、このエリアを「SAGAサンライズパーク」(仮称)とし、佐賀のスポーツや文化に新しい風を吹き込む起源、アスリートやアーティストたちの熱い志に触れる聖地、さらに、新たな人の流れを創出し、佐賀の未来を切り拓く「さが躍動」の象徴としてまいります。
 今年度の本県スポーツに目を向けますと、1月26日に伊万里高等学校が選抜高等学校野球大会へ初めて出場することが決定いたしました。選手一人一人が文武に励みながら、地道な努力を積み重ねてきたこと、そして、これまで地元の方々が様々な形で支えてこられたことが結実し、今回の決定に至ったことを大変嬉しく思います。県民の皆様と、選手の御活躍をお祈りいたしますとともに、これからも様々な分野で努力している方々を応援してまいります。
 このほか、将来のプロサッカー選手を育成するサガン鳥栖U-15が2冠を達成し、さらに、ひらまつ病院陸上部が、日常は医療や福祉などの仕事に従事しながら、競技に取り組むというスタイルで、県内実業団、また、国内医療法人として初となるニューイヤー駅伝への出場を果たすなど、県内において、トップアスリートをはじめとするスポーツ選手を地域が育てる環境が芽吹いています。
 このようなスポーツを取り巻く状況や国民体育大会・全国障害者スポーツ大会の開催を、本県スポーツ文化が大きく発展する絶好の機会と捉え、大会後も見据え、持続的に発展するための新たな佐賀モデルを構築することといたしました。
 スポーツ文化には、「する」、「育てる」、「観る」、「支える」の4つの面があると考えます。この4つの面を、年齢、性別及び障害の有無にかかわらず、「楽しむ」という想いのもとに拡大し、相乗効果を発揮して、県民一人一人が何かしらの形で携わりつくりあげる、オール佐賀の志でスポーツ文化の新しい時代を切り拓きたいと考えています。
 具体的には、スポーツを「する」人の成長段階や競技レベルに応じた支援を行い、選手が県外に流出することなく、佐賀を拠点としながら、国内外で活躍するトップアスリートを養成していきます。さらに、活躍した選手が競技生活を退いた後は、佐賀で生活しながら、指導者として次世代の選手を「育てる」ことができるよう、選手の一生を見据えた支援に取り組みます。そして、この指導者のもとで育てられた選手の成長や活躍する姿を、多くの県民が「観る」ことで、子どもたちがスポーツを「する」風土を更につくるとともに、ボランティアをはじめ、経済団体、医療団体など幅広い分野の方々が、それぞれの立場でスポーツを「支える」社会をつくってまいります。
 こうした好循環により、「する」、「育てる」、「観る」、「支える」の裾野が広がり、佐賀を拠点とするトップアスリートの養成という頂点がより高くなることをピラミッドに見立て、「SAGAスポーツピラミッド構想」と銘打ち、この構想を実現していくことといたしました。
 この構想の一環として、まずはスポーツを「する」人を支援するため、平成30年度当初予算案におきましては、トップアスリートを目指す有望な選手に対し、競技団体や指導者などからなるチームを編成し、伴走型の支援を実施する「SAGAエリートアカデミー」を創設することといたしました。
 私といたしましては、平成35年の大会を成功させることはもとより、大会のレガシーとしてこの構想を実現することにより、新しいスポーツの形を創り上げ、佐賀から世界に発信してまいります。
 続きまして、提案いたしました平成30年度当初予算案及び平成29年度補正予算案並びにその他の議案について、その概要をご説明申し上げます。
 まず、平成30年度当初予算案について申し上げます。
 国の平成30年度予算につきましては、経済再生と財政健全化を両立する予算として、人生100年時代を見据え、社会保障制度を全世代型社会保障へ転換し、人への投資を拡充することや、持続的な賃金上昇とデフレからの脱却につなげるため、生産性向上のための施策を推進することなどをポイントとして編成されています。
 また、平成30年度の地方財政につきましては、地方が子ども・子育て支援や地方創生等の重要課題に取り組みつつ、安定的に財政運営を行うことができるよう、地方交付税等の一般財源総額について、平成29年度地方財政計画の水準を上回る額で確保されました。
