記者会見

●発表項目:経済財政諮問会議における地方交付税改革の議論に対する意見
 それでは、ただいまから11月の定例記者会見を始めます。
 まず最初に、こちらからの発表事項でありますけれども、経済財政諮問会議における地方交付税改革の議論に対する意見を公表させていただきます。
 現在、三位一体の改革が進められておりますが、その中で、先般、谷垣財務大臣から経済財政諮問会議において地方財政に関するいろんな意見の開陳がございました。
 私どもとしては、その大臣の意見の内容に非常に違和感を覚えておりまして、いや違和感どころではなく、非常に憤りを覚えておりまして、あえて事実を曲げて、財務省側にとっていいように誘導しようとしているのは真に残念だと思っています。地方財政にはさまざまな問題もありますし、課題もございます。自治体がきちんと解決をしなければならない問題もたくさんあるということは私どもも十分わかっているつもりであります。そういう指摘をきちんとしていただくならまだしも、あえて事実を曲げるような形で発表されたということは大変残念に思っておりまして、それについての意見を個々に発表させていただきます。
 一つが、地方財政計画における決算乖離についてでありまして、谷垣財務大臣によれば、投資的経費と一般行政経費において、投資的経費、つまりこれは単独の公共事業といいましょうか、建設事業のことでありますけれども、それは17.4兆円措置をしているにもかかわらず、実際は11.4兆円しか使っていなくて、6兆円分余っているではないかということであります。
 一方で、一般行政経費については、計画は20兆円しかないのに27.6兆円使っていて、 7.6兆円も余計に使っているという指摘があるわけでございます。
 それで、大臣の主張によれば、いわばこういう建設事業をやるべきところがソフト事業に流用されているということを指摘しておりまして、例えば、ケーブルテレビの加入料の補助だとか、ペットの不妊手術だとか、お見合い会への報奨金のようなものがこれに使われているのだということを主張していまして、この 7.6兆円は当然のことながら是正すべきで、20兆円まで下げるべきだということをおっしゃっているようであります。
 また、そういったことと併せまして、だから、地方交付税を抑制しなくちゃいけないんだということで、 7.8兆円抑制をしたらどうかということを言っておられます。それが、実際に実行されますと、お手元の資料にありますように、佐賀県としては35%の交付税の減、県内市町村としては29%の減ということになってまいります。
 まず、この議論のおかしいのは、2ページ目を見ていただきますと、一般行政経費が足りないのは、それはケーブルテレビの加入料補助みたいなものに使っているからだという指摘がなされていますが、ケーブルテレビの加入料補助を地財計画に計上されている経費として支出したかどうかという根拠は全くありません。
 ご承知のように、地方財政というのは、地方自治体がやるすべての事業を国が財政措置をするということにはなっておりませんで、どのような自治体でもやるべきであろうという費用については交付税で措置をするということになっているわけでありますけれども、その団体独特の事業、また、その団体が独自にやっていきたい事業については、それは自分の財源で賄いなさいということで、自分の独自の財源でやるということになっているわけであります。
 例えば、市町村であれば、市町村に入ってくる税金の25%は、そういう独自の事業をやるための財源として確保されております。ここに財務大臣が上げられたような経費は、お金に色がついておりませんので、どういう財源で実施されたかわかりませんが、私が見るところ、これは地方財政計画上に措置されているものではなくて、自分たちの財源で行われたのだろうと思っております。それを地方財政計画上に載っている経費のような言い方をされるのは、いささかおかしいと思っておりまして、そうしたことは、この議論としては合わないと思っているところでございます。
 一般行政経費が何でこれだけ多いかということは、非常に経費が細かく分かれているので、大きな分析は難しいところもありますが、私どもが佐賀県内について分析をしたところでは、例えば、乳幼児医療費の市町村によっての助成であるとか、また、土地改良事業を行った場合に、当時行おうとしたときに示された計画と実際とでは、例えば、担い手の数であるとか、反収であるとかが大きく乖離していて、それをカバーするために市町村が独自に助成しているということであるとか、そういったものに使われている例が多いと認識をしています。
 そういったことに使われていることが全く無駄だという指摘をされているのであれば、私はそれはやや違うのではないかという印象を持っておりまして、投資的経費が余っている、一般行政経費が足らない、この状況を見れば、一般的には一般行政経費を増やして投資的経費を減らしていくというようにすべきではないかと思うわけなのであります。
