メニュー表示
こちら知事室です
×
こちら知事室です こちら知事室です

平成30年 9月4日
平成30年9月定例県議会 知事提案事項説明要旨

 平成30年9月定例県議会の開会に当たり、提案した補正予算案及びその他の議案の概要をご説明申し上げます。
 提案事項の説明の前に、平成30年7月豪雨への対応について申し上げます。
 今回の豪雨では、県内で2名の方が亡くなり、全国の死者、行方不明者は西日本を中心に230名に上り、河川の氾濫や土砂災害などにより家屋の全・半壊をはじめ甚大な被害が発生しています。この度犠牲となられた方々に対し謹んで哀悼の意を表し、ご冥福をお祈りいたしますとともに、被災者の方々に心からお見舞い申し上げます。
 本県においても、道の駅厳木や筑肥線における土砂崩れをはじめ、中山間地域を中心に農地の法面や林道、河川の護岸など多くの場所で被害が発生しました。一刻も早く復旧が進み、被災した方々が前に向かって歩んでいけるよう全力で対応しております。例えば、イノシシなどの侵入防止用のワイヤーメッシュ柵が土砂の流入などで損壊した水田や畑では、収穫期前に迅速な対応が必要なことから、予備費を活用して応急的な対策に努めています。また、この9月議会においても、今回の豪雨への対応を中心に農地や林道、公共土木施設などの災害関係経費として、約59億49百万円の予算を提案しています。
 本県で初めて大雨特別警報が発表された今回の豪雨への対応では、関係機関との情報共有・連携、避難勧告・指示の出し方、ハザードマップの周知、安全な避難所の確保など様々な課題が浮き彫りになりました。「50年に1度」の現象を基準に発表される特別警報が頻繁に出され、「異常」が「日常」になりつつある中、県民の皆様が、警報への感覚を麻痺させることなく、命を守る行動につなげていくことが何よりも重要です。これまで「佐賀県GM21ミーティング」や「知事・市町議会議長懇話会」において、私も市町の長や議長と、対応の検証と改善に向けた意見交換を行いました。今後も市町と一丸となって危機管理能力の向上に努めてまいります。
 次に、6月に発生した大阪府北部を震源とする地震によるブロック塀倒壊を受けた対応の状況について申し上げます。
 この地震により小学校のブロック塀が倒れ、女子児童が亡くなるという大変痛ましい事故が発生しました。本県では、510の県有施設、304の公立学校において同様の危険性がないかを早急に点検するとともに、私立の幼稚園、認定こども園、中学校及び高校を合わせた117の施設に対して安全点検の実施を要請しました。その結果、安全性に問題が判明した箇所においては、注意喚起の掲示や立ち入り禁止措置などの安全対策を講じています。また、県管理施設については、危険性が高いブロック塀の撤去や、より詳細な安全点検のための予算を今議会に提案しています。引き続き危険性の把握に努め、緊急性を有するものから解体や改修を進めてまいります。
 続きまして、当面の諸課題への対処方針について申し上げます。
 まず、佐賀空港の自衛隊使用要請について申し上げます。
 今回の防衛省からの要請については、平成27年2月に左藤(さとう)防衛副大臣から計画内容について説明を受けて以来3年半の間、状況に応じて様々な意見を聞き、幅広い観点から検討するという、結論ありきではなくプロセスを大切にした実直なやり方で向き合ってきました。その考え方の概略を3点申し上げます。

  • 1点目は、今回の防衛省からの要請は、国の根幹に関わる我が国の独立と平和を守る国防・安全保障に関することであることから、国を構成する地方公共団体である佐賀県としては、国防政策には基本的には協力する立場であると考えており、本県としても一定の負担をする必要があると考えていること
  • 2点目は、計画の全体像・将来像について明確にすべきとの本県からの要請に対し、米海兵隊の佐賀空港利用要請が取り下げられ、施設配置計画案や環境等への影響とその対策、オスプレイの機体の安全性など多岐にわたる項目について質問・回答のやり取りを重ねながら防衛省の説明について精査・確認した結果、不合理な点はないことが確認できたこと
  • 3点目は、私と小野寺防衛大臣との間で、佐賀空港の民間空港としての使用・発展に影響を及ぼさないことを前提に、環境保全と補償に関する協議会の設置、防衛省が支払う100億円を財源とした基金の創設、安全性に関する情報共有のルールの構築について合意できたこと