 本県におきましても、個人所得の増加や企業収益の堅調な伸びが見込まれることなどから、平成30年度当初予算案における県税収入は、約886億円を見込んでおり、リーマン・ショック後の予算額として最高額に達しました。
 一方、引き続き平成30年度末の県債残高が予算規模を大きく上回る6,931億円程度と見込まれるとともに、高齢化の進展に伴い社会保障関係経費が増加するなど、今後、収支不足が拡大していく恐れもあることから、引き続き、財政規律にも配意した財政運営に努めていくこととしています。
 その上で、平成30年度当初予算編成につきましては、

  • 様々な現場に足を運び、その声に耳を傾けるなど、現場に真摯に向き合いながら、山口県政の基本理念「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」を力強く推進するため、この3年間掲げてきた総合計画2015を仕上げる
  • また、明治維新150年を迎える年に、幕末維新期に近代日本の基礎を築いた偉人を多く輩出するとともに、最先端の技術力を誇っていた佐賀をしっかりと顕彰することで、県民が、今の佐賀が持つポテンシャルや魅力に気づき、そこから生まれる佐賀人としての自信や誇りを未来に向けたエネルギーとして、佐賀の発展につなげていく
  • そして、変革期にある世界の中で、佐賀の進むべき道を次代に提唱する

 こうした考えのもと、「佐賀の誇りを未来につなげる予算2018」を編成いたしました。
 この結果、平成30年度当初予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ

一般会計  4,368億47百万円
特別会計  約1,951億 1百万円

となっており、一般会計におきましては、前年度当初予算と比較すると、増要因として、医療費の負担などの社会保障関係経費の自然増や「肥前さが幕末維新博覧会」、「子育てし大県“さが”プロジェクト」などの施策の強化などがあるものの、減要因として、プライマリーバランスの黒字基調の維持による公債費の減、低金利を背景とした制度金融に対する需要の低下に伴う中小企業向けの貸付金の減などがあることから、増減額が相殺され、全体額としては約0.8パーセント増となっています。
 次に、当初予算案の主な内容について、重点的に取り組む分野ごとに、ご説明申し上げます。
 まず、予算全体のコンセプトである『さがの誇りと志の醸成』を、具体的に実現する予算について申し上げます。
 明治維新から150年という記念すべき年に、「その時、佐賀は世界を見ていた」、「今、佐賀は未来を見ている」をコンセプトに、幕末維新期を中心とした佐賀の「技」及び「人」を顕彰することにより、県民が誇りと自信を持つこと、そして、これらを土台に築いた「志」を今に活かし、未来につなげていくため、3月17日から「肥前さが幕末維新博覧会」を開催いたします。
 メインパビリオンである「幕末維新記念館」をはじめ、3世紀もの間、脈々と伝えられ、現代に生きる「葉隠」をテーマとした「葉隠みらい館」、近代日本の形成に貢献した多くの偉人を輩出した藩校「弘道館」をテーマとした「リアル弘道館」など、当時を体感・体験できるパビリオンを設置します。
 これらに加え、博物館・美術館及び佐賀城本丸歴史館において、幕末維新期の佐賀の「技」、「人」及び「志」をテーマとした企画展や150年を契機とした医療・薬事、ものづくり、農業及び土木の各分野に関する企画展を開催します。このほか、未来志向の事業として、オランダと佐賀のクリエイターによるコラボレーションを展開する「オランダハウス」を設置するとともに、観光客にも楽しんでいただけるよう、究極の器で一流のシェフの料理を堪能することができる「ユージアムサガ」を展開するなど、歴史はもとより、文化、アート、食など佐賀の持つ魅力を満喫できる博覧会としてまいります。
 また、この博覧会は、佐賀藩はもとより、当時の唐津藩及び対馬藩の偉業や偉人を顕彰するサテライト館を唐津市及び鳥栖市に設置します。維新博を契機とし、お互いを深く知ることで、150年前には成しえなかった3藩の志を融合し、一体となった発展につなげてまいります。
