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令和2年 11月26日
令和2年11月定例県議会 知事提案事項説明

 令和2年11月定例県議会の開会に当たり、最近の動き、提案事項などについて御説明申し上げます。
 まず、新型コロナウイルス感染症対策について申し上げます。
 今月8日、感染のため入院中であった高齢者お一人が、誤嚥性肺炎によりお亡くなりになりました。謹んで哀悼の意を表しますとともに、ご遺族の皆様に心よりお悔やみ申し上げます。
 国内の感染者数は、11月に入って過去最多を更新するなど都市部を中心に感染が広がっています。佐賀県における感染の状況は、11月上旬に、本県では初めてとなる福祉施設でのクラスターや、福岡市の専修学校でのクラスター関連の感染が確認されたものの、そこからの感染拡大は防ぐことができており、その後も一つ一つ封じ込めを行うことで現時点では落ち着いている状況にあると考えています。しかしながら、全国的には感染が拡大している地域があるなど予断を許さない状況が続いていることから、一瞬で状況が悪化することが十分にあり得るという危機意識と緊張感を持って臨んでおります。
 これまで佐賀県では、濃厚接触者のみならず接触者を幅広くとらえて実施している「念のため検査」により感染の拡大を徹底して防いでまいりました。また、県と医療関係者が連携して取り組む「プロジェクトM」の下で、感染した全ての方を対象に、速やかな入院又は県が用意したホテルでの療養の徹底、患者の症状に応じた入院先の調整など、「佐賀方式」により対応してまいりました。感染症対策に一丸となって協力いただいている県民の皆様、そして、感染拡大の長期化で負担が増す中、大切な医療現場を守り抜いていただいている医療従事者の皆様に、改めて感謝申し上げたいと思います。
 11月からは、季節性インフルエンザとの同時流行に備えた対策として、新たな診療・検査体制を整えています。発熱などの症状がある場合には、まずは、かかりつけ医などの身近な医療機関に電話で相談していただくよう呼びかけています。相談先に迷う場合には、新たに設置した「受診・相談センター」に電話していただき、県が指定した約280箇所の「診療・検査医療機関」での受診を案内するようにしています。検査体制については、衛生薬業センターにおいて一日約300件のPCR検査ができるまで強化しており、感染症指定医療機関などでも検査できる体制を順次整えています。また、地域の医療機関においても、より簡易に検査ができ、かつ短時間で結果が判明する抗原検査が実施できるようになるなど充実を図っております。医療提供体制については、「プロジェクトM」によって、入院治療が必要な方を受け入れる病床を281床、軽症や無症状の方の療養のためのホテルを230室確保しており、受入れには十分に余裕がある状況です。感染の確認が続く中、何より大事なのは医療を守ることという考えの下、私自身、医療現場を訪問するなど、最前線で頑張っている皆さんの声をお聴きし、現場の厳しさを肌で感じながら、医療従事者を守ることが県民の生命線だという強い意識で対応してまいりました。医療機関での感染防止や病床確保のための対策、更には、医療従事者や病院職員のみならず、本県独自に調剤薬局の薬剤師や職員の方々を対象にした慰労金の支給など、現場に寄り添った対応を続けております。
 次に、社会経済活動の回復に向けた取組について申し上げます。
 県では、補正予算や専決処分によって、これまで7次にわたり社会経済活動の維持・回復に向けた予算を編成し対策を講じてまいりました。県内経済は厳しい状況にありますが、一部には持ち直しの動きも見られており、そうした動きを広く行きわたらせ、確実なものにしていきたいと考えています。そのための取組として「佐賀支え愛」の活動を続けています。7月から始めた「佐賀支え愛宿泊キャンペーン」は10月から第2弾を実施し、県内や九州域内の方々を対象に県内での旅を呼び掛けています。バルーンフェスタや唐津くんちなど、秋の恒例行事が軒並み中止となったものの、県内宿泊施設の稼働は改善傾向にあると伺っています。