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令和2年 9月8日
令和2年9月定例県議会 知事提案事項説明

 令和2年9月定例県議会の開会に当たり、最近の動き、提案事項などについて御説明申し上げます。
 まず、新型コロナウイルス感染症対策について申し上げます。
 佐賀県では、3月13日に初めて感染者が確認されて以降、現場を大切に、先手先手でという考えの下、「佐賀方式」で対応してまいりました。新たな感染が確認される度に感染経路の特定に努め、当初から、濃厚接触者のみならず接触者を幅広くとらえて「念のため検査」として実施してまいりました。感染が確認された場合は、他県では自宅療養という対応もなされている中、本県では感染した全ての方を対象に、速やかな入院又は県が用意したホテルでの療養を徹底しております。また、県と医療関係者が連携して医療提供体制の強化に取り組む「プロジェクトM」の下で、患者の症状に応じて入院先を調整するオペレーションを行っています。こうした「佐賀方式」によって一つ一つ丁寧に対応できているのも、対策に一丸となって協力いただいている県民の皆様、そして、感染拡大の長期化で負担が増す中、大切な医療現場を守り抜いていただいている医療従事者の皆様のお力によるものと考えています。改めて、感謝申し上げたいと思います。
 本県における感染者の状況は、9月7日までの累計で241人となっています。3月13日から5月4日までの53日間は45人でした。5月5日以降は76日間新たな感染はなかったものの、7月20日から9月7日までの50日間では194人の感染が確認されています。そのほとんどは軽症者や無症状者であるものの、感染が広がりやすいということが第2波の特徴だと考えています。また、7月の感染者は、8割以上が20代以下の若者で、多くが福岡市の音楽や踊りを楽しむクラブ、飲食店の利用者というものでした。7月末頃からは、県内の接待を伴う飲食店、職場や家庭内での感染も発生し、幅広い年齢層に広がりました。こうした中、本県においては、「プロジェクトM」によって必要な医療提供体制を一貫して整えてまいりました。9月7日の時点では、確保した病床281床に対し入院患者は6人、軽症や無症状の方のためのホテルは230室を確保しており、病床は十分に余裕がある状況です。
 また、検査体制については、現在、一日約200件のPCR検査が可能な衛生薬業センターを中心に対応しており、今後300件に対応できるまで強化してまいります。さらに、発熱患者の増加に備え、地域の医療機関でもPCR検査の導入や、より簡易に検査ができる抗原検査の実施に向けた調整を進めており、迅速な治療や感染拡大の防止につなげてまいります。
 8月28日には、政府において、季節性インフルエンザの流行期も見据えた今後の取組として、感染症法に基づく無症状者や軽症者への入院勧告の運用見直し、検査体制の拡充などの方針が示されました。今後の国の動きも注視しながら、感染リスクと向き合い、強い使命感を持って対応いただいている医療従事者の皆様を支えるとともに、感染症から県民の皆様を守る取組に全力を注いでまいります。
 これまでの感染事例では、感染した方や御家族、関係者などの個人を特定しようとする動きや差別的な扱い、誹謗中傷に関する相談が寄せられています。このような行為は絶対に避けていただきたいと思います。そうすることが、感染が疑われる方が躊躇せず手を挙げ、感染の広がりを防ぐことにもつながります。県民の皆様、一人一人が人の痛みに敏感で、お互いを大切にする慈しみ合う佐賀県を、これからも守り続けていきましょう。
 次に、新型コロナウイルス感染症対策としての事業者支援について申し上げます。
