「初心忘るべからず」
何事においても、始めた頃の謙虚で真剣な気持ちを持ち続けていかねばならないという意味のこのことわざを、皆さんも聞いたことがあるのではないかと思います。
この言葉を残した世阿弥は、室町時代に伝統芸能としての能楽を一つのかたちにした人で、どのようにして芸を上達させるのかについて、たくさんの文章を残しています。
「守破離(しゅはり)」
これは、剣道の修行の段階を示す言葉としてよく使われるものです。まずは先生の言うことを「守」って型をつくり、そして、自分に合ったやり方を見つけて型を「破」る。最終的に自分自身と技を理解して型から「離」れる。皆さんの中にもこの言葉を知っている人は多いかもしれません。
この言葉も、実は世阿弥の言葉だという説があります。剣道と能は、上達するまでに厳しい修行が必要になります。どちらも日本の伝統を受け継ぐものとして、一本筋の通った考え方があるというところに、私は、伝統文化の素晴らしさを感じています。
皆さんは、先生の言葉をよく聞き、一所懸命練習をした結果、この大麻旗という歴史ある大会に出場されることになりました。この大会を通して、そして、日々の生活や練習の中で、自分と向き合ってもう一度見つめなおしてみてください。
皆さんの未来は、人に与えられるものではなく、自分自身の中にあるはずですから。
最後になりますが、この大会で、日頃の練習の成果を遺憾なく発揮し、皆さんにとって意義ある大会となりますようお祈りして、私のあいさつといたします。