であります。
 また、防衛省から要請を受けて以来、県議会での議論や決議において、さらには有明海漁協をはじめ多くの関係者からも、まずは県が判断すべきだとの意見を頂いておりました。
 以上申し上げた様々な点について総合的に検討し、熟慮に熟慮を重ねた結果、8月24日に、県としては「今回の防衛省からの要請を受け入れ、公害防止協定覚書付属資料の変更について有明海漁協と協議をさせていただく」という判断をし、記者会見で表明いたしました。その後、直ちに有明海漁協に赴き、組合長に対して今回の判断について説明するとともに、公害防止協定覚書付属資料の変更についての協議の申し入れを行いました。組合長からは、組織として受け止め、今後どのように対応するか協議する旨の回答を頂いており、誠意を持って有明海漁協と協議を行ってまいります。
 次に、有明海の再生について申し上げます。
 諫早湾干拓関連訴訟については、7月30日、福岡高裁において、平成22年に同高裁が開門を命じた確定判決に基づく強制執行を認めない旨の判決が出されました。これを受け、8月3日に佐賀県有明海漁協の組合長や県議会議長と共に齋藤農林水産大臣と面談いたしました。有明海漁協からは、国や関係者に対し、引き続き福岡高裁の和解勧告で示された方向性に沿って全体的解決に至るよう努力を望むとともに、有明海の再生に向けた要望がなされました。私からは、6月に大浦地区で漁業者の皆さんと意見交換した際に強く感じたタイラギ漁に対する漁業者の誇りをお伝えするとともに、漁協の要望の実現に一緒に取り組んでいくという本県の考えを伝えてまいりました。大臣からは、有明海再生に向け今後とも取組を進める、また、裁判については、引き続き開門しない前提の基金による和解を目指す旨の発言がありました。
 なお、開門を求める方々が、判決を不服として8月10日に最高裁に上告した一方、国は引き続き和解を目指すとしている状況にある中、県としては、今後の訴訟等の動向を注視し対応してまいります。
 さて、有明海の漁船漁業は厳しい状況にありますが、これまで行ってきた資源回復の取組により、アゲマキやウミタケの水揚げが実現するなど再生の兆しが見られており、“まえうみもん”の復活を待ち望んでいた県民の方々から喜びの声をお聞きしています。なお、漁業者が待ち望んでいるタイラギについては、今年度から有明海沿岸4県で協調し、種苗生産・放流技術開発に着手しており、一刻も早い漁獲の再開を目指します。
 引き続き、宝の海・有明海の再生という目的をしっかりと見据えて全力で取り組んでまいります。
 次に、原子力発電について申し上げます。
玄海原子力発電所3号機、4号機については、それぞれ5月16日、7月19日に営業運転に復帰し、順調に運転が行われています。しかしながら、そのことをもって県も含め全ての関係者の中に「気の緩み」があってはならないと考えています。7月5日に九州電力の池辺社長と面談した際にも、慎重のうえにも慎重に、常に緊張感を持って取り組んでいただきたいということを強く申し入れました。県としては、原発立地県として、今後とも県民の安全を何よりも大切に、玄海原子力発電所と真摯に向き合い続けてまいります。
 次に、九州新幹線西九州ルート整備について申し上げます。
 7月19日の与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームの検討委員会において、九州新幹線西九州ルートの整備のあり方について、フリーゲージトレインの導入断念を含む中間とりまとめが行われました。これを受け、8月6日に与党検討委員会の山本委員長が来佐され、フリーゲージトレインの導入断念に関する国の責任に言及した上で、今後、具体的な検討を行い、佐賀県の意見を聞く形で検討を深めるため協力願いたい旨の要請がありました。
 これに対し、私からは、

  • 元々時速270kmで開発が進められてきたフリーゲージトレインが、今になってその速度では山陽新幹線へ乗り入れられないとされたのは違和感があること
  • 西九州ルートの整備のあり方は短期間で決められる話ではなく、関係者で幅広く知恵を出し合いながら進めていく必要があること