また、飲食店や食材を提供する生産者を応援する取組として、1万円で12,500円分の食事が楽しめる「SAGAおいし~と食事券」を60万冊準備しており、感染対策を講じた加盟店で来年3月末まで利用することができます。多くの方に購入いただき、県内の飲食店を利用していただきたいと考えています。店先にテラス席を設けて屋外で飲食を楽しむ「SAGAナイトテラスチャレンジ」は、佐賀市中央大通りでエリアを拡大して第2弾・第3弾が開催され、鹿島市では、若手経営者が中心となった「KASHIMAスカイテラスチャレンジ」や、更には「祐徳門前参道テラス」が開催されるなど広がりが生まれています。佐賀県での取組をきっかけに、国土交通省において道路占用の許可基準が緩和されるなど、本県の取組が全国のモデルにもなっています。
 また、無観客での音楽ライブや舞台公演などを配信することにより、文化芸術活動の新たなモデル創出にチャレンジする「LiveS Beyond(ライブスビヨンド)」では、これまでになかったライブハウスでの人形浄瑠璃の公演が実現するなど100を超える取組を支援しています。音楽ライブの配信を行ったライブハウス経営者からは、「再開のきっかけをもらいありがたい」という声をいただいております。引き続き、地域や事業者が創意工夫しながら取り組む新たなスタイルへのチャレンジを支えてまいります。
 県がこの秋開催した、佐賀城公園一帯での「佐賀さいこうフェス」、「タイフェス」、「さが維新まつり」、吉野ヶ里歴史公園での「SAGAエールフェス」、そして「伝承芸能祭」などの催しについては、佐賀県を元気にしたい、社会経済活動を元に戻していきたいとの想いで感染防止対策を講じながら開催してまいりました。アートを体験する子供たちやコロナ禍で初めてのステージとなった出演者、他都市でのタイフェスが軒並み中止になり、今年は本県のみで開催が実現したタイ政府関係者など、盛り上げていただいた皆様の喜びの声をお聴きし、こうした取組の積み重ねが社会の活力になることを実感いたしました。今後も県が実施する事業については、これまでの経験で蓄積した感染防止対策を講じながら開催方法を工夫してまいります。県内では感染の広がりは抑えられている状況にあり、現時点は「支え愛活動局面」です。県民の皆様が、感染防止対策を取りながら、県内で買い物や食事、宿泊を楽しんでいただくなど、地元消費をすることで事業者や生産者の方々を支えていただきたいと思います。
 現在、全国的には感染拡大地域が出るなど、都市部を中心に感染が広がっています。そうした状況を踏まえると、佐賀県においても、今後とも感染の確認は続くものと想定しています。引き続き、「念のため検査」による徹底した感染拡大の防止や「プロジェクトM」による医療対応といった「佐賀方式」を徹底し、医療関係者と連携しながら、感染症から県民を守る取組に全力を注ぎ、県民の命と生活を守ってまいります。
 次に、国内での高病原性鳥インフルエンザの発生に伴う防疫対応について申し上げます。
 今月5日に香川県の養鶏場で、感染した鶏が確認され、昨日には隣県の福岡県宗像市でも確認されるなど、予断を許さない状況にあります。県では、養鶏農家や関係団体などに対して、鶏舎の点検や出入りの際の消毒の徹底などの注意喚起を行うとともに、防疫強化のため、県内の全ての農場へ消毒用の消石灰を緊急配布しています。引き続き、警戒体制を継続し、緊張感をもって、しっかりと対応してまいります。
 続きまして、当面の諸課題への対処方針について申し上げます。
 まず、原子力発電についてです。
 国がエネルギー政策として推進する核燃料サイクルについては、その中核施設となる日本原燃株式会社の「再処理工場」が7月に原子力規制委員会により新規制基準への適合が認められ、使用済燃料から取り出したプルトニウムとウランを燃料に加工する「MOX燃料工場」についても「適合している」とした審査書案が了承されています。私は先月13日、青森県六ヶ所村にあるこれらの工場を初めて視察し、我が国における核燃料サイクルの現状や再処理工場における具体的な処理の工程などの説明を受けてまいりました。核燃料サイクルについては、県は様々な機会を通じて、国が責任を持って取り組むよう申し入れを行ってきており、今後も強く求めてまいります。
