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平成31年 2月14日
平成31年2月定例県議会 知事提案事項説明要旨

 平成31年2月定例県議会の開会に際し、県政を運営するに当たっての所信を述べさせていただくとともに、最近の動き、提案事項などについて御説明申し上げます。
 私は昨年末の佐賀県知事選挙において、県民の皆様の御支持により、引き続き2期目の県政を担わせていただくことになりました。その責任の重さを胸に刻み、気持ちを新たにしているところです。県議会議員の皆様の御指導、御鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 選挙期間中、山間部や県境を含め県内各地を回り、暮らしに身近なところで多くの県民の皆様とお会いし、様々な声をお聴きしてまいりました。その中で、この素晴らしい佐賀をさらに良くしていくための答えは現場にあると確信するとともに、現場の声に寄り添った県政を推し進めていかなければならないという想いを強くしたところです。また、知事就任後の4年間で、本県には、様々な地域や分野で輝いている人がいること、素晴らしい企業があること、本物の地域資源があることを強く認識し、真に豊かな暮らしがあることを実感することができました。これからも、こうした世界に誇れる佐賀が持つ価値に光を当てることに力を入れ、「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」をさらに前に進めてまいります。
 この考えを県民の皆様と共有し、オール佐賀で共に歩みを進めていくため、今後4年間の新たな総合計画を策定することとし、今議会にその骨子案を報告いたしております。今後、県議会での議論や県民の皆様との意見交換会、パブリックコメントなどを通じ御意見を頂いた上で、計画案を取りまとめ6月議会での審議をお願いしたいと考えています。
 この総合計画に沿った施策が効果を上げるためには、県民が、何より佐賀が好きで、佐賀への誇りを抱いていることが大事なポイントであります。県民の皆様が、佐賀の持つポテンシャルや魅力に気づき、そこから生まれる佐賀への誇りを未来に向けたエネルギーにしたいとの想いで開催したのが「肥前さが幕末維新博覧会」でした。昨年3月17日から今年1月14日まで304日間、県内16の会場を中心に開催し、総来場者数は、目標の100万人を大きく上回る224万人に達しました。メインパビリオン「幕末維新記念館」に設けた50年後へのメッセージを書き残す「ことのは結び」のコーナーには、佐賀の偉人や偉業に心を揺り動かされ、未来に向けた思いを綴った10万を超える「ことのは」が残されました。私は、会場を訪れた県民の心からあふれ出たこの数々の前向きな言葉こそが、かけがえのない宝物であり、維新博を開催して本当に良かったと思っています。開催に当たって御協力いただいた全ての方に心から感謝申し上げます。
 佐賀への誇りを胸に「これから未来を描いていくんだ」という維新博で生まれた「志」は、この夏開催する全国高等学校総合文化祭「2019さが総文」の生徒実行委員会へと引き継がれました。県民の心に芽生えた佐賀への誇りは、佐賀が飛躍する上で土台となるものであり、この「志」を今に生かし未来につなげてまいります。
 私は、知事選挙を含めこれまで多くの現場を訪れ、様々な声をお聴きしてきたことを通じ、これからの県政では、「山を大切にする」、「交流を生み出す」、「志を育む」という3点について強い思いを抱きました。
 「山を大切にする」とは、平成29年の九州北部豪雨や平成30年7月豪雨による土砂災害、有明海への流木被害などが続く中、県民の生命や豊かな暮らしを守る礎となる山を未来に引き継いでいくということです。山は、平野部の暮らしを支え、海への恩恵をもたらす源流でもあることから、森川海は一つとして豊かな自然環境を未来につなげる「森川海人っプロジェクト」に引き続き取り組んでまいります。さらに、山に住み、山で営む人々の気持ちを大事にしていきたいと考えており、引き続き、集落を回って山間部の方々の想いをお聴きするとともに、中山間地での農業、畜産、林業における機械導入や施設整備への補助率をかさ上げするなど山での営みを支援してまいります。また、本県は、奥深い山が少なく都市に近いため山を楽しんでいただきやすいという特徴があります。こうした利点を生かして、女性の力や地域外の力も取り入れて山の魅力に光を当て、山の素晴らしさを共有しながら、人々の真に豊かな暮らしを支える山にこだわった取組を進めてまいります。