 対策に当たっては、「現場」を大切にし、少しでも前を向く力にしていただければという想いで、本県独自の支援を考え実行してまいりました。全国に先駆けて3月に創設した中小企業・小規模事業者を対象とした「3年間無利子の融資制度」や、店舗単位で支援する「佐賀型店舗休業支援金」をはじめ、ホテル・旅館、観光バス・タクシー、伝統的地場産業への支援金を創設するなど、十分な額とは言えないかもしれませんが、気持ちのこもった支援を心掛けてまいりました。事業者の方々からは、「4月、5月は売上が半分以上減少したが、6月以降は少しずつ戻ってきている」という声もありました。しかし、7月以降、感染確認が続いたことで、「再び客足が鈍くなってきた」という声をお聴きしています。無利子融資の申し込みが、8月末の時点で約6,900件、約1,450億円に上っていることを考えても、多くの事業者の皆様は、先の見えない不安の中で、この苦難を乗り越え、いかにして活路を見い出していくのか模索されている状況にあると考えています。
 移動を自粛する傾向がある中、利用が落ち込んでいる県内観光を支える取組として、県内や九州域内の方々の誘客に力を入れており、7月からは「佐賀支え愛宿泊キャンペーン」を展開しています。厳しい中にも、個人客を中心に週末は予約が入り始めたという声がある一方で、平日は厳しい状況が続いているとお聴きしたことから、1万人に県産品が当たる「佐賀支え愛平日宿泊運動」を8月にスタートしています。さらに、この秋からは、宿泊とアクティビティ体験の割引をセットにした第2弾の支え愛宿泊キャンペーンを実施することとし、今議会に必要な予算を提案いたしております。影響が長期化する中、感染拡大の防止と社会経済活動を両立していく必要があります。私は、県民の皆様に現状を分かりやすく伝えるため「巣ごもり局面」と「支え愛活動局面」というスイッチの切り替えを意識していただくようお願いしています。県内の感染は落ち着いている状況であり、今は「支え愛活動局面」です。県民の皆様が、感染防止対策を取りながら、県内で買い物や食事をしていただく、宿泊を楽しんでいただくなど、地元消費をすることで事業者や生産者の方々を支えていただきたいと思います。
 次に、SSP杯について申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症の影響により高校総体や夏の甲子園が中止となり、高校生アスリートにとって大切な大会ができなくなったことは、とても辛いものでした。特に、最後の大会を失った高校3年生のことを想い、次の一歩を踏み出す節目となる大会を何とか開催したいとの一心で、集大成の場となる大会を「SSP杯」として開催することを全国に先駆けて決定いたしました。6月から8月にかけて開催した31競技33種目では、残り2秒での逆転優勝や延長13回4時間を超える決勝戦もあれば、昨年の雪辱を見事に果たしたチームや交通事故の後遺症を乗り越えて自己ベストで優勝をつかみ取った選手の姿もありました。私自身、できる限り試合会場に出向き、高校生が全力を出し切る姿、そして試合後の笑顔や涙に大きな感動をもらいました。高校生たちから寄せられた、「3年生になって大会が一つもないまま引退と思っていただけに感謝の気持ちでいっぱい」、「すがすがしい気持ちで区切りをつけることができた」、「次は、自分たちが未来の子供たちを応援することのできる大人になっていきたい」といった声に、大会を開催して良かったという想いを強くいたしました。試合の配信などで大会を盛り上げていただいた新聞、テレビ、そしてケーブルテレビをはじめ、大会の成功に協力していただいた全ての皆様に心から感謝申し上げます。
 次に、中学生アスリートが県内の高校を選び、成長していくための支援について申し上げます。
 私は、中学生アスリートとして実績を積んだ将来有望な子供たちが、それぞれに理由があるとは思いますが、県外の高校に進学してしまっていることを、とても残念に感じています。中学3年生が県内の高校に進学し、競技を続けてもらえるよう、県教育委員会と共に取組を強化してまいります。競技団体などと連携した宿舎補助制度の創設や、今後の成長が期待できる中学生・高校生を認定し伴走型で支援するSSPホープアスリートの拡充、県立高校のスポーツ推進指定校の更なる活用などを進めてまいります。とりわけ、高校進学時の県外流出が顕著な野球については、7月に、県や高野連、中体連などで組織する「佐賀県野球育成・強化プロジェクト委員会」を発足しています。中学3年生の選抜チームの結成や、高校との交流練習会の開催など、中学・高校の関係者が連携して育成に力を入れることで、有望選手が県内に留まり、活躍できる環境を整えてまいります。