 9月24日に発生した玄海原子力発電所3号機における仮設ケーブルの火災については、先月9日、九州電力から、作業員間の連携不足などが原因との報告を受けました。この火災を含め、玄海原子力発電所では平成30年3月の再稼働以降、トラブルが続いていることを強く憂慮しております。先月29日には小林副知事を現地に派遣し、九州電力に対し、「時間の経過とともに再発防止対策がおろそかにならないよう、不断の見直しを継続すること」、「引き続き、作業・点検にしっかり取り組むこと」について申し入れを行いました。  玄海原子力発電所とは、廃止措置を含め、長い年月にわたり関わり続けなければなりません。今後とも、緊張感を持って安全対策に取り組むよう九州電力に求めるとともに、県も含め全ての関係者の中に気の緩みが生じることがないよう万全を期してまいります。
 次に、佐賀空港の自衛隊使用要請について申し上げます。
 9月10日に、有明海漁協内に設置されている検討委員会が開催され、今後の進め方については、防衛省が地権者に対して説明を行い、地権者の意向を確認した上で漁協として判断するとの決定がなされました。先月26日には、漁協組合長及び県同席の下で、事業主体である防衛省と地権者が属する関係4支所の代表者との間で、地権者説明の時期や方法などについて協議が行われました。その結果、地権者説明については、今季のノリ漁期が明けた後に行うことが確認されました。県としては、防衛省による地権者説明が円滑に行われるとともに、漁協内での議論が進むよう、引き続き調整してまいります。
 次に、有明海の再生について申し上げます。
 諫早湾干拓関連訴訟について、福岡高裁における請求異議訴訟の差戻控訴審では、開門を命じた確定判決において、干拓事業の影響で減少したと認定された漁獲量が回復したのかを主な争点に、開門の強制執行の可否を巡るやりとりが続いています。今後、有明海の現状を踏まえ、漁業者の皆様の想いを受け止めた審理が行われることを期待しています。県としては、有明海の再生のためには開門調査を含む環境変化の原因究明が必要という想いは変わりません。国に対しては、その必要性を様々な機会を通じて訴えてまいります。
 有明海の漁業を守る取組については、7月の豪雨により早津江川の戸ヶ里漁港付近に堆積した土砂の除去に力を入れてまいりました。10月から本格化するノリ養殖作業に影響が出ないよう、国や佐賀市と連携して迅速に対応してきたことで9月下旬までに土砂の除去を完了しています。また、宝の海を守るため、9月に有明海漁協と「漁協の山」づくりを進める協定を締結しています。「漁協の山」は、漁業者の皆さんがヤマザクラなどの広葉樹を植林し、下刈をするなどして森をしっかりと成長させる活動に取り組んでいただくものです。今後、企業や団体にも参画いただくことで「森川海人っプロジェクト」の取組の輪を広げ、山と海のつながりを感じながら佐賀の豊かな自然を未来につないでまいります。有明海の水産資源については、再生のシンボルであるタイラギが9年連続で休漁となるなど厳しい状況が続いています。漁場環境の維持・改善に努めるとともに、タイラギをはじめとする二枚貝の種苗生産技術や人工稚貝の放流技術の開発を続けるなど、一日も早い資源の回復に繋がるよう関係機関と連携して取り組んでまいります。
 宝の海である有明海の再生は、国や県、市町、漁業者など有明海に関わるもの皆で取り組む課題であり、関係者と意見交換をしながら全力で取り組んでまいります。
 次に、九州新幹線西九州ルートについて申し上げます。
 9月24日に開催された与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームの会合において、国土交通省から、西九州ルートの武雄温泉-長崎間の開業時期が令和4年秋頃の見込みであることが報告されました。開業を迎える沿線の市町では、多くの人に訪れていただける魅力ある地域づくりに向けて、様々な取組が進められていくことになると考えています。県としては、開業の果実を得るために、地域における自発の地域づくりを支援してまいります。また、西九州ルートの開業により、特急列車が大幅に減ることになる鹿島や太良などの長崎本線沿線地域の振興にしっかりと取り組んでまいります。