 次に、「交流を生み出す」とは、佐賀の真の豊かさや素晴らしさを磨き上げ、多くの人が佐賀を訪れる機会を創り出すことで地域が飛躍する原動力にするということです。本県は、外国人宿泊者数や九州佐賀国際空港の利用者数が過去最高を更新し、今後、九州新幹線西九州ルートの開業や国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会の開催など新たな人の流れを生み出す好機が続きます。こうした佐賀に吹く風を追い風としてしっかり捉えるために、これまで、県民の皆様が、ややもすると住む人にとって使い易い街づくりやサービスという視点で考えがちだったものを、訪れる方に楽しんでいただくことも意識するようにしていただきたいと考えております。このため、歩いて楽しい街づくりや店舗でのキャッシュレス決済の導入、メニューの多言語化を進めるとともに、佐賀を体感いただける空間として立ち飲みスタイルの「BAR saga(仮称)」を佐賀駅に設置するなど、訪れる方をお迎えする機運を醸成してまいります。また、佐賀空港を核とした筑後佐賀圏域の広域連携や、鹿島・太良など長崎本線沿線地域での自発の地域づくりなどを通じ、訪れる方が心地よく感じる街づくり・地域づくりを進めてまいります。
 「志を育む」とは、単に大企業中心、東京などの都市部中心の考えを価値とする時代から、自分自身がどういう生き方をするのかを価値とする時代に変わり、また、佐賀という地域が世界と直接つながっていく中、佐賀の未来を創造する原点として、県民お一人お一人が強い志を持ってほしいということです。その志を育むため、維新博の感動を蘇らせる場として維新博メモリアル展示の空間を整備するほか、佐賀の歴史や文化、自然の素晴らしさを伝える映像を用いて高校生への「佐賀を誇りに思う教育」を引き続き推進してまいります。維新博では、佐賀の素晴らしさが県外の方に伝わるという効果も生まれています。佐賀の底力をさらに県内外に発信するため、明治日本の国家制度の礎を築いた大隈重信を題材にした、著名な作家による小説や漫画の創作を支援してまいります。こうした様々な取組を通じ、佐賀の評価を高め、県民の佐賀への誇りをさらに醸成し、未来を担う人づくりを進めてまいります。
 続きまして、当面の諸課題への対処方針について申し上げます。
 まず、原子力発電について申し上げます。
 1月22日、九州電力は、玄海原子力発電所の使用済核燃料の貯蔵対策として、3号機の貯蔵プールの保管容量を増やすリラッキング及び貯蔵プールから取り出した燃料を保管するための乾式貯蔵施設の設置について、原子力規制委員会へ許可申請を行い、あわせて、県に対して安全協定に基づく事前了解願いを提出しました。規制委員会においては、厳格な審査を行っていただきたいと考えており、九州電力に対しては、審査に真摯に対応し、県民へ分かりやすく丁寧に説明することを求めました。今後、九州電力から申請内容の詳細な説明を受けるとともに、規制委員会の審査状況を注視してまいります。
 また、九州電力からは、昨日2月13日に、2号機の廃炉を決定したとの報告がありました。私は、原子力発電への依存度を可能な限り低減し、原子力発電に頼らない再生可能エネルギーを中心とした社会が実現できれば素晴らしいとの考えをかねてから表明しており、今回の報告はその考えと方向性は同じであり、しっかりと受け止めています。一方で、1号機に続いて2号機の廃止措置が進むとしても、原子力発電所とは、これからも長い年月にわたり関わり続けなければならないことから、事業者の安全に対する取組をしっかりと注視してまいります。
 また、2月2日には、3、4号機の再稼働後初となる原子力発電所での事故を想定した原子力防災訓練を実施しました。今回の訓練は地震との複合災害を想定して行い75機関、前日までの屋内退避訓練を含めて約4万1,000人の方に参加いただきました。今回初めて離島の向島での全住民を想定した島外避難を実施し、海上自衛隊の艦船やヘリコプターを使った避難を確認することができました。また、ヘリコプターで撮影した映像を送るヘリテレ伝送システムを使った訓練では、渋滞状況や被災箇所の情報を生かして避難経路を変更する訓練を実施するなど、現場の実情に応じた様々なオペレーションを確認することができました。
 原子力発電については、今後とも、九州電力に対し、常に緊張感を持って慎重の上にも慎重に安全対策に取り組むことを求めるとともに、県も含め全ての関係者の中に気の緩みが生じることがないよう万全を期してまいります。
 再生可能エネルギーを中心とした社会の実現に向けては、平成30年3月に策定した「佐賀県再生可能エネルギー等先進県実現化構想」に基づく取組を進めるため、県と佐賀大学を中心に産学官が連携して再生可能エネルギーの技術開発や市場開拓などを推進する組織を設立することといたしました。新たな技術や製品、サービスにつながる研究開発を進めるなど、再生可能エネルギーの普及拡大に寄与する先進的な取組を積極的に推進してまいります。
 次に、佐賀空港の自衛隊使用要請については、昨年8月に「防衛省からの要請を受け入れ、公害防止協定覚書付属資料の変更について有明海漁協と協議をさせていただく」という判断をしたところであり、県としては、ノリ漁期の状況を見ながら誠意を持って協議を行ってまいります。
 次に、有明海の再生について申し上げます。