 次に、頻発する豪雨災害への対応について申し上げます。
 今年7月の豪雨では、全国の死者、行方不明者が熊本県を中心に86名に上り、河川の氾濫などにより甚大な被害が発生しています。犠牲となられた方々に謹んで哀悼の意を表し、御冥福をお祈りいたしますとともに、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。本県においては、有明海沿岸道路での盛土部分の沈下による路面のひび割れ、河川の護岸や農地の損壊、有明海沿岸への流木やゴミの漂着、早津江川の戸ヶ里漁港付近での土砂の堆積などの被害が発生しています。有明海沿岸道路は、ひび割れが発生した久保田-芦刈インター間を全面通行止めとしており、今月中旬の通行再開を目指して現在復旧工事を進めています。有明海では、漁業への影響を最小限に食い止めるため、流木やゴミの早期の撤去に取り組んでいます。早津江川に堆積した土砂については、有明海漁協や地元支所の皆様から直接要望をお聞きし、今月中旬から本格化するノリ養殖の作業に影響が出ないよう、国や佐賀市と連携し、浚渫船を使った除去作業を行っています。こうした対応も含め、今議会においては、農地や林地、公共土木施設の災害復旧などに必要な予算として約69億円を提案いたしております。一日も早く地元の皆様の不安を取り除いていけるよう、早期の事業着手を図り、被災箇所の復旧を進めてまいります。
 なお、昨年8月に発生した「令和元年佐賀豪雨災害」への対応に当たっては、復旧・復興推進本部会議の開催を重ねながら、市町やCSOなど多くの方々と連携し、全庁を挙げて取り組んでまいりました。これまでに、住宅の応急修理や油が流出した農地の復旧は完了し、農地、林地や道路、河川等の被災箇所についても、順次、復旧に向けた工事や手続が進んでいます。こうしたことから、本部体制から各部署が責任を持って対応する体制に移行し、引き続き、被災者に寄り添って対応してまいります。
 続きまして、当面の諸課題への対処方針について申し上げます。
 まず、原子力発電についてです。
 九州電力から事前了解願いが提出されていた玄海原子力発電所の使用済燃料貯蔵プールの保管容量を増やす「リラッキング」及び発電所の更なる安全性、信頼性の向上を図る「3系統目の常設直流電源設備の設置」については、佐賀県原子力安全専門部会を開催し、そこでの議論も踏まえて原子力規制庁や九州電力に聞き取りを行ってまいりました。その結果、いずれについても、法令上の要求事項に適合し、技術的な問題がないとする原子力規制委員会の審査内容について、県として確認することができました。また、リラッキングに関しては、貯蔵する使用済燃料は青森県六ヶ所村の再処理工場へ搬出することとし、搬出されるまでの間は適切に貯蔵・管理するとの九州電力の方針を確認しました。こうしたことから、今月1日に事前了解を行っています。この2つの事前了解に当たっては、九州電力に対し、安全第一で工事を行うこと、その実施状況などについて地元への積極的な情報提供を行うことを求めるとともに、リラッキングに関しては、使用済燃料が発電所内に永久に保管されるのではないかとの不安の声もあることから、具体的な使用済燃料対策について、県民への丁寧で分かりやすい説明を行うことを、改めて要請しております。玄海原子力発電所とは、廃止措置を含め、長い年月にわたり関わり続けなければなりません。今後とも、緊張感を持って安全対策に取り組むよう九州電力に求めるとともに、県も含め全ての関係者の中に気の緩みが生じることがないよう万全を期してまいります。
 次に、佐賀空港の自衛隊使用要請について申し上げます。