 さらに、博覧会を開催する10か月間においては、全市町をはじめ、民間企業、学校、さらには地域やボランティアの方々が参加し、県民の皆様が主体となり、オール佐賀で博覧会、ひいては佐賀の未来を創り上げてまいります。
 維新博の後には、全国高等学校総合文化祭の本県開催、ラグビーワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピック、九州新幹線西九州ルートの暫定開業、国民体育大会・全国障害者スポーツ大会の本県開催と、佐賀を国内外にアピールできる大きなイベントが目白押しとなっています。この来る好機を最大限に活かし、本県の発展につなげてまいります。
 また、本県には、古より生活や信仰などから生まれ、そして今も、祭や寺社の行事などを通じて地域の絆を深め、郷土への誇りを育んでいる数多くの伝承芸能があります。これらの佐賀の宝を継承する志を大切にするため、地域の伝承芸能が一堂に会し、県民がその素晴らしさに触れる「佐賀県伝承芸能祭」を新たに開催することといたしました。
 次に、『県民の命を守る』予算について申し上げます。
 本県においては、がんは、昭和53年から死亡原因の1位となるとともに、がんによる死亡者数は年々増加している状況にあることから、県民をがんから守るため、中学校3年生全員を対象としたピロリ菌検査や女性のがん検診受診促進事業など、がん対策の推進に取り組んでいるところです。
 特に肝がんについては、死亡率が18年連続全国ワーストワンという由々しき事態となっています。この状況を何としても脱却しなければならないという強い決意のもと、肝がん対策を更に強化することといたします。
 肝がん防止につながる肝炎ウイルス検査の受検率は、働く世代では特に伸び悩んでいることから、県内企業の大半が加入する協会けんぽが実施する肝炎ウイルス検査費用の個人負担分を、県が全額負担することといたしました。これにより、本県では、全ての県民が無料で肝炎ウイルス検査を受検できることとなります。
 また、交通安全・事故対策においては、平成24年から人口10万人当たりの人身交通事故発生件数が5年連続で全国ワーストワンという危機的な状況が続いていましたが、県、市町、警察などの関係者が総力を挙げて取り組んだ結果、平成29年においては、ワーストワンから脱却することができました。
 しかしながら、依然として発生件数は全国平均の2倍を上回り、痛ましい死亡事故も発生していることから、発生件数をゼロに近づけていく努力を、続けていかなければなりません。
 そこで、例えば、中央分離帯がない道路における2車線を跨ぐ右折など、多くの県民が、日常的に何気なく行っている運転が、尊い命を奪う危険性をはらんでいることに気付いてもらうことなどにより、交通ルールの徹底遵守、さらには、一人一人が命と真摯に向き合い、お互いに命を守るという意識で行動する県民運動につなげてまいります。
 この一環として、2月13日に「ここが変だよ。佐賀の交通マナー」と題して、県外生活の経験がある方々との懇談会を開催し、佐賀の運転マナーへの大変厳しい指摘とともに、地域交通や取締りなど様々な観点から意見をいただきました。こうした意見などを活用しながら、県民との意見交換などを通じ、県民の運転マナーに対する意識改革に取り組みます。
 さらに、がん対策及び交通安全・事故対策を強力に推進するため、組織体制の強化を図ることとしています。
 次に、『人の想いに寄り添う』予算について申し上げます。
 私は、常に現場を第一に考え、これまで多くの現場に出向いてまいりました。その中で、様々な事情により困難を抱えられている方々や、そうした方々を懸命に支援されている医療・福祉をはじめとした関係者の方々の声に耳を傾け、膝を突き合わせ、率直な意見交換を行ってまいりました。現場からいただいた様々な御意見を踏まえ、困難を抱えられている方々が、できる限り不安や制約なく日常生活を営むことができるよう、支援を充実し、環境を整備するとともに、お一人お一人が他人を想い、寄り添い、助け合う佐賀らしさを更に伸ばしていくための施策に取り組むこととしています。