 諫早湾干拓関連訴訟については、開門差止訴訟及び請求異議訴訟のいずれも最高裁で審理中となっています。有明海漁協も県も、有明海の再生のためには開門調査を含む原因究明が必要という思いは変わりません。有明海漁協は、福岡高裁の和解勧告で示された方向性に沿った全体的解決と要望事項の実現を望まれています。県としては、国に漁協の決断の重みを受け止め、その要望を実現するよう求めているところです。また、水産資源の回復に向けては、アゲマキやガザミなどの種苗放流や海底耕耘などこれまでの取組に加えて、水質浄化機能を有するカキ礁の再生やサルボウが育ちやすい漁場づくりなどに取り組んでまいります。宝の海である有明海の再生は、国や県、市町、漁業者など有明海に関わるもの皆で力を合わせて取り組む課題であり、今後も訴訟の状況や国の動向を注視し、関係者と意見交換をしながら全力で取り組んでまいります。
 次に、九州新幹線西九州ルートについて申し上げます。2月6日、建設主体である鉄道・運輸機構は、武雄温泉-長崎間の事業費が当初計画の約5,000億円から約6,200億円に増加するという事業計画の変更を国に申請しました。なお、この申請の中で、肥前山口-武雄温泉間の全線複線化について、平成34年度の暫定開業に向けて関係六者で合意した内容と異なったものとなっており、関係者には合意したことは守るという姿勢で取り組んでいただきたいと考えています。県としては、引き続き、安全を大前提にしたコスト縮減とともに、「平成34年度の武雄温泉駅での対面乗換方式による開業」と「肥前山口-武雄温泉間の全線複線化」の確実な実現を求めてまいります。また、1月9日に長崎県の中村知事が、1月18日に与党検討委員会の山本委員長が来佐された際には、与党検討委員会で議論されている「平成34年度の開業後の整備のあり方」について意見交換を行いました。その際、私からは、特にフル規格での整備は、佐賀県は財源の問題にとどまらず、在来線、ルート、地域振興など複合的な問題があり受け入れられないことを申し上げました。西九州ルート開業後の整備のあり方に関する本県の考えは、これまでと変わっておりません。引き続き、与党検討委員会における議論を注視するとともに、新たな提案があった場合には、県の考えをしっかりと主張してまいります。
 西九州ルートの開業後、特急本数が大幅に減ることになる長崎本線沿線地域においては、駅を起点にした移動手段の充実や観光列車の誘致、地域の魅力の発信など、鉄道や駅を生かして交流を生み出す地域づくりを沿線市町と一緒になって進めてまいります。
 次に、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定及び日EU経済連携協定(EPA)について申し上げます。
 日本など11か国が参加するTPP協定については、昨年12月30日に国内手続を終えた6か国間で発効し、その後、今年1月14日にベトナムが加わり、現在、7か国間での発効となっています。また、日EU・EPAについては、2月1日に発効したところです。両協定の発効により、輸出においては、伊万里・有田焼など県産品の取引拡大のチャンスとなる一方、輸入においては、これまでのところ県内の産業に影響が出ているとの声は聞かれないものの、加盟国からの牛肉などの輸入の動向を注視していく必要があります。今後も情報の収集に努め、関係者の意見を聴きながら農林水産業をはじめとした本県の産業が持続的に発展していけるようしっかりと取り組んでまいります。
 次に、城原川ダム事業について申し上げます。
 今年度から「建設段階」へと移行し、平成31年度政府予算案では、今年度予算の約1.3倍となる6億9,600万円が計上され、ダム本体関連の調査や付替道路の設計など、ダム建設に向けてさらに事業の進捗が図られることとなりました。県としては、これまでダム事業が長い年月を要していることを踏まえ、早期建設という地元の皆様の想いにしっかりと応えられるよう、引き続き、必要な予算の確保及び事業実施に当たっての自然環境や景観への配慮などを国に働き掛けてまいります。
 次に、国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会について申し上げます。
 本県スポーツ界では、競技力の向上と競技分野の広がりを感じる活躍が続いています。全日本女子ボクシング選手権大会で高志館高校の貞松優華選手と古賀舞琴選手が県勢女子初となる個人優勝、全国高校選抜スポーツクライミング選手権大会の女子団体で多久高校の樋口結花選手・掛林紗衣選手のチームが県勢初となる団体優勝を果たしました。また、全日本バレーボール選手権大会で久光製薬スプリングスが2年ぶり7回目の日本一に輝き、女子春高バレーでは佐賀清和高校が県勢として8年振りに大会2勝を挙げベスト16入りを果たしています。日本パラ水泳選手権大会でも柴田健二選手が100m背泳ぎで、石橋武士選手が100m平泳ぎでそれぞれ優勝する活躍を見せてくれました。