 有明海漁協では、6月30日に西久保組合長をはじめとする新体制が発足いたしました。これを受け、7月8日に私が組合長を訪問し、佐賀県の大切な財産、誇りである有明海の再生にこれからも全力で取り組んでいく考えをお伝えしました。その上で、今回の防衛省からの要請は、私たちの生活の基盤となっている国防上の要請であることから、重く受け止め、県議会での議論や決議、3年半にわたる検討などを踏まえ、県として受け入れの判断を行ったものであり、漁協におかれても、検討を進め、要請を受け入れていただくよう改めて申し入れを行いました。組合長からは、「理事会や検討委員会などの場で協議していきたい」との話を頂いています。漁協内での議論が進むよう、引き続き調整してまいります。
 次に、有明海の再生について申し上げます。
 諫早湾干拓関連訴訟については、開門を命じた確定判決を無効化した福岡高裁判決を、昨年9月に最高裁が破棄し、差し戻しています。福岡高裁における差戻控訴審の口頭弁論では、確定判決において、干拓事業の影響で減少したと認定された漁獲量が回復したのかを主な争点に、開門の強制執行の可否を巡るやりとりが続いています。今後、有明海の現状を踏まえ、漁業者の皆様の想いを受け止めた審理が行われることを期待しています。県としては、有明海の再生のためには開門調査を含む環境変化の原因究明が必要という想いは変わりません。国に対しては、その必要性を様々な機会を通じて訴えてまいります。7月に有明海漁協を訪問した際には、組合長から、ノリの安定生産やタイラギをはじめとした水産資源の回復など有明海に対する熱い想いを伺いました。有明海では、近年頻発する豪雨災害によるゴミの漂着や土砂の堆積、海中の塩分濃度の急激な低下によるアゲマキやアサリなどの母貝の減少といった影響も見られています。宝の海である有明海の再生は、国や県、市町、漁業者など有明海に関わるもの皆で取り組む課題です。引き続き、漁場環境の維持・改善に取り組むとともに、種苗生産技術の開発や人工稚貝の放流を続けるなど、1日も早い資源の回復につながるよう連携して取り組んでまいります。
 次に、九州新幹線西九州ルートについて申し上げます。
 西九州ルートは、新鳥栖-武雄温泉間は在来線をそのまま利用することを大前提として整備が進められてきました。フリーゲージトレインの導入を断念し、現在の状況を招いたのは国の責任です。フリーゲージトレインを断念したからといってフル規格で整備するというのは筋が違います。在来線の利便性低下や莫大な財政負担など佐賀県が大きなリスクを負ってまで対応しなければならないものではありません。
 2年後には、県として多額の負担をして整備している武雄温泉-長崎間の開業が迫っています。その秋には、全国規模で誘客を図る「佐賀・長崎デスティネーションキャンペーン」の開催も決まっています。今は、開業の果実を得るため、全力を傾注する時期です。そして、西九州ルートの開業により特急列車が大幅に減ることで影響を受ける鹿島や太良などの長崎本線沿線地域の振興に力を注いでまいります。
 次に、城原川ダム事業について申し上げます。
 城原川ダム事業については、建設段階に移行して3年目を迎え、ダム本体や付替道路などの調査・設計が進められています。8月からは現地での用地調査が開始されるなど、事業の進捗が実感できる状況となっています。また、水没予定地域の住民で作る二つの組織が、ダムの建設促進と水没予定地域住民の生活再建の実現という想いの下に6月に統合し、「城原川ダム建設対策協議会」として設立されました。新たな組織に込められた住民の皆様の想いを受け止め、流域の治水対策を進めるため、一日も早いダム完成を目指した事業の推進と必要な予算の確保を、引き続き、国に働き掛けてまいります。あわせて、住民の皆様が将来を思い描き、具体的な生活再建に向け踏み出せるよう、国や神埼市と連携し、きめ細やかな支援を心掛けてまいります。
 続きまして、最近の県政の主な動きについて御説明申し上げます。
 まず、「SAGA2023」国スポ・全障スポの開催年の延期要請について申し上げます。
