記者会見

●質疑応答:九州新幹線長崎ルートの並行在来線経営分離に関する佐賀県としての判断について(2)
前のページへ 次のページへ
○西日本新聞
 今回、俎上に上っていたのは、北海道、北陸と長崎ルートになるわけですが、恐らくほかの2線は、いわゆる完成年度が明記されて、計上される可能性が高くなったわけです。これに対して長崎ルートについては完成年度が明記されないままの予算になるわけなのですが、これについては何かご感想はありますか。
○知事
 それは、あらまほしくは完成年度が明記されることの方がいいということであったのでありましょうが、全く協議をしなかった状況から1年経たないうちにということでありますので、それをそこまで望むのはなかなか難しかったということではなかろうかと思っております。いずれにしても、このようにして県としては一定の判断をしたということでありますので、それからまたさらに議論を深めていくという一つのステップにはなっているのではないかと思います。
○長崎新聞
 財源確保をしたということは、来年度の予算には何らかの長崎ルートについての予算がつくということでしょうか。
○知事
 私がつけるわけではありませんが、恐らくはそのようなことであろうと思います。
○長崎新聞
 その大枠ルートの財源として、その新規区間として確保しておいて、箇所づけをせずにそのままいくとか、そういうことじゃないですか。
○知事
 予算のつけ方はよくわからないのですが、いずれにしても、このような形で地元の県としての同意があったということを前提にして事が進むということであれば、それは何らかの形で長崎ルートに使ってもおかしくない形での予算は確保されるのだろうと思います。
○長崎新聞
 もう一つ確認ですけれど、国が示して、9月の秋に説明した基本条件においては並行在来線経営分離への同意というのは、国のワーキングとしてみれば、これは県だったということですかね。平成12年度政府与党申し合わせは、市町村も含めたということの解釈ですか。
○知事
 私たちがその解釈についてどうということではなかろうと思っておりまして、まずは地元の県として今回、この経営分離はやむを得ないということの意思表示をし、かつ県としては引き続き地元と誠意をもって協議を続けていくという意思を表明することによって、何とか長崎ルートの財源確保をお願いしたいという姿勢を明確にしたということで、今はとまっているという状況であると思います。
○西日本新聞
 知事は、来年度の予算にほかの2線と条件が若干伴わない部分があるにもかかわず、予算が計上されそうだという感触を得られていると思うのですけど、具体的にその知事の感触を導くような国なり政府の言葉というのは具体的に何かありましたか。
○知事
 こがんしたら予算がつくばいとかという、その雰囲気ということでしょうか。
○西日本新聞
 できればどなたが。
○知事
 それは、いろんな方々、もちろん久間座長もそうでありますし、そのほかのいろんな国会議員の方々や国土交通省とのいろんなやりとりをしてきていましたので、その中で県として求められるハードルがこれくらいのものだということはいろんなやりとりの中で、こちらも大体見えてきたという部分はございました。そういう中で、今回、できればそれは地元市町のすべての同意があった方が望ましいけれども、それが難しいとしても、地元の県のそういう認識というものがあれば、今土俵には残るのではないかということを、私自身が総合的に判断をしたということであります。
○共同通信
 今回、経営分離に対して同意された中で、いろいろここで理由を上げられているのですけれども、やはり知事の中で一番大きかった理由、最終的に同意という決断をされた、一番知事の背中を押された理由というのはその中のどれに当たるのでしょうか。
○知事
 一番大きな理由は、今、この機を逃すと平成30年度までは財源確保が難しいだろうと、この1点であります。
○日本経済新聞
 先ほど知事のご発言の中で、今回の財源確保の仕組みは実現の可能性が低いと考えていたというお話がありましたけれども、ということは、つまり、当初の知事の見通しとしては、そもそもその財源が確保されないので、長崎ルートを含め、整備新幹線の来年度着工というのは、そもそも先送りになるというような理解をされていたということでよろしいのでしょうか。
○知事