 2ページの下の方に、医療費の助成であるとか、土地改良費の助成であるとか、書いていっております。このような経費を皆様はご覧になって、これはやり過ぎではないかとかいう経費があれば、またそこはご指摘をいただきたいと思いますし、いずれにしても厳しい財政事情の中では、こうした自治体独自の取り組みも見直していかざるを得ないという部分もありますけれども、少なくとも、こうしたことを挙げずに、あえて地方財政計画で保障されていないであろうとしか思われない経費を自治体による無駄遣いの例として挙げているということについて、非常におかしいと思っているところでございます。
 また、3ページになりますけれども、そこに書いているように、私どもとして今年始めたような、例えば、トライアル発注のようなものであるとか、宅老所の開設支援であるとか、放課後児童クラブを全県に普及させていくための経費であるとか、こういったものについても、財務省風に言えば無駄な経費ということになるのであると思っておりまして、本当にそれはそうなのかなと思っております。私どもが判断するのではなく、むしろ、世間の方に見ていただければと思っております。
 ちなみに、財務大臣が疑問だと指摘したという事例について、市町村の実施状況は、敬老の年金が12団体、ケーブルテレビ加入料の補助は1団体、温泉入浴料の補助は2団体、このような形になっております。これを見ていただいてもわかるように、財務大臣の提案は、あたかも全国の自治体がこのようなことをやっているかのようなことをおっしゃっているようでありまして、世間をミスリードするものであると考えております。
 また、国自身が一層の歳出削減の努力をすべきであるとも思っております。国の一般会計と地方財政計画、これはいわば地方の予算とも言うべきものでありますが、その中核を占める地方交付税、そして、佐賀県の予算をそれぞれここ数年間の推移で並べてみました。
 平成13年度と比べてみますと、国の一般会計は 0.7%しか減少しておりませんが、地方財政計画は 5.2%も減少しております。また、地方交付税に至りましては16.7%減少しております。佐賀県の予算をとりましても10.4%減少しております。こうした数字を見ていただいたらわかりますように、地方の削減努力と比べて国の歳出削減努力が不足していると言えるのではないかと考えております。
 先般、行財政改革緊急プログラムを県としても発表させていただきましたし、市町村においてもさまざまな意味で行政改革が進行しております。こうしたことについては、住民の意向を十分踏まえながら、引き続き見直しに努力していくことが必要であると思っております。
 給与水準が昔からよく指摘をされておりましたが、今回、私どもで調べたところによれば、国で措置されている佐賀県内の給与の総額と、実際に支給されている給与総額を比べてみると、実際に支給されている給与総額の方が低いという数字が出ております。ラスパイレス指数などの高い団体のみが強調されておりますけれども、低い団体も多数あるのが事実でありまして、給与総額で見た場合には、国が保障した財源がむしろ給与関係経費としては余っているような状況になっている。これは、いわば給与関係の部分を節減してでも、他の一般的な経費に回すという自治体の努力の現れであると思っているところでございます。
 最後、4ページになりますけれども、また、「骨太の基本方針2004」というものが閣議決定をされております。その中で、地方交付税については、「地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保する」ということが決められております。そうでありながら、一方で、財務大臣のように2年間かけて7兆円、8兆円減らしていくということをおっしゃっているというのは、この基本方針2004の閣議決定に反するものであると考えておりまして、総理の方から要請を受けて、小異を捨てて大同について、国庫補助負担金等に対する改革案をまとめた地方六団体と国との信頼関係を大きく損なうものであると考えております。
 また、地方交付税は、地方の固有財源でありまして、国の一般歳出と同列で論じられるものではありません。これは、過去の何次にもわたる内閣総理大臣の国会答弁においても明らかでありまして、一番最近では宮沢総理大臣が、地方交付税は地方の固有財源であるということを明確に本会議で答弁をしていただいております。にもかかわらず、あたかも国の一般歳出と同じように交付税のあり方を議論することは、憲法で保障された地方自治の本旨からしても疑問があると思っているところでございます。
 私ども佐賀県としては、このように問題点を指摘させていただいた上で、既に基本方針2004で閣議決定という国家の意思決定としては最も重いやり方で決定された地方団体の安定的な財源運営に必要な一般財源の総額確保を求めていく所存でございます。


記者会見トップへ 平成16年11月1日記事トップへ

トップページへ

Copyright 2004 Saga Prefecture. All rights reserved.
このサイト内の文章や画像を無断転載することを禁じます。