 県では、トップアスリートの育成と、それを通じたスポーツ文化の裾野の拡大に向け、今年度からSAGAスポーツピラミッド構想、通称SSP構想に取り組んでいます。佐賀ゆかりのアスリートを育成し、そのアスリートが次の世代を育てるという好循環を生み出すことを目標に、「スポーツエリートアカデミーSAGAを核とした人材育成」、「アスリートや指導者と県内企業のマッチングによる就職支援」、「競技力が佐賀に根付く練習環境の充実」の3分野に一体的に取り組んでまいります。また、佐賀県体育協会に新たに基金を設置し、行政、スポーツ関係者のみならず、経済界などからの多くの参加・協賛を得て、オール佐賀の志で長期的にSSP構想を推進する体制を整えてまいります。
 国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会のメイン会場となる総合運動場エリアについては、ここから新たな街づくりやライフスタイルが始まり、佐賀を光り輝かせていくという決意を込めて設置条例においてもその名称を「SAGAサンライズパーク」とすることといたしました。その整備については、平成31年度には、約8,400人収容のSAGAアリーナや国際大会仕様の水泳場SAGAアクアの新築工事などを予定しています。県民の夢や感動を生み出すスポーツの一大拠点を形成し、トップアスリートを目指してスポーツに打ち込む人、健康づくりでスポーツを楽しむ人など、様々なスポーツシーンを実現してまいります。そうすることで、県内のスポーツ文化をより一層広げ、SAGAアリーナを中心に、県内外から集まる新たな人々との交流を生み出し、このエリアが佐賀の未来を切り拓く「さが躍動」の象徴となるよう取り組んでまいります。
 続いて、最近の県政の主な動きについて御説明申し上げます。
 まず、九州佐賀国際空港については、1月23日に、全日空が夜間貨物便を3月31日から運休することを発表しました。全日空に対して、運休による地域の航空物流への影響を極力生じさせないよう要請するとともに、佐賀空港及び周辺地域の発展のため、東京便の6便化に向けて本県と一緒に努力していくことを確認いたしました。好調な国際線については、上海便、ソウル便、台北便に加えて、昨年12月から、ティーウェイ航空による「プサン便」が就航し、また、プログラムチャーター便として「テグ便」が就航しました。さらに、1月24日からは上海便が週4往復に増便され、LCCの拠点空港として利便性が向上しています。空港施設の機能強化については、昨年10月に駐機場の拡張工事が完了し、昨年秋に着工したターミナルビルの拡張は、平成32年度の完成を目指して着実に工事が進んでいます。佐賀空港が、九州におけるゲートウェイ空港として多くの方が訪れる交流の拠点となり、佐賀県だけでなく筑紫平野一帯の発展につながるよう、引き続き、路線充実や機能強化に取り組んでまいります。
 次に、日本のトップブランドを目指す「いちごさん」については、昨年12月に東京・大田市場へ初出荷し、JAさがの組合長と共にPRを行ったほか、1月には、東京・南青山に、いちごさんを使ったスイーツを提供する「GLAMPING CAFE 153 From SAGA」を期間限定でオープンするなど、大都市圏に重点を置いたプロモーションを集中的に展開しています。都内の百貨店では、早くも全国のトップブランドと肩を並べる評価をいただいており、生産者からは「栽培技術を一層高め品質を安定させることでトップブランドに育てたい」、「収量も多く農家にとって魅力的」といった意欲的な声をお聴きしています。引き続き、発信力のある高級ホテル・飲食店と連携したプロモーションや食品メーカーとのコラボレーションによる新商品開発などに取り組み「いちごさん」のブランドイメージの定着を図ってまいります。
 続きまして、提案事項について御説明申し上げます。
 まず、平成31年度当初予算案についてであります。
 国の平成31年度予算につきましては、消費税増収分を活用した幼児教育・保育の無償化や社会保障の充実といった全世代型社会保障制度への転換及び消費税率引上げによる経済への影響の平準化に向け、「臨時・特別の措置」として中小小売店などでの購入を対象にした消費者へのポイント還元や低所得・子育て世帯向けプレミアム付商品券の発行、防災・減災や国土強靭化の対策に取り組むことなどを中心に編成されています。
 また、平成31年度の地方財政につきましては、地方が人づくり革命の実現や地方創生の推進、防災・減災対策などに取り組みつつ、安定的に財政運営を行うことができるよう、地方交付税などの一般財源総額について、平成30年度地方財政計画の水準を上回る額が確保されました。
 本県においても、個人所得の増加や堅調な企業収益が見込まれることなどから、平成31年度当初予算案における県税収入は、リーマン・ショック後の予算額として最高額に達した昨年度とほぼ同額の約886億円を見込んでいます。一方、平成31年度末の県債残高が約7,014億円になるとともに、社会保障関係経費の増加も見込まれることから、引き続き、財政規律にも配意した財政運営に努めていくこととしています。