 今年、鹿児島県で予定されていた国民体育大会及び全国障害者スポーツ大会が、新型コロナウイルス感染症の影響で中止となりました。これを受け、鹿児島県知事や国などから、「SAGA2023」の開催を予定している2023年に鹿児島大会を開催させてほしいとの要請がありました。私は、今回のことは誰のせいでもない新型コロナウイルスに起因するものであり、鹿児島県の痛みを皆で分かち合うことができないかという想いを持ちました。一方で、2023年に照準を合わせて頑張っているターゲットエイジと呼ばれる子供たちや指導者の皆様のことに想いを巡らせました。こうした方々のことを大切に考えながら、競技団体や市町など県内の関係者の皆様と意見交換を重ねてまいりました。その上で、極めて重い、苦渋の選択ではありましたが、同じ九州の盟友として鹿児島県の要請を受け入れることといたしました。今回の判断をもって、直ちに佐賀や鹿児島の開催年が決定するわけではなく、本県の後に開催を予定している県とも調整が行われています。その結果、2023年の鹿児島大会と2024年の佐賀大会が正式に決定された場合、この2つの大会を、いわば双子の大会と位置づけ、「鹿児島でも金、佐賀でも金」を皆で目指したいと考えています。今議会には、両大会への出場を目指す現在の中学生が県内の高校に進学し、少年の部で活躍できるよう選手強化を図るための活動支援や、新型コロナウイルス感染症の影響で競技活動が制約されている中学生を応援する「トップアスリートによるスポーツ体験会」の開催などに必要な予算を提案いたしております。鹿児島から佐賀へ、国体から国スポへ、バトンをつなぐことで、両県の若者たちが、スポーツや文化など様々な分野で交流を重ね、互いにエールを送りながら成長し、輝かしい未来を築き上げていくことを心から期待しています。
 次に、肝がん撲滅に向けた取組について申し上げます。
 本県は、肝がんの死亡率が19年連続全国最下位という厳しい状況が続いていましたが、平成30年はワースト2位、令和元年は速報値でワースト12位と大きく改善しています。ウイルス検査や治療への助成、患者をサポートする肝炎医療コーディネーターの養成など、佐賀大学医学部附属病院の「肝疾患センター」を拠点に、医師会や市町などと連携し、肝炎ウイルス検査の受診や治療、治療後の定期的な検査を促す取組を進めてきたことが結果に表れつつあると考えています。しかしながら、死亡率は依然として全国平均よりも高い状況にあります。引き続き、肝炎ウイルス検査の受診を促すとともに、精密検査や治療が必要な方と医療機関との橋渡しに努め、がんで亡くなる方を一人でも減らしていけるよう取り組んでまいります。
 次に、交通死亡事故ゼロを目指した取組について申し上げます。
 交通安全・事故防止対策については、「SAGA BLUE PROJECT」を展開し、県民の交通安全の意識改革に力を入れています。今年の人身交通事故件数は減少しているものの、交通事故で亡くなられた方は、1月から6月までの比較で前年より10人増の22人に上るなど厳しい状況にありました。このため、例年9月に始まる秋の交通安全県民運動を待つことなく、「佐賀県交通死亡事故防止緊急対策」を8月3日から展開しています。しかしながら、8月には3件の死亡事故が発生しています。死亡事故の多くは、横断中の歩行者がはねられることによるものです。かけがえのない大切な命を奪ってしまう、自分が加害者になるかもしれない、そういう意識で運転しなければならないと思います。もっと前をよく見ていれば、もっとスピードを抑えていれば、失われずにすんだ命があると思うと、やるせない気持ちになります。今一度、御自身の運転を振り返っていただきたいと思います。県民の皆様一人一人が、交通事故を自らの事として考え、行動につなげていただけるよう取組を強力に推進してまいります。
 次に、県内へのUJIターン就職を支援する取組について申し上げます。
 佐賀県には、素晴らしい伝統や技術を持つ企業が数多くあり、佐賀で働きたいという方々の力を必要としています。そこで、学生の県内就職と県内企業の人材確保を支援するため、全国に先駆けてWEB上での合同企業セミナーを開催し、その後もそのノウハウを活かして県内企業と学生の接点を生み出してまいりました。県内企業におけるWEB面接の導入も支援しています。こうした取組を進める中で、学生と企業の双方から、最終的に決める際には「対面での面接も必要」という声をお聞きしました。UJIターンの就職活動においては、交通費が大きな負担になっているという調査結果もあります。このため、採用面接などの就職活動にかかる交通費を補助する制度を今年度から創設しています。県外にいる若者が、佐賀の企業と出会い、一人一人がやりがいを持って働き、豊かな人生を送っていけるよう、本県へのUJIターン就職を応援してまいります。