 先送りというか、そもそも平成24年度までの財源を使い切ってしまっていますので、それを平成12年度の政府与党申し合わせで決めたわけですね。そのとき以来、我々としては早期着工が望ましいのかもしれないけれども、現実問題として、財源確保するということが難しいと、その認識に立っておりました。今回の財源調達のスキームそのものについても、去年の今ごろも同じような話があったのです。そのときにも、「いや、そういうことは」といって、実はこのスキームは長野オリンピックのときに同じようなことでやったことが例としてはあります。でも、あれは国家プロジェクトとして、長野オリンピックの開会までに間に合わせなければならないという事情があって、財政当局としても1回切りのウルトラCだよということをそのとき表明しておりました。そういうことからして、今年このような形になるということは想定していなかったということであります。
○佐賀新聞
 ちょっと戻るようで恐縮なのですが、政府与党の合意では、必ず完成年度が明記されていたと思います。これがないという異例な状態で、もうなおかつ了解が得られるという見通しになっているということですか。
○知事
 そこは、私は了解が得られると思っていますし、信じておりますし、そこはそうしていただきたいと思っております。それがために、きょうここまで努力をしてきたというつもりなのであります。
 今日、国土交通省の方にも回答案を伝え、そのときに、若干の反応というか、感触はつかめていくというようには思っておりますけれども、より具体にはワーキンググループ、そして検討委員会の中で最終的には判断されることであろうと思っておりますが、そこのところはぜひお願いをしたいと思っています。
○佐賀新聞
 過去にはこのような方式というのはなかったと思うのですけど。
○知事
 それはもう例はないと思いますが、あらゆる意味で、この長崎ルートはほかの整備新幹線とは異例の存在だと思っています。例えば、新しい新規着工区間となるところと、並行在来線の区間が全く市町村レベルで見たときに一致しないところでありますとか、そういう中であっても、並行在来線とされた区間にJR九州がみずから経営するということが出てきているということであるとか、さまざまな意味を含めて、この長崎ルートというのはほかの新幹線と同じということではなかろうと思っております。
 佐賀県の事情から言えば、佐賀県はさらに鹿児島ルートも抱えております。鹿児島ルートは県の東部にあり、鳥栖市に位置して、新鳥栖駅なんかは鳥栖市に位置しているわけでありますけれども、県の東部の地域をいわば通過するというところがメーンでありまして、新幹線のルートが2本ありながら、その2本とも時間短縮効果が非常に小さいという意味で、これもまた例外と言えるのではないかと思っているところであります。
 そういった事情をぜひ政府与党のワーキンググループ、そして検討委員会の方々におかれては、ご理解をしていただきたいと思います。
○朝日新聞
 今、まさしくいみじくも知事がおっしゃったとおり、非常に効果が佐賀県にとっては少ないルートであります。でありながら、この時間切れで迫られて、今回判断をしなければいけなかったわけですが、なぜそこまで推進しなければいけないものなのか。佐賀県としての推進の理由が我々はよくわからないのですけれども、その点は知事はどうお考えですか。
○知事
 ネットワークとして必要だと考えているからであります。九州新幹線長崎ルートは、整備計画をつくるときから我が県としては将来の高速交通体系として必ず必要なものだという位置づけをして、これまでもずっと整備促進の運動をやってきました。
 これから都市間輸送というものを考えた場合に、無論、在来線でもできないことはないと思いますけれども、それ以上にスピードアップも可能な新幹線というものの意味は大きいと思っています。
 確かに佐賀県にとって、全体としての費用対効果は少ないかもしれませんが、例えば武雄において、例えば嬉野において、そういったところでは時間短縮効果は今よりもはるかにあるということもございます。
 私はネットワークというものは、一部の地域にとって効果があるかないかということだけで判断をすれば、それは多くのものが整備不可能になってしまうのではないかと考えています。
 その意味では、長崎ルートが全体として費用対効果がある事業として収支採算性がとれる、そういうものであれば、その中の一員である佐賀県としても、それは協力をしないわけにはいかないだろうと、このように考えているからであります。
 長崎ルート自体も佐賀県にとってそれほど大きな費用対効果が見込めないのかもしれませんけれども、その理は鹿児島ルートも同じであります。我が県もだからといって鹿児島ルートに反対という態度はとってまいりませんでした。しかしながら、鹿児島ルートについて着工がなされた当時とは、財政状況なり、事業環境も随分変わってきております。そうしたことを考えていただいて、長崎県の方からもそういう佐賀県の事情に配慮した申し出があったものであると理解をしております。
○朝日新聞