 様々な困難を抱える方々のそれぞれの特性に応じたきめ細やかな支援を行うためには、バリアフリーなどのハードによる対応に加え、人による対応が欠かせませんが、中には、難病をはじめ、内部障害、義足、妊娠初期など、外見からは、これらの状況を認識することができない場合があります。そこで、このような困難を抱える方々を周りが一目で認識し、配慮や必要な支援を行えるよう、新たにヘルプマークを導入することといたしました。あわせて、公共交通機関において、ヘルプマーク対象者の優先席を設置することを提唱するなど、ヘルプマークがより効果を発揮できるよう取り組んでまいります。
 発達障害者への支援につきましては、特別支援教育をはじめ、療育指導教室の開催やペアレントメンターによる家族支援など、発達障害児や家族への取組を充実しています。一方、まだ発達障害が社会的に認知されていなかった頃に、こうした支援を受けることなく成人になった方々からは、職場環境に馴染めない、定職に就けないなど、就労に関する相談が増加しています。また、医療や福祉などの現場の第一線で尽力されている方々から直接、御意見等を伺う「さが現場の声と想いをつなぐ懇談会」においても、既存の福祉サービスでは、これらの方々に対する支援が難しいことから、成人に特化した支援を行う拠点が必要であるという意見もいただきました。こうしたことから、成人の発達障害者への就労支援を強化するため、佐賀市内に「発達障害者就労支援センター」を新たに設置することといたしました。
 また、現在、佐賀中央児童相談所において、様々な困難を抱える子どもに関する総合相談を行っています。近年の経済格差や家族の在り様など社会情勢により、相談内容が複雑化・困難化する傾向にあり、特に、児童虐待については、県内において直近10年で倍増するなど厳しい状況となっています。こうした親子に寄り添いながら、より迅速に、よりきめ細やかに対応するため、本年10月に県内2か所目となる北部児童相談所を、唐津市内に設置し、児童福祉司及び児童心理司を増員することといたしました。
 さらに、虐待を背景とする心理的困難などを抱える子どもたちが、専門的な心理治療や生活指導を受けることにより、学校や地域社会に適応し、希望ある将来に向け前進できるよう、児童心理治療施設を開設するとともに、子どもたちが通学する唐津特別支援学校の分校を併設することといたしました。
 これらに加え、発達障害があっても、中等教育を諦めることなく、懸命に頑張っている生徒に対し、一人一人の状況に応じたきめ細やかな支援を強化するため、新たに特別支援教育支援員を配置する私立高等専修学校を支援することといたしました。
 子どもの貧困対策につきましては、CSOや地域ボランティアの方々が、子どもたちに食事の提供や学習支援を行いながら、温かい言葉をかけることにより、様々な課題を抱える親子への支援の入り口となっている「子どもの居場所」を拡充するため、居場所づくりの開設経費などを、新たに支援することといたしました。
 犯罪被害者や家族への支援につきましては、犯罪被害に遭われた方々やその家族が、再び平穏な生活を営むことができる地域づくりを目指しています。このため、昨年3月に、九州で初となる犯罪被害者の支援に関する条例を制定し、現在、条例を具体的に推進するための支援計画を策定しているところです。また、県内全市町においても条例が制定されるなど、県全体で支援する基盤ができつつあります。このような中、被害者や家族への支援を拡充するため、支援コーディネーターの配置、市町職員やボランティアの養成講座の開催、法律相談費用に対する助成などに取り組むことといたしました。今後も、警察、市町、民間支援団体などの関係機関と連携し、被害者や家族へ寄り添った支援を充実してまいります。
 次に、『子育てし大県を推進する』予算について申し上げます。
 子どもが本に親しむ環境づくりにつきましては、これからの佐賀を担う子どもたちが、言語能力、磨かれた感性、人生をより深く生きる力などを身に着けていく上で不可欠である読書習慣を、幼少期から定着させることが必要と考え、司書の皆様とともに「子どもたちがいつでもどこでも本とつながる佐賀県」を目指しています。これまで、保育所や放課後児童クラブなどのうち、図書コーナーを整備・充実するところを「こころざしスポット」と位置づけ、児童書を寄贈してまいりました。これに加え、県立図書館内にオープンスペース「こころざしの森」を開設し、親子で読書を楽しむことができるよう、児童書を置くとともに、本の読み聞かせ、利用案内などに携わる図書館コンシェルジュを配置することといたしました。