 国土交通省から呼びかけがあった「幅広い協議」については、先月23日に第3回の協議を行いました。協議では5つの方式について鉄道局が考えるメリットや課題について説明があり、その中で、フリーゲージトレインについては、技術的に開発できないということではなく、耐久走行試験も含めて時間とコストがかかるという理由から、鉄道局としては開発しないという判断をしたということでした。フリーゲージトレインの導入を断念し、現在の状況を招いたのは国の責任です。フリーゲージトレインを断念したからといってフル規格で整備するというのは筋が違います。フル規格での整備は、並行在来線の問題のみならず、特急列車が新幹線に振り替わることなどによる在来線の利便性低下や莫大な財政負担など、佐賀県の将来に大きく影響する問題です。佐賀県は、将来のあり方について、様々な可能性を議論することは閉ざしておらず、鉄道局とは5つの方式について予断を持たずに幅広く協議することで一致しています。引き続き、フリーゲージトレインの実現も含めて幅広い協議を行っていくこととしており、議論に必要な数字や条件については、事業主体である国が責任を持って確約できるものを示していただくよう、改めて要請いたしました。今後もこの先の時代を見据え、しっかりと真摯に議論していく姿勢を貫いてまいります。
 次に、城原川ダム事業について申し上げます。
 城原川ダム事業については、8月から現地での用地調査が開始されており、さらに、国の来年度概算要求においては、今年度予算額を上回る約10億円が盛り込まれています。ダム本体や付替道路などの調査・設計、水没地域の補償に必要となる用地調査、工事用道路の敷設など、ダム建設の具体化に向けた事業の進捗を期待しています。県としては、地域の治水対策を進めるため、一日も早いダム完成を目指した事業の推進と必要な予算の確保を、引き続き、国に働き掛けてまいります。水没予定地域の集落では、人口減少と住民の高齢化も進んでいます。長年にわたる不安にしっかりと寄り添い、住民の皆様が将来を思い描き、具体的な生活再建に向け踏み出せるよう、国や神埼市と連携し、きめ細やかな支援を心掛けてまいります。
 続きまして、最近の県政の主な動きについて申し上げます。
 まず、「SAGA2024」国スポ・全障スポについてです。
 先月8日、日本スポーツ協会において、本県で2023年に開催を予定していた国スポ・全障スポについては、新型コロナウイルス感染症の影響で延期となった鹿児島大会の開催を2023年とし、本県での開催を2024年とすることが決定されました。これに伴い佐賀大会の愛称をこれまでの「SAGA2023」から「SAGA2024」に改めることといたしました。鹿児島大会の開催決定イベントに招待された際には、鹿児島県民の皆さんから佐賀県に対する多くの感謝の言葉を頂き、改めて二つの大会を「双子の大会」として成功させていくという想いを強くいたしました。今後、互いの県民が交流を重ね、エールを送りながら、合同での強化練習で競技レベルを高め合うなど、この延期があったからこそ実現できる大会を、鹿児島県と共に目指してまいります。
 次に、「SAGA2024」のメイン会場となるSAGAサンライズパークの整備状況について申し上げます。
 現在、SAGAアリーナについては基礎工事を行っています。隣接する水泳場SAGAアクアについては、上屋の骨組み工事に入っており建物の姿が見えはじめてまいりました。陸上競技場SAGAスタについては、国際大会や全国規模の大会が開催できる第一種公認の取得に必要な雨天走路の新設、ドーピング検査室などの改修を行うこととしております。2022年度の完成を目指しており、今議会において工事の請負契約に係る議案を提案しています。2023年春のSAGAサンライズパークのグランドオープンに向け、着実に整備を進めてまいります。