などを申し上げました。
 西九州ルート整備について県の考えに変わりはなく、

  • 佐賀県の意思、佐賀・長崎両県の合意が大前提である
  • 整備方式に関わらず、合意にないものについてこれ以上の費用負担はできない
  • フル規格での整備は受け入れられない
  • 佐賀県はフルかミニの2つから選択しなければならない立場にはない

と考えています。引き続き、与党検討委員会における議論を注視するとともに、新たな提案などがあった場合、県の考えをしっかりと主張してまいります。
 次に、明治維新150年記念事業について申し上げます。
 3月から開催している肥前さが幕末維新博覧会は、多くの方から高い評価を頂いており、関連施設やイベントを含めた来場者数は、目標の100万人を約5か月早い8月11日に達成し、8月末現在では約124万人となっています。関連イベントとして、県立博物館では、「すごいぞ!ボクの土木展」を開催しました。砂場に作った山や海が、プロジェクションマッピングによって鮮やかに色付けされる「砂場マッピング」、もしも有明海に堤防がなかったら佐賀平野はどうなるのかを再現した「潮位の壁」など、本県ゆかりのクリエーターのアイデアを集めたこれまでにない展示で、佐賀の土木施設や土木の仕事の大切さを体感していただきました。
 県立美術館では、「グググッ!!グリコ展」を開催し、グリコサインの歴代の看板や数百点に上るグリコのおまけの展示などを通じて、佐賀出身の江崎利一が日本を代表する菓子メーカーを創り上げるまでの創意工夫の数々を楽しみながら学んでいただきました。
 県総合体育館を主会場に開催したものづくり体験イベント「SAGAものスゴフェスタ4」では、ものづくりの仕組みを理解しながら自分でロボットを組み立てる「ものづくり体験ショー」などを通じて、ものづくりの魅力を体感していただきました。4年目を迎えたこの取組は、初回と比べ、出展企業・団体が約2倍の50社、来場者が約5倍の2万人に増加するなど、ものづくりへの関心の高まりにつながっており、佐賀の企業で働きたいという想いをかきたてる機会になっているものと考えています。
 こうしたイベントに参加した子供たちが佐賀のことを知り、将来に夢を描いて挑戦を続けることで佐賀の未来を支えていってくれることを期待しています。
 さらに、10月には、佐賀市城内エリアにおいて第1回「さが維新まつり」を計画しており、佐賀の偉人に扮した“さが維新行列”や県内の伝統的な祭りである浜崎祇園山笠の出演などを予定しています。維新博を機に、佐賀の偉業・偉人と未来への希望を身近に感じていただく県民参加型の佐賀らしさの詰まった祭りとすることで、佐賀への誇りと愛着を育んでまいります。
 次に、国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会について申し上げます。
 スポーツ基本法の改正により、「国民体育大会」が「国民スポーツ大会」に生まれ変わることとなり、最初の開催地として本県が内定いたしました。最初の「国スポ」開催を契機に新しいスポーツシーンを佐賀の地から生み出していきたいと考えており、参加する選手がパフォーマンスを発揮するだけでなく、「観る」、「支える」など、誰もが自分のスタイルでスポーツを楽しみ、共感しあえる喜びを発信する大会となるよう準備を進めてまいります。
 また、この大会の開催を契機としたSAGAサンライズパーク(仮称)の整備については、主要施設の基本設計を進めており、8月に開催した庁内推進本部会議において施設計画の素案を取りまとめました。今議会においては、陸上競技場の走路改修及びエアーライフル射撃場の移転新築に係る工事並びにSAGAアリーナ(仮称)及び水泳場の実施設計などに必要な予算を提案しています。SAGAサンライズパークの整備により、県内のスポーツ文化をより一層広げるとともに、アリーナを中心に新たな人の流れを創り出し、このエリアが佐賀の未来を切り拓く「さが躍動」の象徴となるよう取り組んでまいります。
 また、SAGAスポーツピラミッド構想、通称SSP構想については、7月8日にスポーツエリートアカデミーSAGAを開校したほか、昨日9月3日には、SSP構想基本方針を策定いたしました。この基本方針に基づき、今後、スポーツエリートアカデミーSAGAを核とした人材育成、アスリート・指導者の定着に向けた就職支援、練習環境の充実などを着実に進め、トップアスリートの育成と、それを通じたスポーツ文化の裾野の拡大に取り組んでまいります。
 この夏も、スポーツ界では本県ゆかりの選手の活躍が続きました。佐賀学園高校の糸山大賀(いとやまたいが)選手が、バレーボールの第12回アジアユース男子選手権大会で日本チームの優勝に大きく貢献し、大会のベストセッターにも選ばれました。また、唐津市出身の嘉村健士(かむらたけし)選手が、第24回世界バドミントン選手権大会の男子ダブルスで、この種目で日本勢初となる銀メダルを獲得しました。全国高校総体では、柔道で佐賀工業高校の近藤隼斗(こんどうはやと)選手が優勝し、新体操男子で神埼清明高校が二連覇を果たしました。このほか、夏の甲子園で全国制覇を果たした大阪桐蔭高校のエースピッチャーで多久市出身の柿木蓮(かきぎれん)選手や、女子野球ワールドカップに出場し、優勝した日本チームの一員として活躍した江北町出身の緒方佑華(おがたゆか)選手など多くの選手が国内外で躍動しています。こうした姿は、県民に感動を与え、佐賀への誇りにもつながります。これからも、ふるさと佐賀を胸に活躍する皆様を全力で応援してまいります。