 男性の積極的な家事・育児への参画につきましては、第2子以降の出生割合に影響する男性の家事関連時間が、全国と比較し、本県は非常に少ない状況にあることから、妊娠中の女性の大変さを伝え、家事や育児、仕事に対する意識改革を男性に働きかけるため、「知事が妊婦に」の動画配信、妊婦ジャケット体験などに取り組んでいます。今回、妊娠期である子どものマイナス1歳期に、父親となる男性を対象とした産婦人科やCSOと連携したセミナーを新たに開催するとともに、男女共同参画の視点を盛り込んだ佐賀県版父子手帳を配布することといたしました。
 また、明治維新150年にあわせ、子どもたちの郷土愛や志を育むため、佐賀の子どもたちが北海道を訪問し、北海道の子どもたちと一緒に「島義勇」の偉業を学び、また、北海道からも佐賀探検団を受け入れる、志の相互交流に取り組むことといたしました。
 佐賀の特色を活かした子育てにつきましては、吉野ヶ里歴史公園が持つ、レクリエーション空間としての魅力を、県内はもとより福岡都市圏の子育て世代へ伝えることにより、新たな集客や利用促進を図るため、引き続き「子育てし大“券”」を配布するとともに、公園の素晴らしさが、子どもたちの心に刻まれるよう、新たに体験型のイベントを開催することといたしました。
 佐賀は自然豊かで、地域のコミュニティで支え合うなど、子育てしやすい環境にあります。これに加え、「子育てし大県“さが”プロジェクト」として、子育てタクシーをはじめ、様々な分野での施策に取り組み、佐賀の子育て環境が更に充実してきていることから、20代、30代の移住者が着実に増えてきており、この人の流れを更に大きな流れとしてまいります。
 次に、『さがの未来につなげる』予算について申し上げます。
 産業を支える人材の確保につきましては、これまでの県外に人材を供給することから、県内に優秀な人材を確保することにシフトし、佐賀から世界に飛躍することを目指しています。これまで、佐賀県ものづくり人財創造基金を活用した事業や県内高校と企業間の橋渡しに資する事業などに取り組んできたことにより、高校生の県内就職率は改善してきています。今回、採用する側の企業に着目し、専門家によるセミナーやコンサルティングなどを通じ、県内企業の採用力向上を支援することといたしました。
 農業の担い手の確保・育成につきましては、県内外から就農希望者を募集し育成するシステム「トレーニングファーム」のモデル事業を開始し、武雄市では「きゅうり」、佐賀市富士町では「ほうれんそう」の施設において、研修を実施しています。このシステムは就農者拡大の効果が高いことから、他の地区においても実施したいという市町や農協などからの声を踏まえ、今回、対象品目を拡大し、鹿島市に「トマト」、白石町に「いちご」のトレーニングファームを新たに2か所整備することに対し、支援することといたしました。これに加え、農業の担い手確保という課題を、女性農業者の活躍や移住という観点も交えながら、これからの農業を支える方々と様々な意見を交換し、佐賀農業の発展につなげてまいります。
 「森川海人っ(もりかわかいと)プロジェクト」につきましては、国内外に誇る有明海や玄界灘の恩恵を育む森や川を大切にし、佐賀の宝である壮大な自然のつながりを守り、佐賀の豊かな自然環境を未来につなげるために、全力で取り組んでいます。まずは、森、川及び海が相互に連関することが、大切な地域資源を守ることにつながるという考えを、県民全体に浸透させることが重要であります。このため、森、川及び海の互恵的な関係や、日常における適切な管理の重要性などを訴えるとともに、関連する様々なイベントを通じ、関係者間の絆をより深めていくことといたしました。