 次に、SSP構想について申し上げます。
 トップアスリートの育成と、それを通じたスポーツ文化の裾野の拡大を図るSSP構想では、世界で活躍する佐賀ゆかりのトップアスリートを支援しています。先月行われたテニスの全仏オープン車いすの部において、佐賀を拠点とするSSPトップアスリートの一人である大谷桃子選手が、初出場ながら準優勝という快挙を成し遂げました。来年の東京パラリンピック出場への期待も高まっています。佐賀で車いすテニスに出会い、佐賀で成長し、そして世界の舞台で活躍している大谷選手は、佐賀から世界に挑戦するトップアスリートの育成を目指すSSP構想を象徴する存在だと考えています。また、先月行われたレスリング全国高校選抜大会において、鳥栖工業高校の尾西大河選手と小柴伊織選手がそれぞれの階級で日本一に輝きました。スポーツクライミングのリードユース日本選手権では、伊万里中学校の通谷律選手が2位となっています。全九州ホッケー選手権大会では、伊万里商業高校が男女そろって優勝するなど、コロナ禍の厳しい状況の中でも、本県選手の活躍が続いています。佐賀県は、SSP構想の下、こうした若いアスリートの育成に力を入れるとともに、多くの人が「育てる、観る、支える」など自分なりのスタイルでスポーツに関わることで、スポーツのチカラを活かした地域づくりを進めています。この一環として、先月、日本フェンシング協会と連携し、ふるさと納税を活用した新しい取組を開始しました。これは、本県のフェンシングの振興と併せて、国内の選手強化を支援するなど、地方から中央競技団体を支える前例のない取組です。新しいチャレンジをこれからも積極的に進め、佐賀から新しいスポーツシーンを切り拓いてまいります。
 次に、中学生アスリートが県内の高校を選び、成長していくための支援について申し上げます。
 県では、競技団体や県教育委員会などと連携し、中学生アスリートとして実績を積んだ将来有望な子供たちが県内の高校に進学し活躍できる環境づくりに取り組んでいます。先月25日には様々な競技で活躍する中学生との座談会を開催し、直接私から「皆さんをしっかりと支えていく」ことを伝え、「県民に夢と感動を与える佐賀県を代表するアスリートになってほしい」とエールを送りました。佐賀県はこれまで甲子園で2度日本一に輝いた経験があります。しかしながら高校進学時の県外流出が顕著なことから、「佐賀野球王座奪還プロジェクト」を始動いたしました。中学3年生の選抜チームを編成しての社会人チームとの強化試合や、高校の野球部のサポートによる硬式野球の体験練習会を行うなど、選手としての成長を後押しする取組を広げています。また、県教育委員会においては、来年度の県立高校入試について、特別選抜のスポーツ枠を約3倍に拡大することとしています。こうした取組を通して、中学生アスリートが県内でスポーツを続けたいという流れを創り出し、県内の高校で成長し、日本一を狙うことができる環境を整えてまいります。
 次に、佐賀県食肉センターの再整備について申し上げます。
 食肉センターにつきましては、牛肉の海外市場への販路拡大に向けて、EUや米国などへの輸出認定要件を満たす高度な衛生管理やICタグを活用した効率的な枝肉管理ができる高性能な牛処理施設として整備を進めています。このほど、用地造成がほぼ完了したことから、施設の建設に着手することとしています。生産者や卸売業者など食肉を扱うプロに選ばれる施設として整備し、国内外から高い評価を得ている佐賀牛をはじめとする本県畜産業の更なる振興を図ってまいります。
 次に、消防防災ヘリコプターの運用開始について申し上げます。
 消防防災ヘリコプターについては、令和3年3月末からの本格運用に向け、現在、九州佐賀国際空港の隣接地において活動拠点となる防災航空センターの整備を進めています。建屋及び駐機場については、12月末までに整備を終え、その後直ちに防災ヘリを配備できる見通しであることから、令和3年1月には防災航空センターを設置し、実機を使った飛行訓練を開始することとしています。災害時の迅速な初動や人命救助などに対応する、県民を災害から守る拠点として確実に運用してまいります。