 次に、新たなビジネスの立ち上げを支援する取組について申し上げます。
 実際に県内でビジネスを立ち上げ、成果を上げている経営者の話を聞くことで、新規事業へのチャレンジを促したいという想いで、創業支援交流会「Startup Gateway SAGA」を7月に開催いたしました。佐賀県には、新規事業にチャレンジする方にとって、大きな自治体にはない柔軟で機動的なサポートができるという強みがあります。人と人のつながりを大切にしながら、ビジネスパートナーや販路のマッチング、専門家による事業計画の磨き上げ、投資家や金融機関との橋渡しによる資金調達のサポートなど、一人一人の事業にかける想いに寄り添った支援を通じて、時代を切り拓いていく動きを後押ししてまいります。
 次に、唐津市を起点に玄界灘沿岸を走る国道204号の整備について申し上げます。
 唐津市唐房地区でのバイパスの整備区間内に計画している「唐房トンネル」について、地元の方々の協力を得て8月から工事に着手いたしております。唐房入口交差点の渋滞緩和などにより佐賀県を代表する観光ルート唐津-呼子間のアクセス向上につながると考えており、県民の暮らしと地域の飛躍を支える基盤として着実に整備を進めてまいります。
 続きまして、提案事項について御説明申し上げます。
 今回の補正予算案の編成に当たりましては、6月補正後の情勢の推移に対応することといたしており、補正予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ、

一般会計  約129億7,100万円

となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、

一般会計  約6,241億1,000万円

となっております。
 次に、予算案の主な内容について申し上げます。
 まず、新型コロナウイルス感染症に対応する医療提供体制の強化についてです。
 感染症に対応する病床については「プロジェクトM」によって先手先手で確保してまいりました。感染の長期化に備え、受入可能病床を追加して確保するとともに、空床となった場合の補償期間を今年度末まで延長することといたしました。軽症や無症状の方の滞在施設としてのホテルの借上げ期間も、併せて延長してまいります。また、医療機関において、感染症への対応と、それ以外の救急、手術、入院などの医療の両立を図っていくためには、院内感染防止対策を徹底する必要があります。そこで、病院入口で患者を振り分ける発熱トリアージの実施や感染防止のための施設整備にかかる経費への補助を拡充することといたしました。
 「Society5.0」の実現に向けた取組においても、ロボットなどを使った自動配膳や消毒作業、リモート面会などを試験的に実施してまいります。接触機会を減らすことで院内感染のリスクを下げるなど、医療現場を支える活用方策を探ってまいります。
 次に、調剤薬局の薬剤師などへの慰労金の支給について申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症に対応いただいている医療従事者や病院職員の方々などに対して慰労金を支給することは、先の6月議会で御承認いただきました。同様に、患者への医薬品の供給を維持していくために欠かせない調剤薬局の薬剤師や職員の方々に対し、本県独自に慰労金を支給することといたしました。
 次に、地域の公共交通を支える取組について申し上げます。
 県民生活を支える移動手段である路線バス及び松浦鉄道においては、新型コロナウイルス感染症の影響で、利用者が減少し経営に大きな影響を受けています。こうした厳しい状況の中、運行が継続されていくよう支援金を交付することといたしました。引き続き、市町と連携し、利用促進に取り組むとともに、県民の皆様に対しては、自家用車に頼りすぎているライフスタイルを、バスや鉄道などを利用し、歩くことへ転換する「歩くライフスタイル」の推進を呼びかけてまいります。