 中山間地・離島・県境振興対策につきましては、若手職員を継続的に現場に派遣し、それぞれの地域で起きていることを直接把握し、県の施策にフィードバックしています。この結果を踏まえ、まず、農業地域の担い手不足や耕作放棄地の増加が、特に深刻な状況にある中山間地域において、農業・農村の維持や農業所得の向上を実現するため、地域が主体となり集落や農業の将来を考え、目標を実現していく取組を、県や市町、農協などが一体となって支援することといたしました。また、本土から比較的近く、豊かな海産物や自然などの地域資源にあふれているという、七つの島が持つ本県ならではの魅力を発信することにより、新たなファンを開拓し、島の活性化につなげるため、気軽に島を訪れるための取組や地域資源を活かした取組を支援するとともに、それぞれの島が持つ魅力や体験メニューなどを発信することといたしました。今後も、中山間地、離島及び県境地域をはじめ、県内各地における「自発の地域づくり」に全力で取り組んでまいります。
 学校の部活動につきましては、活動時間の増加による生徒・教員の負担増への対応、指導内容の向上などが課題となっており、総合教育会議においても課題解決のための取組などについて議論しました。こうしたことを踏まえ、適切な休養日・練習時間、生徒減少に伴う適正な部活動数、社会体育との連携など、望ましい部活動の在り方を研究するとともに、指導方法の工夫・改善に取り組むため、技術指導や大会への引率などを行う部活動指導員を公立中学校に配置することといたしました。
 幹線道路ネットワークにつきましては、地域資源を活かした産業の活性化、広域的な経済活動を促進するとともに、災害発生時の避難や救急救援物資の輸送など「命をつなぐ道」の役割も担っています。このようなことから、県内の主要都市を結び、広域的な高速道路網を構成する有明海沿岸道路、佐賀唐津道路、西九州自動車道及び国道498号の整備を引き続き推進してまいります。
 特に、国内外からの利用者数が毎年度過去最高を更新し、九州のゲートウェイ空港の地位を確立しつつある九州佐賀国際空港や、高度専門医療により県民の尊い命を守る佐賀県医療センター好生館へのアクセスの強化などを図るため、佐賀を横断する有明海沿岸道路及び縦断する佐賀唐津道路が接続するエリア「Tゾーン」を、重点的に整備していく必要があると考えており、機会あるごとに国に整備促進を提案してまいります。
 また、県民の日常生活により身近であり、これらの幹線道路ネットワークを補完する国道3号、国道34号の整備についても推進してまいります。
 こうした中、3月31日に、西九州自動車道の南波多谷口インターから伊万里東府招インター間及び九州横断自動車道の小城スマートインターチェンジが供用される見込みであるとともに、国道498号の若木バイパスについては、平成30年度中に供用する予定であり、広域的なネットワークが形成されつつあります。
 今後も、人やモノの交流を促進し、地域の活性化を図っていくため、伊万里港、唐津港、九州佐賀国際空港など陸・海・空の交通体系が有機的に結びつくよう、幹線道路ネットワークをはじめ、佐賀の発展を支える社会資本の整備を推進してまいります。
 企業会計として運営しております工業用水道につきましては、収益的支出約4億53百万円、資本的支出約62百万円となっています。
 次に、平成29年度補正予算案の概要について申し上げます。
 今回の補正予算の編成に当たりましては、国の補正予算の認証額を計上するとともに、11月補正後の情勢の推移に対応するため、歳入歳出予算について、所要額の調整を行うことを中心として編成いたしました。
 今回提案いたしました平成29年度補正予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ

一般会計 増額約   12百万円
特別会計 減額約18億93百万円

となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、

一般会計  約4,445億32百万円
特別会計  約1,079億22百万円

となっています。
 次に、補正予算案の主な内容について申し上げます。