 続いて、最近の県政の主な動きについてご説明申し上げます。
 まず、県民意識調査の結果について申し上げます。
 調査では、8割以上の方が「住んでいる地域が好き」、「今の地域に住み続けたい」と回答され、7割以上の方が「日常生活に満足している」と回答されるなど、多くの方に地域への愛着と暮らしへの満足感を持っていただいていることを大変嬉しく思っています。一方で、「地元や佐賀県のことを県外の人に誇れる」と回答された方は6割にとどまっており、本県の魅力を県民の皆様が共感できる形で発信していくことに引き続き力を入れてまいります。
 次に、佐賀の地域資源を磨き発信する取組について申し上げます。
 唐津市の波戸岬キャンプ場がリニューアルを終え、7月28日にワンランク上のキャンプ場として生まれ変わりました。玄界灘を茜色に染めながら沈んでいく夕日が息をのむ美しさを見せる絶好のロケーションの中に、さがデザインの視点を取り入れ、専用のコンテナハウスやウッドデッキ、完全プライベートのプレミアムエリアを設けました。今後は、この場所を自然の魅力を楽しむ「自然体験の中心地」として育て、佐賀ならではの魅力を発信してまいります。
 また、地域資源を活かし、地域が自発的に取り組む「自発の地域づくり」の動きも広がっています。例えば、嬉野市吉田地区では、廃校をリノベーションしたカフェを拠点にしたマルシェや地域の高齢者を対象とした食事会を開催するといった動きが生まれています。また、太良町竹崎地区では、地元の女性たちが「コハダ女子会」を立ち上げ一日限定のコハダ食堂をオープンするなど、コハダで地域を盛り上げています。
 佐賀県は、世界に誇れる地域資源にあふれています。佐賀という地域が好きで、自分自身も楽しみながら地域を盛り上げていきたいという方々と一緒になって、地域資源を磨き発信する取組を続けてまいります。
 次に、九州佐賀国際空港について申し上げます。
 九州佐賀国際空港は、7月28日で開港20周年を迎えました。国際線の増便や利用者増を受け、これまで国際線の発着時刻に合わせて税関職員が出張して対応していた税関業務について、7月1日からは空港への職員の常駐が実現し体制が強化されました。また、台北便については、7月29日からチャーター便での佐賀からの利用も開始され、現在、タイガーエア台湾において定期便化に向けた最終調整が行われています。引き続き、佐賀・台湾双方向の利用促進に取り組んでまいります。新たなステージでの更なる飛躍を目指し、九州のゲートウェイ空港として九州佐賀国際空港の利便性を更に向上させてまいります。
 次に、幹線道路ネットワークの整備について申し上げます。
 9月8日には、国道498号の若木バイパスが開通する予定であり、幹線道路ネットワークが更に広がることになります。また、九州佐賀国際空港をハブとした道路ネットワークの中心的な路線である有明海沿岸道路については、南西部への延伸を着実に進めており、年内には難工事であった六角川大橋が連結できる見込みです。さらに、佐賀唐津道路と接続するエリア「Tゾーン」を重点的に整備してまいります。こうした幹線道路ネットワークは、広域的な経済活動や災害発生時の避難、救急搬送などを担うものであり、佐賀県の飛躍と県民の命を守る基盤として引き続き整備を推進してまいります。
 次に、企業誘致及び企業支援の状況について申し上げます。
 7月9日に、株式会社Cygamesと本県及び佐賀市との間で、同社の新ビル建設にかかる立地協定を締結いたしました。Cygames側が発表された計画によると、雇用者数は現在の約60名から平成34年までに約300名に増員することとされています。知事に就任して以来86件の誘致を実現し、それに伴う新規地元雇用者数は3,000人を超えています。県では、企業の新規立地や事業拡大を引き続き支援し、若者を中心とした多様な雇用の場の確保に努めてまいります。
 また、3月に成立した佐賀県中小企業・小規模企業振興条例に基づき中小企業や小規模企業の振興に力を入れています。
 その取組の一つとして、経営者の高齢化などによる廃業によって、技術、ノウハウなどの価値ある経営資源や雇用が失われることを防ぐため、事業承継に力を入れています。本県独自の取組として今年度から配置している事業承継支援員が企業を訪問し、きめ細やかに実情を把握するとともに、個々の企業の課題を関係機関が連携して解決する事業承継ネットワークを活用しながら、魅力や価値のある企業・事業所が後世に引き継がれていくよう経営者に寄り添って支援してまいります。
