本日、佐賀県消防殉職者慰霊祭が執り行われるにあたり、佐賀県を代表いたしまして、謹んで追悼のことばを申し上げます。
始めに、今年七月に発生した九州北部豪雨災害で、ただちに被災地に駆けつけ、行方不明者の捜索や救助活動に従事されるなど、消防職員の皆様が地域住民の安全・安心のため尽力されましたことに、敬意を表しますとともに、心から感謝申し上げます。
毎年、各地で様々な災害が発生しています。昨年四月に発生した熊本地震や先程申し上げました九州北部豪雨では、多くの尊い命が失われました。中には、警戒活動中に土砂崩れに巻き込まれた消防団員もおられたと聞きました。地域住民の安全を守るという強い使命感をもって活動されている最中に犠牲となられたことは、残念でなりません。
佐賀県において殉職された方々も、人の命を守りたいという思いを胸に、懸命に消火活動や救助活動にあたられたことと思います。その使命感と責任感を誇りに思うと同時に、大切な御家族を失われた御遺族の悲しみ、無念さを思うと、胸が痛みます。御遺族の方々に対しまして、心からお悔やみを申し上げます。
ある教官が訓練を受ける消防隊員に語った言葉が、今も心に残っています。
「自然の摂理は、無知なるものを憐れむことはない」
私たち人間は、自然の圧倒的な力を前に、非力であることを知っています。しかし、ひとたび火災や自然災害が起きれば、消防職員や消防団員の皆様は、自然の脅威に立ち向かわなくてはなりません。そうした中で人の命を救うためには、様々な知識や経験といった備えが重要であることに、あらためて気付かされます。
自然災害が多いといわれるわが国では、砂防設備の設置や河川整備など、様々な災害への備えを行っていますが、近年の局地的な豪雨の増加などにより、大きな被害を受けることも少なくありません。
こうした時、人々が最も頼りにするのは、厳しい訓練を積み、地域のことを熟知している消防職員や消防団員の皆様なのです。
佐賀県は、長きにわたり消防団員の組織率全国一位です。関係者の皆様の弛まぬ努力と、何より自分たちの住むまちを大切にしたいという人々の強い思いが、大きな力になっているのだと思います。
自分たちの地域を自分たちの力で守り抜くという殉職された三十一名の皆様の思いは、今日の消防職員、消防団員にしっかりと引き継がれています。私たちは、これからもその思いを受け継ぎ、安全・安心なまちづくりに力を尽くしてまいります。
ここに、あらためて御霊の安らかならんことをお祈り申し上げるとともに、御遺族の方々の御平安を切に祈念いたしまして、私の追悼のことばといたします。