 その上で、平成31年度当初予算につきましては、「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」をさらに前に進めるため、これまで力を入れてきた「県民の命を守る」、「人の想いに寄り添う」、「子育てし大県を推進する」、「さがの未来につなげる」といった分野の施策を引き続き力強く推進し、これらの施策を支える基盤として「社会資本整備」を着実に進めてまいります。私は1期目の4年間は、「県民に佐賀の素晴らしさに気づいてほしい」、「日本一、子育てしたいと思える県にしたい」、「がんや交通事故から県民の命を守りたい」など、人への気持ちを込めたソフト事業に力点を置いて取り組んでまいりました。こうした、一人一人を大事にした人の想いに寄り添った事業は、2期目においても引き続き力を入れてまいります。その上で、人口減少やグローバル化など、大きな変革期にある今、世界に誇れる佐賀を創っていくためには、未来を見据えソフト事業とハード整備の効果を相まって発揮させていくことが重要になると考えています。本県は、維新博に続いて、2019さが総文の開催や九州新幹線西九州ルートの開業、国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会の開催など飛躍の好機を迎えています。この好機をこれからの佐賀県の発展につなげていくためのハード整備については、県財政への影響も踏まえて検討してまいりました。本県の農業振興の基盤づくりのため進めてきた国営土地改良事業の県負担額が、ピークであった平成20年度の約69億円から平成30年度は約22億円になり、さらに、平成40年度には約7億円にまで減少する見込みであります。財政の健全度を示す指標の一つである将来負担比率は良い方から全国4位と、本県の財政は比較的健全な状態が保たれております。急成長するアジアの中で大陸に近く、福岡都市圏に隣接するという地の利を生かして、交流を原動力に本県が伸びていくための基礎となる社会資本の整備に取り組む効果的なタイミングであると考えています。この機をとらえ、国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会をスポーツの祭典で終わらせるのではなく、大会が終わった後も、県民が文化、スポーツに親しみ、楽しむ風土を後世に引き継ぐとともに、新たな交流を生み出す拠点としてのSAGAサンライズパークの整備を進めてまいります。また、九州におけるゲートウェイ空港として、九州佐賀国際空港がさらに多くの方を受け入れるためのターミナルビルの拡張や、本県を訪れた方を県内各地へと導く有明海沿岸道路をはじめとする幹線道路ネットワークの整備についてもしっかりと進めてまいります。このように、限られた資源を重点的・効率的に配分することを強く意識しながら、佐賀の未来を見据え、真に県民の期待に応えるべく予算編成を行ったところです。
 この結果、平成31年度当初予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ

一般会計  4,488億5,800万円
特別会計  約2,013億1,500万円

となっており、一般会計におきましては、前年度当初予算と比較すると、増加要因として、消費税率引上げに伴う国の「臨時・特別の措置」を活用した経済対策の皆増、SAGAサンライズパーク整備や社会保障関係経費の増など、一方、減少要因として、公債費や制度金融の貸付金の減、維新博事業費の皆減などがあり、その結果、全体額としては約2.7%増となっています。
 次に、当初予算案の主な内容について、分野ごとに御説明申し上げます。
 まず、「県民の命を守る」予算についてであります。
 災害発生時の初動や人命救助に対応する消防防災ヘリコプターの導入については、平成32年度末の運航開始を目指して九州佐賀国際空港の隣接地に格納庫などの拠点施設を整備することとしており、平成31年度は、駐機エプロン及び誘導路の造成工事に着手してまいります。
 がん対策については、がんによる死亡率が全国ワーストレベルにある中、特に子宮がんは平成29年にワーストワンとなるなど、その対策は喫緊の課題となっています。要因のほとんどがヒトパピローマウイルスである子宮頸がんについては、市町が実施しているがん検診の際にウイルス検査を併用すれば異常発見率がほぼ100%となることが期待できます。このため全国初の取組として、子宮頸がんの罹患率が高い30歳から44歳までの県内女性のウイルス検査費用を無料にすることで子宮頸がんの早期発見を促してまいります。