 次に、「令和2年度過疎地域自立活性化優良事例表彰」における総務大臣賞の受賞について申し上げます。
 過疎地域の活性化に優れた成果を上げている事例として、富士町苣木地区の「ちやのきエンデューロ」の取組が総務大臣賞に輝きました。地域は、山道を駆け抜ける自転車レースのコースとなる土地の提供や大会運営などに協力し、自転車の愛好家は、担い手不足が課題となっている地区の草刈りや清掃活動に参加するなど、交流を重ねながら地域に活力を生み出していることが高く評価されています。最近では、全国からマウンテンバイクのライダーなどが訪れ、人口30人ほどの集落で200人ほどが集まる大会が開催されるまでに成長しています。地域が主体となり、地域の外の力を取り入れながら地域資源を活かしていく、こうした自発の地域づくりをこれからもしっかりと後押ししてまいります。
 次に、本県出身画家・池田学氏の中学校教科書への掲載決定について申し上げます。
 平成29年に県立美術館で開催した「池田学展」は、来場者が過去最多となり、多くの県民に感動を与えました。このとき展示した池田氏の代表作「誕生」と「興亡史」の2作品が、令和3年度からの4年間、中学校の美術の教科書に掲載されることが決定しました。全国の中学生の学びに本県出身画家の作品が使われることは、大変誇らしく、嬉しいことです。これをきっかけに、佐賀県の子供たちが佐賀への誇りをより強く持ち、池田氏の情熱を感じて自分ももっと頑張ろうと志を高め、未来の佐賀で、そして世界で、活躍してくれることを願っています。
 次に、出産前後の母親とその家族を支える取組について申し上げます。
 子育て先進国と言われるフィンランドには、「ネウボラ」、フィンランド語で「助言する施設」という意味の出産・子育て支援施設があります。この施設では、一つの家族を一人の保健師が担当し、妊娠直後から面談を重ね、強い信頼関係の中で、出産から就学前まで切れ目ない支援を行っています。佐賀県では、この「ネウボラ」の「いつでも寄り添い支える」という理念を子育て支援に取り入れたいと考えています。まずは母親同士の相談アプリ「ママリ」を活用した相談支援体制の充実を図ることとし、昨日、アプリを運営する企業コネヒトと連携協定を締結いたしました。妊娠期から母親と市町の保健師がつながり、関係を作っていくことで、妊娠、出産、子育てにおいて切れ目なく気軽に相談ができ、安心感を持って、出産・子育てができる環境を、市町と連携して整えてまいります。
 次に、「KIZUKIプロジェクト」について申し上げます。
 まちづくりについては、これまで、全国どこでも同じような整備がなされ、地域ならではの価値や資源が活かされていない事例が多いと感じています。また、公園などの公共空間においても、例えば、管理のしやすさを優先し、作り手側の目線で整備された結果、使う側にとって心地よい空間となっておらず、有効に利用されていないケースも見受けられます。このため、地域が持つ価値や資源を活かし、「魅力あるまち・にぎわいのあるまち」を創り上げていきたいという想いでこのプロジェクトを始めることといたしました。例えば、佐賀駅とSAGAサンライズパークの間や、佐賀駅と佐賀城本丸歴史館の間の通りなどは、スポーツや歴史をテーマに楽しく歩く工夫をすることで賑わいを創出することができると考えています。また、鹿島や太良などの長崎本線沿線地域において、地域が本来持っている資源を活かし、価値や魅力をさらに高め人を呼び込むことができるよう取り組んでいくなど、県内各地において、市町と連携し、気付きを大切にしながら地域を磨き上げてまいります。
 次に、国道207号鹿島バイパスの整備について申し上げます。
 国道207号鹿島バイパスは昭和49年に事業に着手し、平成15年度から暫定2車線で供用しながら全線4車線化の工事を進めてまいりました。年内には残っていた約3kmの区間の工事が完了し、全線が4車線で供用できる見込みです。これにより、鹿島市内の大動脈としての役割はもとより、産業や観光振興の面での広域連携の広がりや旧国道の交通負荷の軽減、年末年始の祐徳稲荷神社への交通渋滞の緩和などが進み、県南西部の発展に寄与するものと考えています。