 次に、デジタルトランスフォーメーション:DXを広げる取組について申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症の拡大による企業の経営環境の変化に伴い、デジタル技術の活用によってビジネスを変革するDXの重要性が高まっています。産業スマート化センターでは、DXの実現に必要なAIやIoTの導入に意欲的な企業とIT関連のサポート企業とのマッチングを行うなど、県内企業の生産性向上や新たなビジネス創出を支援しています。県内企業におけるDXの実現を更に推進するため、各産業分野に応じたモデル事業をスタートすることとし、第一弾として百貨店での取組を支援してまいります。
 次に、佐賀の林業を支える取組について申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症の影響により住宅建築用の需要が減少し、木材の市場価格が大幅に下落しています。採算がとれないことで、森林の間伐によって生じた木材を市場に出す「搬出間伐」ができなくなっているという林業従事者の切実な声をお聴きしています。このため、秋以降に本格化する森林組合などの林業事業体による搬出間伐を支援することで、計画的な森林整備を進めるとともに、林業における雇用の確保につなげてまいります。近年、豪雨による土砂災害や流木被害などが続く中、山は県民の生命と豊かな暮らしを守る礎だと考えています。「山を守る」という強い想いで、佐賀の林業を支えてまいります。
 次に、佐賀の魅力に触れる修学旅行について申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症の全国的な広がりを受け、宿泊施設やバス車内での過密防止を図るなど感染防止対策を徹底した上で、佐賀のことを知り、魅力に触れる体験を取り入れた県立学校での修学旅行を支援してまいります。佐賀の豊かな自然、歴史、文化、そして、ものづくりの現場や佐賀の食など、自分自身の体験を通して感じることは、ふるさと佐賀への誇りや愛着につながるものと考えています。佐賀への誇りを土台に、自分の力で未来を切り拓いていく骨太な子供たちを育んでまいります。
 次に、オープンエア佐賀を楽しむ環境整備について申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症の影響が広がる中、佐賀の澄み渡る空の下で、感染リスクの少ないスタイルとして多彩な自然体験を楽しむ「オープンエア佐賀」の発信に力を入れています。自然の中での働き方、楽しみ方を広げる取組として、Wi-Fi整備を進めてまいります。波戸岬キャンプ場では、自然を楽しみながらリモートワークもできる環境が整うことで、場所にしばられない新しい時間の過ごし方を生み出すきっかけになると考えています。吉野ヶ里歴史公園では、三密を避け、親子で多彩なアウトドア体験を楽しむ様子などを、利用者がその場からSNSで広げていただくことで佐賀の魅力発信にもつながると考えています。
 次に、離島における原子力災害への備えについて申し上げます。
 唐津市の離島における原子力災害発生時の住民避難については、島内での屋内退避のほか、船舶を使った島外避難を想定しています。これに加えて、ヘリコプターによる避難を可能にするため7つの離島全てにヘリの離着陸場を整備することといたしました。令和2年度に4島、令和3年度に3島での整備を予定しています。これにより、海上と空からの避難が可能となり、避難方法の選択肢が増えるとともに、急患搬送や物資輸送の迅速な対応にもつながると考えています。
 次に、高島航路発着所に堆積した土砂の浚渫について申し上げます。