 ネットワークの構築というのはよくわかるのですが、鹿児島ルートのお話もされました。鹿児島ルートの場合は、鹿児島から見ると大変時間短縮効果が大きい、その意味はよくわかるのですけれども、長崎ルートの場合、今言われている時間短縮効果が長崎においても果たして本当にそこまで大きな効果があるのか。それから、そもそもこのネットワークの効果というものを言われたのが30年ぐらい前で、その時代にそもそも構想があったわけですけれども、その時代は確かに国鉄も列車本数も少なく、時間もかかっていた。さらに高速道路もできていなかった。その当時だったらその理屈はまだ納得がいくと思うのですが、現在これだけ交通網が発達しており、在来線も非常にスピードも上がり、本数も増えている中で、果たしてそこまで高速ネットワークという意味合いが長崎ルートにあるのか、ここはちょっと私は今疑問なのですが、知事はどう考えておられますか。
○知事
 それは、ネットワークとしてはあると思っています。新幹線のある地域とない地域では、アクセスの容易さ、アクセシビリティーというものが大きく違うだろうと思っています。
 また、この長崎ルートの費用対効果は本当にあるのかないのかということについては、私どもなりに数字を出そうとしたこともあったのですけれども、なかなか基礎データとなる数字が得られなかったということもありまして、今回は国土交通省が出したものを我々としては採用しています。この国土交通省がつくった数字は国土交通省だけがつくったということではなくて、財政当局もきちんとチェックをし、その理解が得られた上で出されているものであると我々は理解しています。
 確かに他の新規着工区間に比べると数字が小さいというところはありますけれども、私どもはそれが一定の数字である以上、それは効果があるものという理解をしているわけであります。
○朝日新聞
 今、データの話が出ました。まさしく今時間切れを迫られたがゆえに、データが十分でないままの判断を求められたのではないかと私どもは思っているのですけれども、それであれば、そこまで時間を切ってまで推進を国側が求めるのであれば、その国側に対して、「そんなにつくりたいのであればきっちりした数字を出せ」と、佐賀県から求めて、出ない以上はこの協議は応じられないという考え方もあったのではないかと思うのですが、ここはいかがでしょうか。
○知事
 国は「つくりたい」とは言っておりません。事業主体はJR九州でありまして、国は助成をする、地元の自治体は一定の負担をするというルールで新幹線というのは整備が進められます。ですから、地元が要らないよという新幹線を国が無理してつくるという図式は、今、整備新幹線にはありません。
 私たちは、この長崎ルートが必要であるという認識の上に立って、今回確かに時間はありませんが、今回の枠組みから外れてしまうと十数年間全くらち外に置かれてしまうということに対して危機感を持ったのであります。
 これから、その費用対効果の検証を行うためにも、鹿島市長からも言われておりましたので、私たちもこれまでも言ってきておりますけれども、これからもそういうデータの開示を求めていきたいと思っています。そういうデータの開示、またいろんな意味での議論、そういったことはまさに今日からスタートするものであろうと思っておりますが、「何故にそんなに焦るのか」という問いに対しては、今回、エントリーだけはしておかないと、当分の間、私は実質的に長崎ルートというものの実現の芽が大変遠のくと考えるからであります。
○共同通信
 エントリーだけをしておかないとということは、知事は財源の確保と実際の着工というのを非常に分けて考えられているようですが、実際、その財源確保ができたら、後戻りすることは非常に難しく、今後費用対効果を検証しても、自治体の同意が得られないときに戻ることはできないのではないのでしょうか。
○知事
 今おっしゃっていることは、自治体の同意がなくても着工されるのではないかということですか。
○共同通信
 それもありますし、これから十分に検証される費用対効果の結果のことです。
○知事
 費用対効果の検証というのは、まずはそれは鹿島市長から求められているということです。我々も国に対して今まで求めてきています。ただ、それはデータは出せないといって出していただいておりません。それはさらに続けて出してくれということを言わなくてはいけないということです。ただそれは、必ず出せるでしょうということには、今ここではお約束はできないということであります。
 それと、地元の同意なくして進むことがあるのかという点については、私はそのように思っておりません。

前のページへ 次のページへ
記者会見トップへ 平成16年12月9日記事トップへ

トップページへ

Copyright 2004 Saga Prefecture. All rights reserved.
このサイト内の文章や画像を無断転載することを禁じます。