 国においては、12月8日に閣議決定した「新しい経済政策パッケージ」に基づき、現下の追加財政需要に適切に対処するため、防災・減災などのハード整備を行うための措置を講じました。県といたしましては、国の補正予算を積極的に活用し、中期投資見通しに上乗せして取り組むことにより、道路や河川をはじめとする社会資本の整備や農村地域などの防災減災対策を推進することといたしました。
 次に、予算外議案といたしましては、条例案として「佐賀県職員定数条例の一部を改正する条例(案)」など31件、条例外議案として「佐賀県人権教育・啓発基本方針の改訂について」など11件、合わせて42件となっております。
 このうち、乙第20号議案「佐賀県国民健康保険法施行条例(案)」につきましては、市町村が運営する現国民健康保険制度において、被保険者の年齢構成が高く、医療費の水準が高いこと、赤字補填のために一般会計からの繰入や繰上充用を行っていること、市町村間に保険料・税の格差があることなどの構造的な課題を抱えています。このような中、国民皆保険制度を持続可能な制度とすることを目指し、平成30年度から、市町とともに県が運営を担い、安定的な財政運営や健全な事業運営を行うための具体的な取組を規定するものであります。今回、補正予算案において、国民健康保険の赤字解消に取り組む市町に対し、貸付けを行うこととし、この結果、全市町における赤字解消が実現いたします。
 次に、乙第26号議案「佐賀県中小企業・小規模企業振興条例(案)」につきましては、人口減少や少子高齢化などによる社会構造の変化、人工知能、IoTの登場など、中小企業や小規模企業を取り巻く環境が、急激に変化しています。このようなことから、明治維新150年を契機に、先人の「志」を今に活かし、ものづくりや人づくりの伝統を未来につなげていくことにより、県内中小企業や小規模企業の振興を図るため、基本理念及び施策を講ずるに当たっての基本方針を規定するものであります。
 その他の議案につきましては、それぞれ提案理由を記載しておりますので、説明を省略させていただきます。
 幕末維新期における佐賀藩は、日本で最初に反射炉を築いて鉄製大砲を鋳造し、実用蒸気船を建造するなど日本最先端の技術力を背景に、「薩長土肥」の一角として日本を動かし、時代を牽引していました。鉄製大砲と実用蒸気船は日本の近代化の先駆けとなり、日本の社会構造の変革、ひいては日本の産業革命が佐賀藩から始まったと言っても過言ではありません。
 一方、現代に目を向けますと、人工知能、IoT、ドローン、などの新しいイノベーションが登場し、これまでにない革新的なビジネスやサービスを創出するチャンスが広がっており、まさに、鍋島直正公が世界を見ながら佐賀藩から日本を動かしたように、地域をベースとしながら、世界を視野に新しい分野にチャレンジし、世界に打って出る時期が到来しております。「葉隠」の一節「15年先を見候え。さても世間は違うべし」という言葉にあるように、今こそ将来における佐賀の発展を見据え、150年前の佐賀藩と同様に、佐賀から第4次産業革命を起こすことを目指してまいります。
 また、本年は、明治維新の原動力となった佐賀の「技」、それを成し遂げた「人」をしっかりと顕彰し、佐賀の誇りと志を醸成し、未来につなげるため、本県にとって非常に重要な年であります。現在、開催されております平昌冬季オリンピックに出場している小平奈緒選手は、前回大会でメダルに届かなかった悔しさをバネとして、「与えられるものは有限、求めるものは無限」という言葉を胸に、志を高く持ち、日本スピードスケート女子初となる金メダルを獲得されました。「求めるものは無限」、すなわち、高い志があれば、念願が成就すること、佐賀を世界に誇れるものとするという大事を成すためには、まず、何よりも「志」を抱くことが大切であると考えます。
 50年後に明治維新200年を迎える県民の皆様から、明治維新から150年目のこの年が佐賀の歴史の転換点であった、そして、佐賀維新の元年であったと語り継がれるように、県議会の皆様、県民の皆様とともに、新しい時代を切り拓いてまいります。
 以上、私の所信、当面の諸課題への対処方針、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げましたが、よろしくご審議いただきますようお願い申し上げます。