 交通安全・事故対策については、平成30年における本県の人身交通事故発生件数は、県、市町、警察、交通安全指導員など多くの関係者が総力を挙げて取り組んだ結果、前年比で15.4パーセントの減少となりました。しかしながら、人口10万人当たりの発生件数は依然として全国ワーストレベルにあり、悲しい交通事故が続いております。このため、県民への交通安全の意識改革を促す「SAGA BLUE PROJECT」を本格的に展開してまいります。交差点のブルーでのカラー舗装化を引き続き進めるとともに、県民の皆様が、ブルーの交差点の意味を意識し、交通事故を自らの事として考えるような広報や啓発イベントを通じ、県民一人一人が大切な命を守るという強い想いを持って交通事故防止に取り組んでいただけるよう努めてまいります。
 次に、「人の想いに寄り添う」予算について申し上げます。
 自然災害による被災者の生活再建を支える取組については、国の制度では、被災した家屋がある市町の人口規模によって、一定数以上の住宅が全壊していなければ救済されないため、同じ災害で住宅が全壊しても、居住地によって救済される場合と救済されない場合がありました。そこで、被災家屋の数や居住地に関わらず、被災した全ての住宅の再建を支援できるよう、国の制度を補完する県独自の「被災者生活再建支援制度」を創設することといたしました。これにより、自治体内での住宅の全壊や大規模半壊が1世帯であっても支援できるようになります。なお、平成30年7月豪雨の被災者も支援の対象となるよう措置しております。
 視覚障害者に点字図書や録音図書の貸出などを通じ情報を提供している県立点字図書館については、老朽化が進んでいることから現在地で建て替えることとしています。建て替えにあわせて機能の充実を図るため、視覚障害者やボランティアの方などから御意見を伺ってまいりました。その結果、新しい施設においては、身体障害者手帳を持つ視覚障害者に加えて、高齢者など本を読むことが難しい方などにも利用していただけるようサービスを提供してまいります。また、新たな機能として、利用者のニーズに応じた各種の相談窓口を紹介するコーディネーターを配置するほか、視覚障害者やその家族が集う場、県民へ視覚障害への理解を広げる場として活用できる交流スペースを設置することとしています。さらに、県や市町の公共図書館とネットワークを結び、利用者の住いに近い公共図書館を通じ貸し出しや返却ができる仕組みを構築してまいります。平成31年度は、基本設計・実施設計のほか、現在の建物の解体を予定しており、平成33年度の開館に向けて整備を進めてまいります。
 高齢者や障害者、子育て中の方など、人に優しい街づくりに向けた取組については、誰もが安心して外出できる優しいまちのスタイルを「さがすたいる」として広げてまいります。自閉症の方にはどのように見えているのかを体感できるプログラムなどを通じ、困りごとを抱える方への理解を広げるとともに、店舗のバリアフリー化、子供連れが利用しやすいキッズスペースの整備など、人に優しい街づくりにつながる環境整備を支援してまいります。
 また、全ての人に優しい移動手段の確保に向けた取組については、車いすのまま乗車できるスロープやゆとりのある車内空間を確保するなどの配慮がされたユニバーサルデザインタクシーの導入を促すため、事業者を対象に車両の導入経費を助成することといたしました。これにより車いす利用者だけでなく、高齢者、ベビーカー利用の親子、大きな荷物を持った観光客など誰もが安心して利用できるタクシーの普及を図ってまいります。
 次に、「子育てし大県を推進する」予算について申し上げます。
 妊娠はするものの、その後、流産や死産を繰り返すことは大変辛いことです。そうした気持ちに寄り添っていきたいという想いから、不育症に悩んでおられる夫婦が、正しい知識を得て、適切な検査と治療を受けることができるよう専門医による個別相談会などを開催するとともに、不育症の検査及び治療にかかる費用を助成することといたしました。
 保育所や認定こども園での待機児童対策については、保育士の働く環境を良くして保育の質を上げていくことに力を入れてまいります。このため、保育施設が人材育成や長時間勤務の解消などに取り組むことに対する専門家からの診断・助言や、資格を有しながらも保育士として働かれていない、いわゆる潜在保育士の方々が保育の現場で働き始める際の不安を解消するための保育施設でのトライアル雇用を支援してまいります。こうした取組により、平成31年度は新たに100名の保育士を確保し、保育士の職場定着を目指すことで安心して保育サービスを利用できる環境を整えてまいります。
 次に、「さがの未来につなげる」予算について申し上げます。
 人口に占める15歳未満の子供の割合が全国で3番目に高いという本県の強みを生かす取組については、若者の県外流出に歯止めをかけ、地域経済の担い手として活躍できる社会を創出するため、高校生の県内就職の促進に力を入れてまいります。県内企業や働く現場を知る取組として、高校生、保護者を対象にした合同企業説明会や高校生と建設業の若手との意見交換会を開催してまいります。また、新たに工業高校などに配置する県内就職支援員による高校生への企業情報の提供や就職相談への対応、さらには佐賀で働くことの魅力を伝えるセミナーの開催などを通じ、高校生が佐賀で働き夢をかなえていけるよう後押ししてまいります。