 バブル期を超える有効求人倍率を記録する中、企業を支える人材の確保も重要な課題となっています。そこで、経営者などを対象に、企業の魅力を高め求職者にアピールすることにより採用力の向上を図るためのセミナーや専門家による個別相談を通じて、県内企業が人材争奪戦の中で勝ち残っていけるよう支援してまいります。
 さらに、AI・IoTなどを活用した生産性や経営力の向上の可能性が広がる中、10月には、佐賀県工業技術センター内に「佐賀県産業スマート化センター」を開設することとしています。センターでは、企業や商工団体、大学などと連携し、AI・IoTによる新たなビジネス創出などに向けた経営者の意識の醸成や人材育成を行うとともに、企業からの相談対応や企業間マッチングを行うなど、イノベーションの拠点としてチャレンジする企業を支援してまいります。
 次に、国営筑後川下流土地改良事業の完了について申し上げます。
 この事業は、佐賀県及び福岡県にまたがる約4万ヘクタールの水田の農業用水の確保と排水不良の解消を目的として昭和51年に着手し、40年余りを経ていよいよ完了を迎えるものです。10月には事業に携わってきた関係者が一堂に集い完工式が予定されています。この事業に加えて圃場整備事業を実施したことにより、生産性の向上はもとより、水田としてだけでなく畑地としての利用が進みました。その結果、米・麦・大豆などの土地利用型農業に加え、イチゴやアスパラガスなどの施設園芸においても全国に誇れる農産物が生産されるようになり、本県の耕地利用率は32年連続全国トップを誇っています。今後とも、こうした基盤を活かして本県農業の発展に力を尽くしてまいります。
 次に、県民の命を守る取組について申し上げます。
 まず、「がん対策の推進」についてであります。
 本県は肝がんの死亡率が18年連続全国ワーストワンという厳しい状況にあります。このため、肝がん対策を強化すべく、今年度から、協会けんぽが行う肝炎ウイルス検査費用の個人負担分の全額を県が負担しております。その結果、6月までの速報値では検査件数が1,682件となり、スタートして3か月で昨年度1年間の786件の2倍を超える方が検査を受けるという成果が表れています。また、今月は「がん征圧月間」であり、私も毎年参加している患者支援のためのチャリティイベント「リレー・フォー・ライフ」が開催される予定です。こうした機会を捉え、がん検診の受診を呼びかけ、県民をがんから守り、がんになっても社会全体で支え、安心して暮らしていける佐賀づくりに全力で取り組んでまいります。
 次に、「交通安全・事故対策」についてであります。
 本県における人身交通事故の発生件数は8月末において昨年比マイナス14.6%と減少しているものの、いまだ人口10万人当たりでは全国ワーストレベルにあり、その原因としては追突事故が突出して多いことがあります。そこで、日本郵便や佐賀県バス・タクシー協会などの企業・団体と協働して追突事故「(ゼロ)」を目指した運動を展開しています。また、企業や学校、地域などには、身近な方々との「井戸端ミーティング」の開催を呼び掛け、これまでに4,000名を超える多くの方々が参加され、自分たちの交通マナーを振り返っていただきました。交通事故の防止は、県民一人一人の交通ルールの遵守と交通マナーの意識・向上によるところが大きいため、県民の心に届くメッセージを送り続けながら大切な県民の命を守る努力を続けてまいります。
 次に、「子育てし大県“さが”プロジェクト」について申し上げます。
 子育て環境の充実のためには、男性の家事・育児への参画が重要なことから、妻の妊娠期である「マイナス1歳期」の男性を対象に、子供が生まれる前から家事や育児を夫婦で共に担う意識を高めていただくため、「マイナス1歳からのイクカジ推進事業」に取り組んでいます。8月4日には、ライオン株式会社との間で包括連携協定を締結し、ライオンの協力を得て開催した「マイナス1歳からのイクカジフォーラム」では、参加された夫婦に、夫婦間の家事ギャップを解消する「家事のコツ」や夫婦円満につながるコミュニケーションの重要性について学んでいただきました。今後も県内各地で、男性の家事・育児への参画を促進するプレパパ向けセミナーを開催するなど、引き続き、男女が共に働きやすく、子育てしやすい佐賀県づくりに取り組んでまいります。
 次に、「人の想いに寄り添う」取組について申し上げます。
 まず、今議会に提案している「障害のあるなしにかかわらず、ともに暮らしやすい佐賀県をつくる条例(案)」についてであります。
 この条例は、県や事業者が障害を理由とする差別の解消に努めることはもちろん、人が人を大切にすることが、誰もがともに暮らしやすい地域社会につながっていくという想いを県民皆で共有し行動につなげようとするものです。策定にあたっては、障害者福祉関係の団体及び自治会、消防団といった地域コミュニティなど多くの方々の意見を伺い、プロセスを大切にしてきました。条例の特色は、読みやすく分かりやすい言葉で表現したこと、県民や地域コミュニティがそれぞれの立場でできる取組を具体的に示したことです。
 例えば、県民には、