 続きまして、提案事項について御説明申し上げます。
 今回の補正予算案の編成に当たりましては、9月補正後の情勢の推移に対応することといたしており、補正予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ、
 一般会計  約43億100万円
となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、
 一般会計  約6,284億1,100万円
となっております。
 次に、予算案の主な内容について申し上げます。
 まず、新型コロナウイルス感染症に対応する医療提供体制の強化についてです。
 感染症に対応する病床については「プロジェクトM」によって先手先手で確保してまいりました。今後の感染の長期化や季節性インフルエンザの流行に備え、医療提供体制の更なる充実を図ってまいります。重症者の受入れに備えて病床を確保している医療機関に対しては、空床補償を増額し、より手厚い人員体制をとっていただけるよう支援を充実することといたしました。また、発熱患者の増加に対応するため、感染症の疑い患者を受け入れる病床を追加して確保する医療機関への支援を拡充してまいります。感染リスクと向き合い、強い使命感を持って対応いただいている医療従事者の皆様をしっかりと支えるとともに、感染症から県民の皆様を守る取組に引き続き全力を注いでまいります。
 次に、事業者のウィズコロナ対策を後押しする取組について申し上げます。
 社会経済活動の回復に向けた取組を進めている中において、事業者の皆様が感染防止対策を講じることで利用者に安心感を与えながら事業活動を継続していけるよう、店舗などにおける三密の回避や非対面・非接触型の接客などウィズコロナ対策の取組を支援することといたしました。新型コロナウイルス感染症と向き合いながら、新しい事業スタイルを取り入れ前向きに取り組む事業者を支えてまいります。
 次に、中高生のスポーツシーンを盛り上げる取組について申し上げます。
 この夏開催したSSP杯(カップ)では、新聞、テレビ、そしてケーブルテレビの協力により無観客試合のオンライン配信が行われ、再生回数は40万回を超えています。コロナ禍において会場の人数制限や間隔を空けるなどの対応をとる一方で、オンラインでスポーツを観る新たな楽しみ方を創り出すことができました。このSSP杯(カップ)の成果を踏まえ、会場でもオンラインでも、より多くの情報が伝わるようにするため、県高体連によるスコアボードや電光掲示板などの購入を支援することといたしました。試合状況がリアルタイムで伝わることで、大会に対する選手の気持ちも奮い立ち、観る人に臨場感、緊迫感が伝わり、スポーツがもたらす感動をより鮮明に体感することができると考えています。
 次に、全日空との連携を強化するSAGANA(サッガーナ)プロジェクトについて申し上げます。  全日空は、有明佐賀空港開港直後、路線が減少した苦しい時期、我々と共に空港の成長を支えていただき、今の九州佐賀国際空港があります。言わば、雨の日も、風の日も、佐賀の空を支えていただいた大切なパートナーです。コロナ禍で未曾有の事態に直面している今、共にこの難局を乗り越えていきたいとの想いでSAGANA(サッガーナ)プロジェクトに取り組んでいます。今回、第5弾の取組として約10名の社員を2年程度受け入れることといたしました。グローバル企業としての社員のスキルや発想力を活かし、佐賀県の取組を推進する新たな力になっていただきたいと考えています。
 次に、「佐賀誓いの鐘(仮称)」の設置について申し上げます。