 介護人材を確保する取組については、介護人材を養成する高校に助成することで、介護の資格取得を目指す高校生の実習費などの経費負担をなくすこととしています。これにより、将来の本県の介護現場の中心を担う人材の育成を支援してまいります。
 高校卒業後の進学先の一つである専修学校の専門課程、いわゆる専門学校は、県内の産業を支える職業人材の育成・確保に重要な役割を果たしてます。このため、専門学校を対象にした運営費補助制度の中に、さらなる県内就職率の向上や産業界との連携促進、人材育成力の向上を促す仕組みを取り入れることとしました。これに加えて専門学校の魅力を発信することで、県内の専門学校を選ぶ生徒が増え、教育内容が充実し、さらに生徒に選ばれるという好循環を創り出してまいります。また、専修学校の高等課程は、高校中退者や不登校経験者などに高校と同等の教育機会を提供しています。このため、学校に行きたいという子供たちの希望をかなえ、生きる力、前に進む力を育てる「学びのセーフティネット」としての機能の充実を図るため、県内の私立高校に準じた支援となるよう運営費補助を増額することといたしました。
 ものづくりを評価し、若者が誇りと自信を持って従事する流れを生み出す取組については、知事就任1年目に「ものづくり人財創造基金」を設置し、「SAGAものスゴフェスタ」を年々充実させるなど、ものづくりの素晴らしさや楽しさを広く発信してまいりました。こうした取組により、ものづくり産業全体の認知度は高まっております。さらに、直面する人口減少やグローバル化、AI、IoT技術の進展など様々な環境変化に対応していくため、新たに「SAGAものづくり強靱化プロジェクト」を展開することとし、ものづくり産業で働く人を増やす取組や生産性を高める取組に力を入れ、ものづくり産業の持続的な発展を支えてまいります。
 未来を切り開く農林水産業の取組については、所得の向上が期待される園芸農業の振興を図り「稼げる農業」の実現を図ってまいります。収量増加や栽培面積の拡大、販売額の向上を目指して産地毎の園芸振興計画の策定を促し、計画の実現に向けた産地の取り組みに対する技術指導を行うほか、新規就農や生産規模の拡大に向けたハウスの整備、農業機械の導入などを支援することとしています。また、「いちごさん」のさらなる収量向上と高品質化に向けた生産技術の確立や柑橘類の新品種「佐賀果試35号」の農家への普及、キャベツなどの露地野菜の新たな産地づくりなどを推進してまいります。こうした取組を通じて、平成29年に629億円であった本県の園芸農業の産出額を約10年で888億円へ拡大することを目指し、JAや市町とも連携して「さが園芸888(はちはちはち)運動」として展開してまいります。
 農林業の担い手不足や耕作放棄地の増加が深刻化している山での営みを支える取組については、園芸用ハウスや肥育素牛の生産施設の整備、省力化のための機械の導入、及び林業における下草刈り作業などに対する補助率のかさ上げなどを行う「さがの元気な中山間地域づくり対策」を実施し、山での農業、林業を守る取組に力を入れてまいります。
 農林水産業の担い手の高齢化や労働力不足、熟練者の技術の伝承などの課題に対応するため、AIやIoTを活用する取組については、「さが版農林水産業スマート化事業」を実施することといたしました。大規模水田における自動走行トラクターなどを活用した生産技術や、植林した現場におけるドローンでの薬剤散布による下草刈り作業の省力化技術などの実証に取り組みます。また、玄海地区のいか釣りなどを対象に、水温、塩分、潮流などの海況予報情報を提供するシステムの開発などを進めてまいります。こうした新技術の開発や実証により、本県から新しい農林水産業の形を生み出してまいります。
 次に、地域資源を磨き上げ新たなビジネスを創出する取組についてであります。
 本県には、多様な魅力にあふれる農林水産物や世界に誇れる伊万里・有田焼など、本物の地域資源があります。その価値は、維新博などで料理人やクリエーターから高く評価されています。そこで、気鋭の料理人が集う世界料理学会の開催などを通じ、食材と器と料理人のマッチングを行い地域資源を生かした本県ならではのビジネス化を支援してまいります。こうした取組を、食材と器と料理人の織りなす「SAGAマリアージュ」として打ち出し、新たな価値を創造してまいります。
 次に、歩くライフスタイルへの転換を促す取組についてであります。
 本県が将来にわたって、交流が盛んで魅力のある地域であるために、「人」が主役の歩く社会づくり、そして、歩きたくなる街づくりが必要だと考えています。人が、街や地域を歩くことで、交流や賑わいが生まれ、年齢を問わず健康を保てる効果も期待されます。こうした好循環を生み出していくため、庁内に推進本部を設置し、取組の第一歩として、県民の皆様が歩くライフスタイルを取り入れていくことを促す啓発イベントやウォーキングアプリを使った歩く仕掛けづくり、子供たちを対象にした公共交通機関の利用体験などに取り組んでまいります。