  • 困っていたり、支援を必要としている障害のある人に気づいたときは、手伝えることがないかなど、声かけをすること
  • 災害が発生したとき、障害のある人を円滑に支援できるよう、日頃からあいさつや声かけなどをすること

を促しているほか、地域コミュニティには、

  • 地域行事は、障害のあるなしにかかわらず、誰もが参加しやすいものにすること

などを呼びかけています。また、障害のある人やその家族、支援者には、日々の生活における不便さや困難さを遠慮なく周りに伝えてください、という想いを込めています。
 さらに、条例の内容を県民の皆様に知っていただくことが重要であることから、地域コミュニティなどに対する普及啓発に必要な予算を今議会に提案しています。
 次に、ヘルプマークについてであります。
 ヘルプマークとは、外見からは分かりにくい障害のある方や妊娠初期の方などが身に着けることで、周囲から配慮や支援を得やすくするマークです。本県では7月から、必要とされている方への交付を始めており、あわせて、公共交通機関に対し、ヘルプマークを持った方が優先席を利用しやすくなるよう協力を求めています。このヘルプマークが効果を発揮するためには、県民の皆様がその意味を理解していることが重要なことから、ヘルプマークの社会への浸透に努めてまいります。
 こうした取組を通じて、障害のある方などに対する配慮や支援が自然な形で行われ、障害のあるなしにかかわらず、共に支え合い、住み慣れた地域の中で笑顔で暮らせる佐賀県を目指します。
 次に、全国高等学校総合文化祭について申し上げます。
 来年夏の「2019さが総文」開催を前に、8月3日には本番を想定したプレ大会パレードを行うとともに、韓国の珍島國學(ちんど・くがく)高校と県内の高校の生徒による国際交流コンサートを開催しました。また、演劇や吹奏楽など23部門毎のプレ大会を順次開催しているほか、10月にはプレ大会総合開会式を予定しています。来年の本大会成功に向け「2019さが総文」の認知度向上に努めながら、大会に携わる高校生を中心にしっかりと準備を進めてまいります。
 続きまして、提案事項についてご説明申し上げます。
 今回の補正予算案の編成に当たりましては、6月補正後の情勢の推移に対応するため、早急に措置を要するものについて所要額を計上することといたしました。
 この結果、補正予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ、