 かつてハンセン病に対する誤った認識から、佐賀県でも、患者である県民を差別し、熊本県内の施設「菊池恵楓園」へ送ってしまった過去があります。私は、知事就任後、恵楓園を訪れた際に、入所された方から直接、退所者は少数にとどまったが、退所される際に鳴らされていた鐘が錆びて使えなくなっていること、故郷に戻れる日が来るかもしれないとの希望がこの鐘には込められていることを伺いました。昭和の初め頃から長い間、差別してきたことへの贖罪と、二度と同じ過ちを繰り返さない、この想いを県民の皆様と共有したいと考え、平成29年に佐賀県が「希望の鐘」として復元し、音色は蘇りました。そして今、コロナ禍において、まことに残念なことに、感染した方や御家族、関係者に対する差別的な扱いや、誹謗中傷などの事例が見られています。そして、そうしたことは、感染経路の特定にも悪影響を及ぼします。改めて、人の心に寄り添い、差別、誹謗中傷がどれだけ人を傷つけ、社会を痛めるかに思いを馳せなければなりません。偏見や差別をなくしていかなければならないとの強い想いから、我々、今を生きる県民の心に警鐘を鳴らす意味も込めて、我々が設置した希望の鐘をモデルにした「佐賀誓いの鐘」を県庁正面に設置することといたしました。私たち自身が未来に向かって自らを戒め、コロナ禍で社会科見学などで県庁に来る多くの子供たちが、この鐘を訪れ、過去の過ちに学び、差別や誹謗中傷を絶対にしないという強い想いを持ち、人に優しい明るい佐賀県を築いてほしいと願っています。
 次に、予算外議案といたしましては、条例議案として8件、条例外議案として27件となっています。
 このうち、乙第82号議案「佐賀県立博物館及び佐賀県立美術館の使用料に関する条例等の一部を改正する条例(案)」につきましては、難病患者の社会参加を後押しするため、県立博物館・美術館、九州陶磁文化館、名護屋城博物館、佐賀城本丸歴史館が開催する特別企画展の観覧料について、難病患者を免除の対象とするものです。
 その他の議案については、それぞれ提案理由を記載していますので説明を省略させていただきます。  最後になりますが、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中において、佐賀県の自然環境や歴史、文化の豊かさ、暮らしの心地よさがもたらす未来への可能性を改めて大切にしたいと考えています。首都圏の20代の移住希望地ランキングで佐賀県は全国3位と若い人たちに支持されています。これは、ゲームやアニメとのコラボでワクワク感を発信してきたこともさることながら、全国16位の人口密度であっても、人々が過度に集中せず、それぞれの地域に伝統行事や祭りなど人と人がつながり心をひとつにするものが根付いていること、そういう人間本来の暮らしの魅力に多くの人が気付いてきていることの表れだと思います。私は、「子育てがしたい、子育ては楽しいと思っていただける県にしたい」という想いを込めて「子育てし大県“さが”プロジェクト」に取り組んでいます。9月に民間が発表した「イクメン力全国ランキング」で佐賀県は全国1位になっています。その主な要因は、20代、30代の「夫に対する妻の評価が高い」というもので、若い世代を中心に家事や育児を夫婦で共に担う意識が浸透してきていることを嬉しく感じています。そうした未来への可能性にあふれる佐賀県では、日常に温泉があるライフスタイルの中で、地元の食や器を使ったおもてなしに磨きをかけ、佐賀ならではの価値ある旅を提案している若手旅館経営者、人の暮らしに役立つアプリや小学生がプログラミングを楽しく学べる教材など、AI・IoTの技術を使って新しいサービスを開発しているベンチャー企業、スマートフォンを使ったモバイルオーダーシステムを開発し飲食店の新たな事業展開の可能性を広げている大学生など、イノベーションを生み出していく新しい芽が生まれています。幕末維新期の佐賀の先人たちは、伝統的な探究心や開拓心、団結力の強さに加え、最先端の技術や知識、そして人材を外から取り入れながら、構想力を持って新しい国を築き上げてきました。コロナと向き合う状況の中、未来を思い描く想像力と、そこから新しいものを創り出す力を大切にしながら、佐賀の可能性を広げ、「新しい時代を創造する佐賀県」を県民の皆様と共に創り上げてまいります。
 以上、今回提案いたしました議案などについて御説明申し上げました。
 よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。