 次に、佐賀を支える社会資本整備については、九州佐賀国際空港の利用者数、伊万里港のコンテナ貨物取扱量、唐津港へのクルーズ船の寄港数が、それぞれ過去最高となるなど、九州におけるゲートウェイとしての本県の役割が高まっており、引き続き、世界に開かれた空港、港湾としての機能強化に力を入れてまいります。こうした拠点と主要都市を結ぶとともに、地域資源を生かした広域的な経済活動の促進、災害発生時の避難や救急搬送など「命をつなぐ道」としての役割を担う幹線道路ネットワークについては、有明海沿岸道路、佐賀唐津道路、西九州自動車道及び国道498号の整備を推進してまいります。特に、佐賀空港の利用圏域の拡大や佐賀県医療センター好生館への救急搬送の時間短縮などを図るため、本県を横断する有明海沿岸道路と縦断する佐賀唐津道路が接続するエリア「Tゾーン」を重点的に整備してまいります。今後も、人々の暮らしを守るとともに、人やモノの交流を促進し地域の活性化を図っていくため、本県の発展と未来へ飛躍する基盤となる社会資本の整備を着実に推進してまいります。
 次に、企業会計として運営しております工業用水道については、収益的支出約4億3,400万円、資本的支出約4億700万円となっています。
 次に、平成30年度補正予算案の概要について申し上げます。
 今回の補正予算の編成に当たりましては、事業の執行状況を精査し、不用額を減額補正するとともに、国の補正予算の認証見込額を計上するなど、11月補正後の情勢の推移に対応することといたしました。
 今回提案いたしました平成30年度2月補正予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ

一般会計 減額約17億6,400万円
特別会計 減額約36億7,000万円

となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、

一般会計  約4,513億5,800万円
特別会計  約1,909億  200万円

となっています。
 次に、予算外議案といたしましては、条例議案として、「SAGAサンライズパーク条例(案)」など26件、条例外議案として「国営土地改良事業に対する市町の負担について」など8件、合わせて34件となっています。それぞれの議案については、提案理由を記載していますので説明を省略させていただきます。
 明治維新から150年を記念して開催した維新博は、「その時、佐賀は世界を見ていた。そして今、佐賀は未来を見ている。」がコンセプトでした。この考えをこれからも大切にし、世界を、そして未来を見据え、佐賀への誇りをエネルギーに、県民が志を持って歩んでいく佐賀を創り上げてまいります。
 総務省が1月に発表した人口移動報告によると、佐賀県からの転出超過は平成27年以降3年連続で減少し、平成30年は前年比で610人改善しており、これを人口10万人当たりで見ると全都道府県で2番目に高い改善となります。このことは指標の一つではありますが、都市部に近いながらも自然豊かな中で暮らせるという佐賀の価値に多くの方が気付いてきていることの表れではないでしょうか。さらに、本県は人口密度が全国で16番目、子供の割合が3番目に高いという潜在力があります。このような本県の現状を踏まえると、そう遠くない未来、佐賀がアジア圏域の中で連携を深める時代を迎え、佐賀だからこそ持っている、人づくりやものづくりで日本をけん引してきた歴史、葉隠に代表される和の文化、伊万里・有田焼などの伝統産業、浮立や狂言などの伝承芸能、佐賀牛や佐賀海苔などの食、そして、三夜待など人と人の結びつきといったものが世界基準の価値として評価されている姿が見えてきます。
 維新博のメインパビリオン第3場では、150年後の今を生きる人々へ向けてメッセージが送られていました。
 「変わらぬままであろうあの佐賀の空へ枝を広げる木々に、どうかあなたたちが水を与え続けていただきたい。そして願わくば、新たな種をまいていただきたい。」
 この言葉には、「これから生まれ、育つ若者たち、そして県民の皆さんが、未来に向かって『志』を持って生きてほしい。」という願いが込められています。県民一人一人が、「自分は何をしたいのか」、「この世の中に何を打ち出していくのか」という強い志と佐賀への誇りを胸に、様々な分野で輝くこと、そして、その志一つ一つが連なることで、佐賀県は豊かに枝葉を広げた楠の大樹のように成長することができると考えています。そうした「佐賀の時代」を、県議会議員の皆様、県民の皆様と共に創り出してまいります。
 以上、今回提案いたしました議案などについて御説明申し上げました。
 よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。