 昨年11月、唐津市の高島を訪問した際、本当に多くの方々に集まっていただき、島民皆の想いとして、松浦川河口にある定期船の発着所付近に長年にわたって土砂が堆積し、「干潮時には船が桟橋に着けられず欠航となってしまう」、「通院や買い物などに影響が出ている」という切実な声をお聴きしました。そうした声に真摯に向き合い、何とか対策を講じていきたいという想いで唐津市と協議を重ね、県が補助することで、土砂の浚渫が行えることになりました。個性あふれる七つの島は佐賀県の宝です。引き続き、島を大切にし、島を守っている島民の方々に寄り添いながら、唐津市と一緒になって、島の暮らしを支えてまいります。
 次に、次世代の農業を担う人材育成について申し上げます。
 県内の農業従事者は、高齢化などにより減少傾向が続いており、次世代の担い手の確保・育成は重要な課題です。このため、農業大学校や農業系高校の教育現場において、ロボット技術やICTを活用したスマート農業機械の導入を進めてまいります。薬剤散布ができるドローンやGPSを使ったトラクターなど最先端の農業機械を使った農作業の省力化、効率化を学ぶ環境を整備することで、将来の佐賀農業を支える稼げる若手就農者を育成してまいります。
 次に、予算外議案といたしましては、条例議案として4件、条例外議案として11件となっています。それぞれの議案については、提案理由を記載していますので説明を省略させていただきます。
 最後になりますが、新型コロナウイルス感染症の拡大は、佐賀県が持つ、人が人として暮らしていく上で大切な本質的な価値を改めて考える機会となりました。
 私が、SSP杯の開催を決めた際には、集大成の場を失った高校生のために、「コロナ禍ではあっても、やれることをやろう」、「人生の次のチャレンジへ、節目となる舞台をつくろう」という想いの下に多くの大人たちが集まり、「チームさが」で大会を盛り上げることができました。鹿児島県から要請された「国スポ開催の1年延期」についても、人の痛みに敏感である佐賀県であることが、受け入れを決断する後押しになりました。人と人のつながりを大切にし、人の気持ちに寄り添うことは、佐賀県の大きな財産だと考えています。
 また、新型コロナをきっかけにしたリモートワークの広がりは、多様な働き方を可能にするとともに、都市部中心ではなく、地方で働き暮らすことに目を向け、より心地良い場所で人生を過ごしていくことを重視する流れを生み出しています。佐賀県は、ゲームやアニメとのコラボなどを通じた企業との出会いを大切にし、企業の想いも乗せながら、佐賀の魅力を発信してまいりました。昨年の調査で、首都圏の20代の移住希望地ランキングで3位と注目されています。豊かな自然に恵まれた「オープンエア佐賀」の環境や、素晴らしい歴史、伝統、文化など元々持っている価値に光を当てることで、佐賀の存在感は更に高まっていくと考えています。
 こうした佐賀県の価値を大切にし、コロナ後の社会に想像を巡らせながら、前を向いた取組を始めています。店先にテラス席を設けて飲食する社会実験「SAGAナイトテラスチャレンジ」は、全国のモデルケースとして紹介されています。広場に設けたテラス席から注文できるモバイルオーダーシステムを導入するなど、更に進化した形で展開してまいります。波戸岬キャンプ場や吉野ヶ里歴史公園でのWi-Fi整備は、オープンエア佐賀の環境を活かした多様な時間の過ごし方を見つけるきっかけになると考えています。山を大切にする人々をつなぎ、山の未来を考える「山の会議」もスタートしています。森川海人っプロジェクトの下で、豊かな海を育むため、漁業者の皆様と一緒になった「漁協の山」づくりも始めてまいります。
 戦後、少しでも豊かになろうとした高度経済成長期に皆が目指した、便利なもの、都会的なものを追いかけることの延長線上に、これからの佐賀の発展はありません。そして今、コロナと向き合う状況の中で、画一的な価値観、経済至上主義、都市への過度な集中に大きな問題があることに、多くの人が気づき始めたのではないでしょうか。未来を切り拓いていくため、佐賀が持つ本質的な価値に光を当て、新しい時代に向かって構想力を持ち、創造力を発揮し、そして団結力を大切にしながら、豊かな時間が過ごせる佐賀を更に磨き上げてまいります。
 以上、今回提案いたしました議案などについて御説明申し上げました。
 よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。