一般会計  約101億96百万円
特別会計 減額約3億59百万円

となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、

一般会計  約4,508億43百万円
特別会計  約1,945億72百万円

となっています。
 次に、予算案の主な内容について申し上げます。
 先にご説明した事業に加えて、まず、幼児教育・保育の無償化に係る環境整備に向けた予算について申し上げます。
 来年10月に予定されている幼児教育・保育の無償化により保育の需要増加が見込まれます。このため、保育士の確保に向けて、資格を有しながら保育業務に従事していない方を対象に、保育士として働く意向などについて意識調査を行うとともに、認可外保育施設に対する指導体制の強化や事故防止につながる取組を支援することにより、誰もが安心して保育サービスを利用できる環境を整備してまいります。
 次に、畜産試験場の施設整備に向けた予算について申し上げます。
 本県を代表する銘柄牛である「佐賀牛」の生産基盤強化を図るため、ICT・IoTツールを活用した簡易で省力的な繁殖牛や子牛の飼養管理技術の研究・開発に取り組みたいと考えています。そのため、国の地方創生拠点整備交付金を活用して、必要な施設を畜産試験場に整備することで肥育素牛の県内自給率の向上を図ってまいります。
 次に、予算外議案としては、条例議案として先ほどご説明した「障害のあるなしにかかわらず、ともに暮らしやすい佐賀県をつくる条例(案)」など5件、条例外議案として「県事業に対する市町の負担について」など9件、合わせて14件となっています。
 このうち、乙第52号議案「佐賀県核燃料税条例(案)」については、現行の条例が平成30年度末で失効することから、今後も原子力発電所の立地に伴う安全対策等の財政需要を充足させる財源を確保するため、平成31年4月から、現行の価額割及び出力割による課税に加えて、使用済核燃料を新たな課税対象とした「核燃料物質重量割」を創設するものです。
 その他の議案については、それぞれ提案理由を記載していますので説明を省略させていただきます。
 最後になりますが、今、佐賀城本丸歴史館では、特別展「肥前さが幕末維新の『人』~佐賀の人づくりが近代日本を支えた~」を開催しています。大隈重信による鉄道敷設、江藤新平による司法制度の確立、大木喬任による近代的な教育制度の整備など「佐賀が生んだ近代国家の設計士たち」を紹介しており、こうした活躍の原点には“人づくり”があることを感じることができます。佐賀県は人口に占める15歳未満の子供の割合が全国で3番目に高く、また、子供たちが骨太に育つ自然や、子供たちを見守る地域コミュニティなど、子供が育つ環境が備わっています。サガン鳥栖に今年7月に加入したフェルナンド・トーレス選手は、こうした子供たちへのメッセージの中で「情熱や夢を教えることはできない。自分で見つけて前へ進んでいってほしい」と語っています。この言葉は、志を持って日本の礎を築いてきた佐賀の先人たちにも通じるものと考えており、情熱や夢を自ら見つけていける環境を大切にし、そうした機会を創っていくことが、未来の佐賀を輝かせることにつながっていくものと考えています。7月の全日本中学ボウリング選手権で日本一に輝いた鹿島市立東部中学校3年の中島望結(なかしまみゆ)さんは、情熱や夢を自分で見つけて自分の力で前に進んでいる一人です。中島さんは「県内の高校にボウリング部がないため、進学後は友人と部を作って練習したい。」と語ってくれました。佐賀県という土壌でしっかりと力をつけ、5年後に佐賀で開催する国民スポーツ大会では本県代表として優勝を目指してくれることを期待しています。
 佐賀県は、自然や人との交流といった骨太の体験の中で情熱や夢を抱くことができます。佐賀をフィールドに、そして佐賀への誇りを胸に頑張っている人を大切に育んでいくことを土台に「世界に誇れる佐賀づくり」に邁進してまいります。
 以上、当面の諸課題への対処方針、最近の県政の主な動き、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げました。
 よろしくご審議いただきますようお願い申し上げます。